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聖剣如きがフォークに勝てると思ったか 〜秘伝の継承に失敗したからと追い出されたけど最強なので問題なし〜  作者: 農民ヤズー


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ようやく見つけました!

 ——◆◇◆◇——


 しばらくすると夜になり、窓から逃げ出したスティアは夕食を取るために宿へと戻ってきた。

 そうして食事を、となったのだが、マリアは俺たちと同じ宿に泊まっているわけではないので夕食は出ない。

 そのため、マリアと共に夕食を取るため、俺達は外食をすることにした。


「いやー、なんかいい感じにまとまってよかったわねー」


 食事をとりつつ先ほどスティアが消えた後のことについて話をすると、スティアはそう言って笑った。

 だが、お前の行動に不備があったという事実が変わるわけではないぞ。


「お前は後で説教だがな」

「なんでえ!?」

「誰が聞いているかもわからない状況で不用意に他者の秘密に関して話をしたからだ」

「そ、それはぁ、そのぉ……ね?」


 スティアは視線を彷徨わせてからこちらを向き直り、可愛らしさを前面に出して両手を組み、首を傾げてみせた。

 元々の見目がいいだけあり、その動作は随分と様になっている。——が、だからと言って許すのかと言ったら別問題だ。


「何が〝ね〟、だ」

「ぷぷ〜。あんたが〝ね〟とか言うと、笑っちゃうわよね〜」


 こいつには怒られているという認識があるのだろうか? ないのだろうな。でなければ、このような状況で相手を煽るようなことをするわけがない。


「……お前に渡す小遣いはもういらないようだな」

「ええーーー!?」


 叫んでも無駄だ。むしろ、今まで与えすぎたのではないだろうか。この街にきて狩りをしたことで、自身で稼いだ分もあるのだから俺からわざわざ金を渡す必要もあるまい。


「ほんと、学習しないよね」

「馬鹿ではないが、阿呆だからだろう」

「えっと、そんな扱いで平気なの? スーちゃんって、お姫様なんでしょ?」


 マリアにはスティアの身分を含め、俺たちの状況について説明したのだが、スティアがネメアラの王女だとわかるとマリアの騎士としての部分が出てきたようで、接する態度や意識が少し変わった。

 それでも呼び方は変わらないあたり、友人関係であるという状況は崩れないのだろう。


「だい——」

「——スティア様!」

「ぶげっ!」


 マリアの言葉に大丈夫だと返そうとしたのだが、その言葉を遮るようにして何者かが突然スティアに抱きつき、そのまま地面へと転がっていった。

 いや、これはもはや、抱きついたというよりも体当たりをしたと言った方が正しいほどの勢いだ。そのせいで俺たちの席は料理が散乱し、他の席にもその被害が出てしまっている。


「ようやく見つけました! なぜこのようなところにいらっしゃるのですか!」


 しかし、そんな周りの状況など知らないとばかりに、抱きついてきた人物……獣人の女性はスティアのことを力強く抱きしめたまま離さずに言葉を続ける。

 そんな叫びのせいで、周囲にいた者や、席を乱された者達も声をかけることができずにただ様子を見守っていることしかできないでいる。


 と思ったら、抱きついてきた女性の後から数人の女性が現れ、迷惑をかけた周囲の者や店側に頭を下げ出した。その際に何かを渡していたが、あれは迷惑料だろう。


 しかしまあ、この様子だと、この人物は俺の待ち望んでいた者達だろう。

 スティアに抱きついた人物も、後から現れた者達も、私服の類ではあるが、腰には全員が同じ剣を帯びているのだから、まず間違い無いと考えられる。


「え、えーっと……ど、どちら様でらっしゃいやすか? あっしはアルフっつーケチな旅人でさあ」


 自身へと抱きついてきた人物へとどう対処するのだろうか、と思ってスティアのことを見ていると、この阿呆はなぜか俺の名を名乗り始めた。

 おそらくこいつも抱きついてきた人物のことを理解し、誤魔化すつもりなのだろうが、名乗るにしても他の名があっただろうに。なぜ男の名を使おうと思った。


「おい。何を勝手に——」

「そのようなことをおっしゃられても無駄です。名を変えられたところで、匂いまでは誤魔化しようがありませんよ」

「……あー、匂いかぁ。流石にそこは考えてなかったわねー」


 俺の文句を遮って告げられた言葉にスティアは天を仰ぐように脱力し、ため息を吐いた。


「ねえ。これってどうゆうこと?」

「おおよその推測はできるが……ようやくやって来たというわけだ」


 そう伝えてもあまり状況を理解していないルージェとマリアは首を傾げているが、今はそちらに構っている時間はない。


「少しよろしいでしょうか?」


 この抱きついて来た人物。おそらくは、という予想ではあるが、スティアを回収しに来たネメアラの騎士達だろう。でなければ、スティアと面識があることに説明がつかないし、スティアに突然抱きつく理由もない。


 俺はスティアを回収してもらうためにこの者達のことを待っていたのだが、来たら来たで俺がやらなければならないことがある。


 スティアという少女がただの村娘であれば良かったのだが、そうではない。こいつは阿呆ではあるし、ものすごい阿呆だが、ただの阿呆ではなく、一国の姫なのだ。事情があったとはいえ、姫を連れ回していたのだから釈明をしなければ罪に問われる可能性がある。


「スティア様。いかにあなたのお立場が本国にて言葉にしづらいものだと——んん?」


 俺が話しかけてからもなお話し続けていた獣人の女性だが、その途中で俺に気付いたようでスティアへの言葉を止めてこちらへと顔を向けた。その際、体はそのままスティアを拘束し続けているのだから、こいつのことをよくわかっていると言えるだろう。何せ、今放したら逃げ出すかもしれないからな。

 それでも最終的には宿に戻ってくるだろうから捕まえることはできるが、面倒なことには変わりないのでその点にかんし文句を言うことはない。


「お初にお目にかかります。私は元トライデン公爵家嫡男であるアルフレッドと申しますが、皆様はスティア様の護衛の方々でよろしいでしょうか?」


 あまりこの名前を名乗りたいわけではないが、今は相手が相手だ。ただの旅人だなんて名乗るわけにはいかない。


「あっ。……んんっ。これは失礼をしました。なにぶんこちらも慌ただしくしていたものでして、みっともない姿をお見せしました」

「いえ。状況を考えれば仕方ないかと」

「あんた、なんだってそんなキモい話し方してんのよ」


 スティアに抱きついたままの獣人の女性と丁寧に話をする俺の言葉を聞いて、スティアは顔を顰めながら不満を口にしたが、話の邪魔をするな、阿呆。


 いつもならばここで睨むか軽く打撃を加えるかだが、今の状況でそんなことができるはずもなく、俺は笑顔のまま話を続けていく。


「……それよりも、ここではゆっくりと話をすることもできないでしょう。ですので、我々の留まっている宿にて話の場をつくらせていただければと。スティア様も泊まられている部屋ですので、目を離した隙にどこかへ、ということもないかと」

「む。それはこちらとしては願ってもないことです。頼めますか?」

「ちょっとちょっと! あんた私を売る気なの!? これまで一緒に旅してきた仲でしょ!?」


 人聞きが悪いことを言うな。俺は本来お前がいるべき場所へと戻すだけだ。


「では皆様、ご案内させていただきます」


 そう言って俺は店に迷惑料を込みで食事代を支払い、ルージェとマリア。それからスティアを抱きしめたまま歩く女性と、他の獣人の女性達を引き連れ、宿へと戻っていくことにした。


 しかし、これでスティアとも別れとなると……少し寂しい気がするな。


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