第六話 まさか、転生者だったりして
僕達は馬車に揺られ、北に向かって旅を続けている。
「シャルロッテ、スピードを落としてくれ!」
僕がそう言うと、シャルロッテはスピードを落とした。
体力が有り余っているのか、相変わらずスピードを出し過ぎてしまう。
「シャルロッテ、ありがとう。もう少ししたら、お昼ご飯だからな」
「ヒヒーン!」
◇
僕達は街道脇の開けている場所に馬車を止め、昼食を取る事にした。
「シャルロッテ、お疲れ様。あまり、暴走しないでくれよ」
「ヒヒーン!」
シャルロッテは、首を縦に振って僕に顔を摺り寄せて来た。
「前から思ってたんだけど、シャルロッテは僕の言葉を良く理解しているな。まさか、転生者だったりして」
シャルロッテは、首を縦に激しく振った。
「嘘だろ! 本当に転生者なのか?!」
また、首を縦に激しく振った。
そんなところに、シロンがやって来た。
「ご主人、やっと気が付いたニャ。シャルロッテは、元日本人ニャ!」
「シロン! 知ってたなら、早く言えよ!」
「シャルロッテは、ライバルニャ。ご主人に、メロメロニャ!」
「ヤキモチか? シロンは、意外と意地悪だな」
「そうニャ! 女の戦いニャ! そんでもって、ご主人はシロンのものニャ!」
「僕は、シロンのものじゃないぞ。僕は、僕のものだ」
「そんなのつれないニャ」
「それで、シャルロッテは人の言葉を話せないんだよな?」
「その通りニャ。けど、シロンには分かるニャ」
「そう言えば、シロンは《動物語》スキルがレベル2だったな」
シャルロッテが元日本人だと知って、扱い方を考えないといけないと思った。
それにしても、元日本人の転生者が多すぎる。
「シャルロッテ、気付いてやれなくてごめんな。これからは、元日本人として接するよ」
「ヒヒーン!」
シャルロッテは僕に近付き、いつもより激しく頬ずりをした。
◇
お昼ご飯はシロンのリクエストで、稲荷寿司を作った。
オーソドックスなのと、刻んだ梅干しと紫蘇、しらすと胡麻、生姜の甘酢漬けなんかを酢飯に混ぜたのも作ってみた。
のんびりと料理をしてられないので、もちろん錬金術の《調理》能力を使った。
シャルロッテには、飼葉とバナナとパイナップルを与えた。
飼葉は錬金術でも作れたが、街や村で購入した物を食べさせている。
「ご主人、稲荷寿司美味しいニャ!」
「ヒヒーン!」
シロンとシャルロッテは、ご飯を食べて喜んでいる。
僕も食べてみる。
「うん、美味しいな」
「コン!」
稲荷寿司を食べてると、一匹の子狐が現れた。
エシャット村では見た事が無かったが、この辺りにはいるらしい。
「モフモフで、可愛いな」
「シロンの方が、モフモフで可愛いニャ! 動物枠は、もういっぱいニャ!」
「ヒヒーン!」
シロンとシャルロッテが、何か言っている。
だが、僕はそれを無視して、子狐に話し掛ける。
「お腹が減ってるのか?」
僕は稲荷寿司を一つ、皿に置いて差し出した。
「るーるるるる、るーるるるる」
そして、ドラマのまねをして子狐を呼んでみた。
すると、子狐はこちらに駆け寄り、稲荷寿司を食べ始めた。
「コン!」
子狐は食べ終わると、こちらを見て鳴いた。
「はは、可愛いな。もう一つ、食べるか?」
「コン!」
子狐は、僕の言葉に返事をした。
「このパターンは! まさか、転生者だったりして」
「違うコン!」
「こいつ、喋っちゃったよ。でも、違うって何だよ!」
「教えないコン!」
「稲荷寿司をあげるから、教えてくれよ」
「駄目コン! でも、稲荷寿司食べたいコン!」
「分かったよ。あげるよ」
僕は皿の上に、もう一つ稲荷寿司を置いてやった。
その時に、こっそり《鑑定》をしてみた。
「あれ、見えないや」
こんな事は、初めてだった。
「美味しかったコン! ご馳走様コン!」
そういい残して、子狐は草原に消えていった。




