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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第四章 行商仕入れ旅編
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第一話 行商人に必要な物

僕とシロンはラングレイ邸を後にし、北へ向かった。


目的地は、王都のずっと北にある《エステリア王国》で王都に次ぐ大都市、《ノーステリア大公爵領》だった。


ノーステリア大公爵領は、敵国《ガーランド帝国》の進攻を防ぐ要になっており、周辺の領地を纏める役目を担っている。

その為、軍事力も国内で抜きん出ており、武器や防具を作る鍛冶工房や魔道具や魔法薬を作る錬金工房も盛んであった。


そして領地内には二つのダンジョンがあり、一つは軍人と傭兵専用となっていて、日々鍛え上げられていた。


この領地はそれだけでなく、広大な農地や牧場もあり、物価は王都に比べ安く住みやすい街としても有名だった。



僕とシロンは街道を歩きながら、こんな会話を交わしていた。


「シロン、ずっと歩いていて疲れないか?」


「ステータスが上がったから、それほどでもないニャ。でも馬車があれば、ゆっくり眠れるニャ」


「馬車か。やっぱり、行商人だったら必要だよな。でも、馬の世話をしなきゃいけないし、行動の制限も出てくるんだよな」


「だったら、自動車を作ればいいニャ」


「そんなの目立ってしょうがない」


「バイクはどうかニャ?」


「一緒だよ」


「それじゃ、自転車ニャ」


「なんか、ファンタジーに似合わないよ」


「やっぱり、馬車しかないニャ」


「そうだよな」


そんな事を話していたら、馬の牧場が見えてきた。


僕は『ご都合主義にも、ほどがあるぞ!』と、心の中で叫んだ。


「ご主人、ちょうど馬がいるニャ。見に行くニャ」


「そうだな。買うか分からないけど、見てみるか」


こうして僕達は、牧場に寄る事になった。



牧場を尋ねると、おじさんがいたので声を掛けてみた。


「こんにちは」


「なんだ。若者よ」


「行商人のニコルといいます。馬が欲しいんですけど、こちらで買う事はできますか?」


「ここの馬は、王都の騎馬用に育ててるんだ。条件に合わない廃棄予定の馬なら、売れるぞ」


「どんな馬なんですか?」


「気性が荒く調教が上手くいかなかったり、逆に極端に臆病だったり、人を乗せるのを嫌がったりする馬だな。そんなんでもいいか?」


「えっ、それは困りますね」


「まあ、安くしとくから見て行け」


「はあ、それなら見てから判断しますか」


放牧されている馬達は、どれも競馬のサラブレットのように立派だった。

僕は少し期待しながら、おじさんに問題の馬達がいる厩舎へ案内された。


『見た目は、他とは変わらない。おじさんが言った通り、性格に難があるのか? いったい、どうやって見極めればいいんだろう?』


などと考えていたら、やたらと興奮して僕を見ている馬がいた。


『何だろう?』そう思って近付くと、馬は大人しくなった。

不思議に思いながら隣りに歩きだすと、また興奮しだした。

それを見て馬に近付くと、また大人しくなった。


『これは、何かを訴えているのか?』


僕は馬の言葉が分からないので、牧場のおじさんに聞いてみた。


「これって、どういう事なんですかね?」


「こいつのこういう反応は、初めてだな。若者が、気に入られたんじゃないか?」


「えっ、そうなんですか? この馬は、どういう理由でここにいるんです?」


僕はおじさんの言葉に、半信半疑だった。


「この馬はな、人を絶対に乗せようとしないんだ。困ったもんだ」


「僕、乗馬の経験があるんですけど、この馬に乗れますかね」


「試してみるかい?」


「ええ、本当に気に入られてるなら、購入してもいいかなと思ってます。ちなみに、荷馬車にしようと思うんですけど、大丈夫ですかね?」


「まあ、若者とこの馬の相性次第だな」


おじさんが馬具を装着してくれて、僕は馬に近付き『よろしくね』と言いながら撫でてやる。

すると僕の言葉が分かるのか、馬は『ヒヒーン!』と応えた。


そして僕が馬に跨ろうとすると、何の抵抗もせず背中に乗せてくれた。


「こいつがこんなに従順なのを、初めて見た。よっぽど、若者を気に入ったんだな」


「分かりました。この馬を買います。あと、この騎乗用の馬具一式と幌無しでいいんで荷車を一式欲しいんですけど、何とかなりませんかね」


「ああ、大丈夫だ。分け有りの馬だし、大負けに負けて全部で四十万マネーでどうだ?」


「はい、お願いします。それで、引取りはいつできますか?」


「今から用意する。少し、時間を貰えるか?」


「はい、分かりました」


こうして僕は、馬車を手に入れる事になった。

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