第二十八話 ピザとキャンプと海鮮と海
僕は黙り込んだユミナを見かねて、買い物の途中に思いついた案をみんなに告げる。
「ところで、今日ピザの材料を揃えたんだ。明日、キャンプに行かないか?」
「えっ、ピザ! 食べたい、食べたい!」
「ピザもいいけど、マグロも食べたいニャ!」
「それなら、ニコル君に海鮮市場に連れて行って貰って、ピザを食べながら海鮮バーベキューをしようよ」
「賛成ニャ!」
エミリとシロンは賛成してくれたが、ユミナは黙ったままだった。
「ユミナ。急遽こういう事になったけど、大丈夫?」
「えっ! はっ、はい。大丈夫です。キャンプ、楽しみです」
「それじゃ、明日朝食を食べてから、海鮮市場に行こうか。ピザと海鮮バーベキューは、お昼にしよう」
「分かりました」
どうやら、ユミナは大丈夫なようだ。
「ピザ生地は発酵させたのがあるから、伸ばして具材を乗せて焼くのは現地でやろうと思うんだけど、どうかな?」
「はい。ピザ作り、興味あります。ニコル君、教えてください」
「うん。ユミナは料理が得意だから、すぐに覚えるよ」
「頑張ります」
そういう事で、明日は海産物を買いに行って、キャンプをする事になった。
場所は僕の故郷でも良かったが、新しい場所を今から探しに行く事にした。
明日は、晴れる事を祈ろう。
◇
翌日は、快晴だった。
「うっみだー!」
「海ですね」
「マグロニャー!」
「マグロなんて、売ってるか分からないぞ」
僕達は、海鮮市場のある海に来ていた。
「そう言えば、ニコル君残念だったわね。私達の水着姿」
「君達の父親の耳に入ったら不味いから、ノーコメント!」
「そんな気を使う事ないのに」
「そうですよ。ニコル君」
「でもなー」
「ご主人、マグロ捕まえるニャ!」
「さすがに、捕まえられないよ。期待はできないけど、海鮮市場で探してみよう。あったら、儲け物だ」
「早く行くニャ!」
僕達は、歩いて市場に向かった。
「いいわね。海鮮市場って、初めて来たわ」
「結構、いろいろ揃ってるな。アジにイワシ、カワハギ、カンパチ、スズキ。ハマグリにサザエ、タコ、イカ、エビ。カニもあるね。でも、マグロは無いな」
「へー、魚介類に詳しいんだ」
「前世で食べるのが好きだったから、有名な物だけだよ」
「私、普段の食事の分も、買っちゃいますね」
「そうだね。美味しい料理、期待してるよ」
「はい、頑張ります」
「ご主人、マグロを探してニャ!」
シロンがマグロと騒ぐので、店の人に聞いてみた。
「おじさん。マグロって、水揚げされないのかな?」
「おっ、あんちゃん。マグロを知ってるなんて、通だな。この辺りだと、三月から六月にたまに上がるよ」
「今は八月だから、もう時期は過ぎてるんだね」
「よその国に行けば、上がるかもな。場所によって、時期も種類も変わるからな」
「そうなんだ。ありがとう」
シロンが、がっかりしていた。
その後、ユミナが買い終えるのを静かに待った。
「いっぱい買ったね」
「はい。なかなか手に入らないので、一通り買っちゃいました」
「大漁ね。御飯が楽しみ」
「それじゃ、キャンプ地に行こうか」
「いこ、いこー!」
「はい、行きましょう!」
「行くニャー!」
こうして僕達は、キャンプ地へと向かった。




