第三十五話 ダンジョン攻略再開、そして終わりを迎える
2021/05/08 ユミナのステータスの武器と、シロンのステータスのアイテムの表記を修正しました。
2021/04/20 ステータス表記を追加し、一部内容の修正をしました。
僕達は用心の為、魔法で変装しダンジョン入場口に並んだ。
「あいつら、いるよ」
「いますね」
「本当、しつこいわね」
騒ぎから二日経ったいたが、子爵嫡男達は予想通り見張っていた。
その執念深さに、呆れてしまう。
「貴重な夏休みを無駄にして、大丈夫なのかな?」
「ダンジョンで、ユミナにいいとこ見せたいのよ」
「あら、エミリ目当ての人もいるわよ」
「うえっ!」
僕達が変装してるなんて、思いもよらないだろう。
素知らぬ顔をして、彼らの横を通った。
そして地下に下り人のいない場所へ行くと、ウォーベアーのいる地下十六階に《転移》した。
「上手くいったわね。あいつら、早く諦めてくれないかしら」
「顔を見られた時、緊張しました」
「それ分かる。大丈夫だと分かっていても、最初は不安だよね」
緊張が解け、そんな言葉が出てきた。
「午前中は、この階で体慣らしなのね?」
「地下十七階へ行くのは、午後からですね?」
「そうだね。この階のウォーベアーは相性良いけど、次のスノーウルフはそうはいかないからね」
彼女達の実力は、僕抜きでウォーベアーを倒せるまでになっていた。
武器の違いもあるけど、当時の勇者パーティーより強い気がする。
エミリとユミナは《経験値二倍》スキルがあるので、レベル上昇が早かった。
既に二人共、レベル26になっている。
シロンの経験値取得は普通なので、レベル21に留まっていた。
◇
お昼になる頃には、彼女達の動きは良くなっていた。
昼食を済ませると、午後に備えエミリとユミナに《物理防御力》を付与したペンダントを渡した。
これは、シロンの首輪と同等の物である。
「うわっ、これ凄いね。無敵になった気がする」
「スノーウルフは群れで行動するし、動きが早いからね。高確率で、攻撃を受けると思った方がいい」
「そんなに、今までと違うんですか?」
「そうだね。だから、気を引き締めてね」
「はい」
「ちなみに、このアイテムは貸すだけだから」
「えー、頂戴よー!」
「エミリったら、無茶言わないの!」
「だってー」
「武器を強化して貰ったでしょ。高価なアイテムまで強請るなんて、欲深いわよ!」
「うー、ごめんなさーい」
どうやらユミナの説得で、エミリは諦めてくれたようだ。
「シロンはご主人のペットだから、何でも貰えるニャ」
「ずるーい!」
「羨ましいなら、ご主人の嫁になればいいニャ」
話しが終わったと思ったら、シロンが変な事を口走った。
「えっ、お嫁さん?」
その言葉に、ユミナが強い反応を示した。
ユミナは顔を真っ赤にし、あたふたして落ち着きが無くなった。
「ユミナー、落ち着きなよー。ニコル君が見てるよー」
「あっ!」
そして、ユミナは我に返った。
「でも、ニコル君のお嫁さんかー。有りだね」
ユミナがエミリの顔を見て、『えっ、本気なの?』と驚きの表情を見せた。
エミリはそれに対し、『ニッ』と笑って答えた。
「さあさあ、下の階に行くよ。集中しないと、危険だからね!」
「分かったー」
「分かりました」
「分かったニャー」
僕ははぐらかす様に声を掛け、準備万端で階段を降りた。
◇
地下十七階に移動すると、待ち受けていたスノーウルフと戦闘が始まった。
「ニコル君の意地悪ー! こんなの無理ー! 七匹なんて多過ぎるー!」
「ニコル君、私も駄目です。一度にこの数は、対応しきれません」
「無理ニャー!」
僕達はスノーウルフ七匹に囲まれ、防戦一方になっていた。
エミリは炎を纏った剣で、ユミナは《魔法盾》二枚で、シロンは雷を纏った猫パンチで凌いでいる。
僕は彼女達に挟まれ、危ない時だけ手を貸した。
彼女達は防御力が上がっても、力では負けていた。
まともに追突されたら、飛ばされてしまう。
「それじゃ、一度奴等の動きを止めるね。《影縛り》×7」
僕は最近覚えた魔法を、スノーウルフに使った。
これは《闇属性魔法》の一種で、影を固定する事で動けなくできる。
これも、グルジット邸にあった魔法書で覚えたものだ。
「凄い。本当に動きが止まった」
「で、どうする?」
「試しに、一匹だけ魔法を解除してみて」
「分かった。準備はいい?」
「シロンが、行くニャ!」
「任せたわ!」
「いくよ」
そい言うと同時に、一匹だけ魔法を解いた。
「《充電》からの《放電》ニャ!」
シロンは全身に雷を纏わせ、稲妻の様に白い線を引きながら疾走した。
そして、スノーウルフの体に触れると一気に《放電》した。
