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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第三章 お嬢様レベリング編
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第三十三話 もう一つの《異世界のんびり生活》

僕は、魔王のその言葉に戸惑った。


『いったい、何の意図があるんだ。僕も魔王と争うなんて嫌だし、会話で済むならそうしたい』


「ニコル、駄目だ。魔王の言葉に惑わされるな!」


「煩い! お主は、黙っておれ!」


魔王は、勇也さんを《無詠唱》で《結界》に閉じ込めた。


すると、勇也さんの声が聞こえなくなった。

どうやら、《空間転移》スキルも使えないみたいだ。


「これで、邪魔が入らないで済む。ニコルよ、我の話しを聞いてくれぬか?」


魔王は、神妙な顔で言った。

僕はそれを信用し、話しを聞く事にした。


「分かりました。話しを覗います」


「お主は、聞き分けがいいな。助かる」


それは、すでに勇也さんにも話した内容で、我ら魔王がこの世界に来た理由だと話し始めた。



そして、語り終えてこう言った。


「我は、魔界で忙しかったのでな。異世界で、のんびり生活を送りたいのだ」


「《異世界のんびり生活》ですか? 僕も同じです」


『この魔王とは、気が合いそうだ』と、思った。


「そう言えば、お主も異世界の転生者だったな。我の魔眼で見たぞ」


「はい」


「あの勇者はどういう理屈か分からんが、我を倒し元の世界に帰ると言う。だからスタンピードを起こし、少し脅してやったのだ。後、一週間はこのままにする予定だ」


「そうだったんですか」


「スタンピード中は、魔物は自ら人を襲わないようにした。攻撃されたら、反撃を許したがな」


「たしかに、魔物の行動は不自然でした。何人かは、死んでしまったようですが」


「それについては残念だと思うが、自分の力量も分からずに強い魔物に挑んだのであろう。遅かれ早かれ、死ぬ運命だったのかもしれぬ」


僕はその考えに、疑問を抱いた。


ダンジョンに入る人は、少なからず死のリスクを理解しているはずだ。

だが、任意に起こされたスタンピードを、ダンジョンでの出来事なんだからと、割り切る事ができなかった。


「それは、どうでしょう。強い魔物が目の前に現れたら、自分や仲間の身を守る為に、有利な状態で攻撃を仕掛ける事もあると思います」


「ふっ、そうだな。そこまで、気が回らなかった。許せ」


「いや、僕に言われても」


死んだ人には悪いが、これ以上魔王を強く非難する事もできなかった。



そして、魔王は続けてこんな事も話した。


「先程、勇者に魔法を掛けた。『ここでの事を他者に漏らしたら、死ぬ魔法をお主に施す』と、言ってな。だがあれは、口外しようとすると体の動きが一次的に止まるだけだ。死んだりせん。あやつの鑑定でも、それは分からぬ。この事は、あやつに黙っていて欲しい。脅したままの方が、都合が良い」


「そう言えば、勇也さん『俺の命に関わる』と言って、スタンピードが起きた理由を教えてくれませんでした」


「どうやら、脅しは効いてるようだな」


魔王は、笑って言った。

どうもこの魔王は、悪い魔王では無いようだ。


「お主と争っても負ける気はせんが、勝てる気もせん。勇者と手を組んで、我を倒そうなどと思わんでくれ」


「そうですね。勇也さんに頼まれても、断ります。ですが、勇也さんの行動を止める事もしません」


「それは、困った。では、あやつが来たら遊んでやるとするか」


「お手柔らかに、お願いします」


「お主も、たまに土産でも持って来るがよい」


「はい、機会があればお邪魔します」


僕はその後、結界から開放された勇也さんの願いを断り、逃げるようにエーテルの街の借家に帰った。



借家に着いた時刻は、随分と遅くなってしまった。


それでも、ユミナとエミリは起きてリビングで待っていた。


「ただいま」


「ニコル君、お疲れ様です。お体、大丈夫ですか?」


「ああ、疲れてるけど大丈夫。ユミナも、こんな遅くまで起きていて大丈夫?」


「はい、大丈夫です」


ユミナは、気を使って起きていてくれたのだろう。『寝てても、良かったのに』なんて、言えなかった。


「ニコル君、お疲れ」


「ああ、エミリもお疲れ。二人共今日はもう遅いし、話しは明日聞かせるよ。朝はゆっくりして、ご飯はキャンプ場で食べよう」


「分かりました」


「そうしましょ」


「ご主人、ピザ美味しいニャ!」


シロンはタイミングを計ったように、そんな《寝言》を言った。

夢の中で、キャンプを楽しんでいるのだろう。


僕達はその言葉に可笑しくなり、思わず笑ってしまった。


そして、その日はそのまま就寝した。

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