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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第四章 行商仕入れ旅編
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第三話 シャルロッテの魅力

僕達が街道を進んでいると、馬に跨ったまま道を塞ぐ集団がいた。


仕方ないので、距離を取って馬車を一旦止めた。


「すみません。この先に行きたいのですが、何かあったんですか?」


集団の目的は予想付いたが、僕は白々しく聞いてみた。


「何、とぼけた事言ってんだ。見りゃ分かんだろ。俺等は盗賊だぜ」


「見た目で判断して違ってたら、失礼じゃないですか。だけど、やっぱり盗賊だったんですね」


「残念だったな」


「そうですね」


僕は他人事のように、返事を返す。


「兄ちゃんよ。馬車と金を置いて去りな。素直に言う事を聞けば、命は助けてやんよ」


「そんな事言われても、素直に聞く訳にいかないんですよね」


「ほー、兄ちゃん。どうするってんだ」


「今、考え中です」



そんな会話をしていると、僕達の後ろから盗賊達の方向に強い風が吹いた。

盗賊達は、砂埃をよける為に目を腕で覆った。


僕はこの件に関して、特に何もしていない。ただ、風が吹いただけだ。

だが、相手方の様子がおかしい。


「ヒヒーン!」


「ヒヒヒーン!」


「ヒヒーン!」


「ヒヒヒーン!」


「ヒヒーン!」


十頭いる馬達が、みな興奮しだした。

跳ね出して、騎乗している盗賊を落とした馬もいる。


僕がその様子を窺っていると、馬達がこっちに近付いて来た。


「ヒヒーン!」


すると、今度はシャルロッテが声を上げた。

その直後、興奮した様子で急に走り出した。


「おい、シャルロッテ! 危ない」


勢いがついてもう止まれそうにないので、馬車を三角柱状に囲うように《防御属性魔法》の《防壁》を掛けた。

シャルロッテは盗賊達の馬の間を突っ切り、そのまま置き去りにした。



盗賊達は手綱を握るのがやっとで、僕達に構っている余裕が無かった。

だが馬達は、反転してこちらを追い掛けて来た。


「ヒヒーン!」


シャルロッテの興奮は、治まらない。

凄い勢いで駆ける。


こちらは馬車なので、追いつかれるのも時間の問題だ。

僕は馬車を止め、一人で対処する事にした。


「シャルロッテ! お願いだ。止まってくれ! やつらを止めてくるから、大人しく待ってるんだ」


「ヒヒーン!」


シャルロッテは、僕の大きな声に反応して止まってくれた。


「ご主人、シロンも手伝うニャ」


「シロンは、シャルロッテを守ってくれ。一応、結界は張っておく」


「分かったニャ。気を付けてニャ」



僕が待ち構えると、盗賊を乗せた馬達は直ぐに追い付いて来た。

三頭ほど、誰も乗せてない馬もいたが。


「ヒヒーン!」


「ヒヒヒーン!」


「ヒヒーン!」


「ヒヒヒーン!」


「ヒヒーン!」


「おい、言う事を聞けってんだ!」


「ひえー、振り落とされるー!」


「止まれ、止まってくれー!」


盗賊達は、馬が興奮状態で操縦が効かないようだ。

凄い勢いで、こちらに向かってくる。


倒すのは簡単だけど、どうやって無力化しようか考えた。

馬を傷付けたくないし、盗賊だからと言って殺してしまうほど非情にはなれない。


「《空気弾》×7」


とりあえず、野球のボール位の大きさの《空気弾》を顔面に打ち込む。


「うあっ!」


「あがっ!」


「ぐげっ!」


すると、盗賊達は手綱を離し、次々と落馬した。

しかし、馬達はそんな事を気にせず、僕の横を通り過ぎた。

そして、結界を張った馬車の周りに集まった。


「ヒヒーン! ヒヒーン! ヒヒーン!」


それをシャルロッテは嫌がって、悲鳴を上げている。

結界が張ってあるので、盗賊の馬達はそれ以上近付けないでいた。


僕はシャルロッテには悪いが、盗賊の方を優先する事にした。



僕はロープを取り出し、《無属性魔法》の《捕縛》で盗賊を縛っていく。

これは、グルジット邸の書籍で覚えたものだ。


「うわっ、何だこれは」


「てめー、何しやがる。ほどけ!」


「イヤン。もっと、もっときつく縛ってー!」


一人、変なのが混ざっている。こういう輩には、近付きたくない。


全員縛り終えたが、この後どうしたもんだか。

はっきり言って、面倒くさい。


盗賊が煩いので、《闇属性魔法》の《睡眠》で眠らせる。

これも、グルジット邸の書籍で覚えたものだ。


この後、盗賊の持つ武器を奪った。


「七人か、詰めれば大丈夫だな」


こいつらを逃がしたら被害者が出てしまうので、面倒だが盗賊を衛兵に引き渡す事にした。

最初に馬に落とされた三人は、どうやら逃げたようだ。



僕は盗賊を馬車に乗せる為、シャルロッテのところへ行く。


盗賊の馬はどうやら全て牡で、牝のシャルロッテに興奮して群がっているようだった。

シャルロッテは牡馬にとって、かなり魅力的なのかもしれない。


僕は牡馬を掻き分け、結界の中に入った。


「ヒヒーン!」


シャルロッテは、僕に擦り寄って来た。

僕は、シャルロッテを撫でてやる。


「ご主人。シャルロッテから、フェロモンが大量に出てるニャ」


「そうか、フェロモンが原因だったのか。シロンは、鼻が利くから分かるんだな」


原因は分かったけど、どうしたものか。

僕は、《生活属性魔法》の《消臭》をシャルロッテに掛けてやる。


結界を解くと、牡馬は不思議そうな顔をした。

《消臭》の魔法が、効いているのだろう。


牡馬達の興奮は治まったようだが、シャルロッテに近付こうとして来た。

匂いを、嗅ごうとしてるのかもしれない。

僕はそれを阻止する為に、牡馬達を結界に閉じ込めた。


その隙に、盗賊達の元へ馬車を移動し、盗賊を馬車に詰め込んだ。


街へ向かって馬車を走らせると、盗賊達の馬がついて来た。

結界に閉じ込めたままにする訳にもいかず、自由にしてやったのだ。


「シャルロッテ! 駄目だ、もっとゆっくり走れ!」


シャルロッテは、逃げるようにスピードを上げた。

僕の言う事を、今回は聞いてくれなかった。


どうやら、牡馬に拒絶反応があるようだ。



街に到着し衛兵に盗賊を引き渡すと、一人で盗賊を捕縛した事に驚かれた。

だが、直ぐに褒賞金の手配をしてくれた。


褒賞金は五十万マネーで、盗賊は犯罪奴隷として売れるので、一人に付き十万マネーになった。

馬達も一緒に引取ってもらえる事になり、盗賊と同じ金額が貰えた。


面倒ではあったが、大金が手に入って僕は喜んでいた。

2020/08/22 《闇魔法》の《スリープ》を《睡眠》に変更しました。

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