『ビリ、ビリ、ビリ、ビリ、ビリ、ビリ・・・・・』
「ワオーーーーー!」
その攻撃に、スノーウルフは痺れて動けなくなった。
「今度は、私です。《光槍》」
『ズブッ!』
ユミナの放った光の槍が、スノーウルフの体を貫いた。
「キャウン!」
その一撃で、致命傷を負わせた。
これは《光属性魔法》がレベル3になって覚えた、威力抜群の魔法である。
「最後は、私ね。とりゃー!」
『ズサッ!』
エミリは《身体強化》を掛けた上に、炎を纏わせた剣でスノーウルフの首を切り落とした。
「やったわ!」
はっきり言って、オーバーキルである。
「ニコル君、今度は二匹お願い!」
「分かった」
こうしてスノーウルフとの戦闘は、最終日まで続いた。
結局彼女達だけでは、この階層をクリアする事はできなかった。
そして、それぞれの課題を残したまま、夏休みのレベル上げは終わった。
◇
二人と一匹のステータスは、このようになっていた。
【名前】エミリ・ラングレイ
【年齢】十五才
【種族】人族
【性別】女
【職業】王立学園学生
【称号】-
【レベル】30
【体力】1750/1750
【魔力】1215/1215
【攻撃力】1650(150)
【物理防御力】1550(150)
【魔法防御力】90
【筋力】150
【敏捷】150
【持久力】120
【精神力】60
【知力】90
【運】90
【固有スキル】魔眼(Lv3)/経験値獲得2倍(固定)
【スキル】剣術(Lv4)/盾術(Lv2)/体術(Lv2)
魔力感知(Lv3)/危機感知(Lv3)
魔力操作(Lv3)/魔法言語(Lv2)/身体強化(Lv2)
礼儀作法(Lv2)/ダンス(Lv2)/騎乗(Lv2)
【魔法】火属性魔法(Lv2)/水属性魔法(Lv2)/風属性魔法(Lv2)/土属性魔法(Lv2)
氷属性魔法(Lv2)/生活属性魔法(Lv2)
【武器】ミスリルコーティングの鋼の剣(攻撃力:+1500)・(強靭(中)付与)・(腐食耐性(中)付与)・
(魔法属性付与機能)
【防具】鋼の鎧(物理防御力:+400)・(軽量化(小)付与)・(防汚(小)付与)
【アイテム】ペンダント(物理防御力付与:+1000)
【名前】ユミナ・グルジット
【年齢】十五才
【種族】人族
【性別】女
【職業】王立学園学生
【称号】-
【レベル】30
【体力】1070/1070
【魔力】1895/1895
【攻撃力】310(60)
【物理防御力】1360(60)
【魔法防御力】480(180)
【筋力】60
【敏捷】90
【持久力】90
【精神力】210
【知力】210
【運】90
【固有スキル】過去未来視(Lv3)/経験値獲得2倍(固定)
【スキル】杖術(Lv2)/弓術(Lv1)/体術(Lv1)
魔力感知(Lv4)/危機感知(Lv2)
魔力操作(Lv4)/魔法言語(Lv4)/魔法待機(Lv3)
礼儀作法(Lv3)/ダンス(Lv3)/料理(Lv3)
【魔法】光属性魔法(Lv3)/結界属性魔法(Lv3)/防御属性魔法(Lv3)/聖属性魔法(Lv3)
生活属性魔法(Lv3)
【武器】ミスリルコーティングの魔法の杖 (攻撃力:+250)・(魔法威力増:200%)・
(魔力消費減:50%)・(魔力回復(中)付与:全魔力回復所要時間0.5H)・(詠唱短縮付与)
【防具】魔法のローブ(物理防御力:+300)・(魔法防御力:+300)・(防汚(中)付与)
【アイテム】ペンダント(物理防御力付与:+1000)
【名前】シロン
【年齢】一才
【種族】猫
【性別】雌
【職業】ニコルのペット
【称号】-
【レベル】24
【体力】1350/1350
【魔力】1350/1350
【攻撃力】148
【物理防御力】1048(48)
【魔法防御力】48
【筋力】148(48)
【敏捷】340(240)
【持久力】148(48)
【精神力】48
【知力】48
【運】240
【固有スキル】壁抜け(Lv3)/[?]
【スキル】超視力(Lv2)/超聴力(Lv2)/超嗅覚(Lv2)/超回復(Lv2)
魔力感知(Lv2)/危機感知(Lv2)
魔力操作(Lv2)
動物語(Lv2)/人語(Lv2)/魔法言語(Lv1)
【魔法】雷属性魔法(Lv2)
【武器】-
【防具】首輪(物理防御力:+1000)
【アイテム】首輪のアクセサリー
(詠唱短縮付与)・(魔力回復(中)付与:全魔力回復所要時間0.5H)・
(筋力:+100)・(敏捷:+100)・(持久力:+100)
夏休み前に比べると、大幅なレベルアップである。
密かに目標にしていたダンジョンクリアはできなかったが、彼女達は満足していた。




