青春レモン
別れに相応しい音楽が鳴り響くとともに多くのすすりごえ、決意に秘めた表情、祝福の声がこだまする。
なかにはもう交えることのないもの、そうでもないものもいるであろう。
「卒業生退場致します。」アナウンスが鳴り席を立つ。ありがたいことに参列者による花道で「晴れて卒業だ!これで解放だ!」少年たつきは心のなかで呟いた。
経験者にはお分かりだろうが地方では花道においてスクールカウストの差が明らかになることは歴然である。なかには卒業証書とお花で終えるものも数知れずある。ここで余談たが作者である私は幸い部活動に属していたこともあり楽しく卒業式を終えました。
ことはさておき、少年の話に戻ります。
無事、卒業式を終え10日後に旅立つ準備をしている時だった。♪ピンポーンと通知が鳴る。友達あかねからだった。
あかね「今日、暇してる?」たつき「暇やよ?」あかね「少し会いたい」たつき「ええで!」
「すでにツンツンなやつなのにな笑」と思いながらも待ち合わせに場所に向かう。予定より早くついてしまい空腹気味である。「んーどうしよう」かと思いながらも行きつけのママ店に足が向かってる始末だ。
店に入るや否や少年「ママーいつもの笑」ママ「はいはいいつものね笑」と日常の会話だ。
ママのご飯を食べながら「これが食べれるのも数日か」と思い出に浸っているとママから「この時間珍しいわね」言われてみればそうだ。これまでは放課後に訪れることが多かったためだ。
思いながらも唖然としているとママ「なにか用事でもあるの?」たつき「なんで分かるの?」ママ「そりゃそうだよこの時間珍しいものだもの」
実は…同級生から話があるとのことを伝えた。ママ「あらら、色男になっちゃって」たつき「そうかな〜?」ママ「もう隅にも置けないんだから」たつき「ん〜やっぱりママのカレーかな」ママ「もしものためにこれ持ってきなさい」…ブレスケアだった。
そうこうしてるうちに時間となったためママの店を後にする。道中ママの言葉が頭をよぎる。たつき「ママも隅に置けないんだよな笑」
空は暗くなり人々の歩行音、話し声が渦巻くなか到着した。あかね「遅くない?」たつき「時間ぴったしだし笑」あかね「ご飯食べた?」たつき「食べた。」あかね「少し散歩しよう」たつき「どこまで?」あかね「うるさい笑そこまで笑」
いつもと少し様子が違う。違和感を感じながらも日常会話をしながら歩いていた。
人気がなくなり、公園へと辿り着いた。少しばかり歩いたためか足が痛む。ブランコに腰掛け小学生の頃の気持ちを回想している時だった…
あかね「知ってた?」たつき「なにが?」あかね「気づいてるでしょ?」戸惑うたつきであった。あかね「もう言わせないでよね。」たつき「もしかして?」あかね「もしかしてのもしかしてだよ。」あまりの出来事に戸惑いを隠せない。あかね「返事は今じゃなくていいよ」パニックになったたつきは一目散に帰宅したのであった。それもそうである女性経験ゼロなのだから。そして、ブレスケアは大人の味がした。
その日の夜、心臓の鼓動音が響き、ほっぺたをつねるが痛い。これは夢だと父にたつき「思いきりぶってくれ」
案の定意識が飛んだ。
目覚めると通知が来ていた。あかね「いきなりごめん。戸惑ったよね。焦らないで大丈夫だよ。」
現実に戻り、夢じゃなかったんだと呟いた。
残り9日〜
地元を出る日が迫る。半信半疑と言いたいところだがそうではない。
そこでたつきは思いついた。たつき「デートというものをしてみようじゃないか」思い切って誘ってみる。あかね「この日は予定が…」なかなか噛み合わない
明日はご飯に誘ってみようと思ったのであった。
残り8日〜
たつき「今日空いてたらご飯食べに行こう」あかね「お腹空いてない」
今日の武器は使いきった。
残り7日〜
たつき「水族館に行こう」 あかね「魚が好きじゃない」
じゃあ何が好きなんだ。
残り6日〜
あかね「お酒飲んだから迎えに来て欲しい」たつき「あいあいさ」到着するや否や泥酔寸前である。連れの先輩より「ごめん、飲み過ぎちゃった。」家路まで車を走らせている最中であった。先輩「好きなの?この子のこと」たつき「え?」ハンドル操作が乱れる。先輩「早く答えださないと鉄は熱いうちに撃たなきゃだぞ」確かにそうだなと思うたつきであった。
残り5日〜
たつき「星を見に行こう」あかね「いいよ行こう」日々の成果か2人きりになることに成功したのであった。
綺麗な夜空を眺める2人を他所に虫の声、荒れる波の音が聞こえてくる。
あかね「実は…」たつき「なにが?」ここで友達が回想を語るなかで衝撃の事実が発覚する。
あかね「前に後でこれを見て欲しい言われたの覚えてる?」
思い当たる節があった。
あかね「実はあれラブレターなんだよね。」
たつきは謝罪の気持ちでいっぱいであった。なぜなら受け取ったのは雨の日だったため濡れてしまい文字が霞んで見えなかったため放置したからである。
今更、言えることもなくたつきはとぼけるともに「ありがとう」と返すしかなかった。
残り4日
2人きりで食事を交わす機会が訪れた。食事を堪能しているとあかねから「早く返事が聞きたい」たつきは入り乱れる心を他所に動揺を隠さずにいた。
あかね「やっぱ無いわもういい」と怒りの感情を露わに去っていった。そのなかには悲しみの感情も感じ取れた。
旅立つ日が残り3日となった。
一向に連絡がつかず心残りがあるなか旅立ちの日を迎えることになる。
♪〜アナウンス音が鳴り響き、友人との別れを惜しむなか搭乗口へと向かう道中フェンス越しに聞き覚えのある声がかすかに聞こえる。顔を向けるとそこにいたのはあかねだった。その表情には悲しみの感情が露わであった。人混みを掻き分け謝罪をするとこれまでの思い出とともに涙が込み上げてきた。するとあかねが放った一言は意外なものであった。
あかね「ごめん」たつき「なんで!」友達「実は最後の態度は私を嫌いなってくれた方が快くいけると思ったからなの」
たつきはこれまでの自身の態度を後悔し旅路へつくのであった。