エンドレスキッス①
俺はラブコメを読む度にいつも思う。
よくヒロインが自分の気持ちを零してしまった時、主人公は「えっなんか言った?」と濁す場面が大嫌いだと。
だからこそ、俺はこの場面に出くわしたら濁さないで返してみせると、思い続けている。
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俺は17歳の顔が良いだけの高校生だ。
自分でイケメンと自負してるのが痛いだって?
そんなの周りからの視線を見れば当然だろう。
そんなことより、俺は今、幼馴染の有田 莉奈を彼女の家の前で待っている訳だが、ここから学校に行くまで30分の道のりだが、始業の鐘が鳴るまで後10分もない。
彼女は一体毎朝、何をしたら毎回遅刻ギリギリの時間に鳴るのだろうかと不満を垂れつつ待っていると、
「ごめーん、いつも待たせて本当にごめんねー」
と遅刻しそうとは思えない陽気なテンションで勢いよく玄関の扉を開けて出てきた。
俺は呆れた様子で不満も吐きつつ、
「はぁ、毎朝何をしてたらこんな時間になるのやら」
と答えると、彼女は先程の態度とは一変して、髪の先っちょを円を描くように弄りながら照れた表情で、
「女の子の朝はたくさんやる事があるんだから!まっ、いつもボサボサの髪で登校してるあんたには分からないだろうけどね!」
と照れくささを誤魔化すようにツンデレの典型文みたいな返しをしてきて、思わず「おっおぉ」と驚きの声を出しつつ、「はっ早くしないと遅刻するぞ」と言い残し、
彼女に背を向けた時、彼女は想いを零した。
『あっあんたの為に毎朝時間を掛けてるんだからね…』
俺はハッキリと聞こえていた。
冒頭でも言ったように俺は「えっなんか言った?」なんて返すような真似はしない。
俺はすかさず言葉を返した。
「へ〜俺への想いの分、毎朝遅れてくるんだ」
思わずホストみたいなキザなセリフで返してしまったが、彼女の頬はみるみるうちに赤く染め上がり、両手で顔を必死に隠しながら顔を横に振っている。
「バッバッカじゃないの…そっそそんな訳無いじゃない…ことも無い…」
あまりに唐突な出来事で最後に思わず本音を漏らしてしまうほど、効果抜群だったようだ。
俺のラブコメのゴールがキスなら、今のキスまでの割合は30%ぐらいだろう。
俺は今日でキスしてみせると意気込みながら、遅刻確定の学校へと向かった。
学校に着いてからの出来事を簡単にまとめると、
まず、俺と彼女は生徒指導の先生に20分程の説教を受けた。
彼女は、最初は気持ちが沈んでいたが、徐々に先程の出来事を思い出していき、休み時間などは俺を避けるようになった。
俺としては、ずっと避けられては堪らないので昼休みの間に彼女を追い続け、屋上まで来てしまった。
俺は思わず、屋上の扉に彼女を追いやる形で壁ドンした。
「なぁ、なんで俺を避けるんだよ。お前に避けられるのは何よりも嫌なんだよ。」
と相変わらず客観的に見たら痛々しい行動と発言を繰り返しているが、彼女には効果抜群だったらしい。
「そっその、あんたを避けてたことは謝るわ。でっでもあっあんたが思わせぶりな態度を取るのがいけないんでしょ!」
と若干涙になりながら真っ赤な顔で俺に訴えかける。
俺はここぞとばかりに言葉を返す。
「思わせぶりじゃないって言ったら?」
そう言い放った途端、彼女はやかんの水が沸騰したかのように物凄い勢いで屋上の扉を開けて、どこかに走り去ってしまった。
この段階でのキスメーターは50%ぐらいだろう。
それから、放課後になるまで彼女と会うことは無かったが、放課後になると彼女は決まって行く場所を知っている。
それは、校舎裏の捨て猫の所だ。
彼女は生粋の猫好きだが、家族が猫アレルギーのため飼えずにいるためここでしか触れ合える場所がないのだ。
いざそこに向かってみると、だらしない緩みきった表情で猫に餌をあげている彼女がいた。
俺は背後から声をかけた。
「莉奈は今ぐらい素直な方がずっと可愛いのに」
何度も思うが、この恥ずかしいセリフのどこが彼女に刺さるのか分からないが、相も変わらず彼女は耳を真っ赤にしている。
「そんなこと言ったって、あんたの前だとどうすればいいか分からなくて…」
もう、あとひと押しな感じだったので彼女の両肩を掴んで言った。
「俺がどうすればいいか教えてやるよ」
すると、彼女は目を大きく広げて、うっとりとした表情を浮かべた。
ここでのキスメーターは80%は固いだろう。
俺は続けて、彼女の顎をクイッと上げ、互いの唇は目と鼻の先だ。
彼女は何かを感じ取ったのか、目を閉じて、おもむろに唇を突き出した。
キスメーターは100%だ。
俺は覚悟を決めて、彼女の唇に唇を重ねた。
想像の100倍柔らかく、湿っていた。
そうやって、感想にフケっていると段々、意識が遠のいていった。
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俺は気だるいを体を起こすと、異変を感じた。
まず、俺は自室のベットにいること、時計を見ると11月24日7時20分、もう過ぎたはずの時間だった。
俺は疑問に思いつつ、寝ぼけてるだけかもと思い、いつものように朝の準備をして8時頃に隣の彼女の家の前で待っていた。
いつものように不満を垂れながら待っていると、彼女は相変わらず陽気かテンションで扉を開けた。
その後、たわいのない会話をした後、彼女が思わぬ言葉を零した。
俺はそれに対してキザなセリフで返すと彼女は満更でもない表情でいた。
こうして、一悶着した後、多少のいざこざを挟みながら放課後の校舎裏で彼女と、莉奈とキスをした。
すると、意識がフェードアウトしていった。
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俺は冷汗をかきながら、勢いよく起きた。
すかさず時計を見ると11月24日7時20分。
俺は確信した。
確実に同じ日を繰り返している。
しかも、キスをした瞬間に戻るのだ。
このループの突破口は有るのだろうか…