第二十四話 ご都合主義
僕は、繁華街に転移した。
彼女達に近付くと、貴族であろう少年少女達とその護衛と野次馬に囲まれていた。
その数、およそ二百人。
「何で、こんな事になってるんだ? 二人は、フードを被ってなかったのか?」
「それに、ダンジョンにいるはずの貴族の子弟が、こんなにいるのは不自然だ。たまたま、僕達と休みが被ったというのか?」
「ご都合主義にも、程があるぞ!」
最後の台詞は、空を見渡しこの筋書きを考えた誰かに訴えた。
僕はあの中に飛び込む勇気は、はっきり言って無い。
ダンジョンにいたチンピラとは、違うのだ。
まずは、状況を把握する必要がある。
「おい、アルフォード諦めろ! ユミナさんとエミリさんが、迷惑がっているのが分からないのか!」
「そんな事、ありませんね。あなた達が来なければ、運命の出会いを果たしたこの僕とユミナ嬢は、今頃お茶をしていましたよ」
「あれだけ言われて、断わられているのが分からないのか?」
「ユミナ嬢は、照れているんですよ。しおらしいじゃないですか!」
「お前は、どこまでもご都合主義だな!」
『ここにも、ご都合主義がいた。よく見ると、いつぞやの子爵嫡男だ。名前は、アルフォードって言うのか。格好いい名前じゃないか。あいつとはよく会うので、言いたくは無いが僕も運命を感じるよ』と、心の声。
「そんな事言って、あなたもお茶に誘いたいんじゃないですか?」
「うっ、それは否定しないが、お前は明らかに拒否されてるぞ!」
「それは、あなたの思い違いですね!」
「くそっ、話にならん。いらいらする!」
『言い合っているのは、子爵嫡男の口調から上級貴族っぽいな』と、心の声。
そこに、別の男子達が近付いてきた。
「ユミナさんをお茶に誘えるなら、私も立候補するぞ!」
「ぼっ、僕もだ。憧れの君に、こんな場所で出会えたんだ。負けてられるか!」
「ハッ、ユミナ・グルジットは俺様のもんだ。おめーら引っ込め!」
ユミナ争奪の参戦者が増えた。
「あははっ、あんたら男は馬鹿ねー。綺麗な娘に弱いんだから。口先だけじゃなく、決闘でもやればー」
「何で、あの子ばかりモテルのよ。私の方をチヤホヤしなさいよ!」
「私も、参戦しようかなー。ユミナちゃん綺麗だし」
女子からは、煽りや嫉妬やアブノーマルな声が聞こえる。
「一ヶ月振りにやっと出会えた女神様、やっぱり貴族のお嬢様だったんだな。あの時、声掛けなくて良かったぜ」
「俺は、最初っからそう思ってたぞ」
「おい、お前ら! どの貴族様がその女神様を連れてくか、賭けをしないか?」
「おっ、それ面白いな!」
「やろう、やろう!」
賭けをしようとする、一般人まで現れた。
そんな中ユミナとエミリは、いつまでもその場を離れられないでいた。
彼女達の様子を窺っていると、エミリと目が合ってしまった。
エミリは、頬を膨らませて怒った顔をした。
ユミナも僕に気が付いたらしく、困った表情をした。
そしてエミリは、顎を『クイックイッ』と、引いている。
『何かの合図だろうか?』僕は、首を傾げる。
続けてエミリは、顎を『クイックイッ』と、させる。
僕は理解できず、またも首を傾げる。
すると、『もー!』と言って、ユミナの手首を掴んだ。
そして、そのまま人を掻き分け、こちらに向かって来る。
「げっ、こっちに来る!」
僕は焦って、フードを被った。
当然周りの人達は、二人の動向を追う。
「ユミナ嬢、待ってください。話しは、まだ終わってません。ダンジョンに、ご一緒しましょう!」
二人は振り向きもせずそれを無視し、こちらに近付いて来る。
「何で助けに来ないのよ!」
エミリはそう言いながら、僕の横を通り過ぎた。
僕は目立たない様、彼女達の後を追う。
人気の無い場所まで行くと、僕は言い訳をする。
「ごめん。君達との関係を、貴族達に知られたくなかったんだよ」
「だけど、護衛なら隠れてないで、出て来て欲しかった!」
「そんな無茶な。危険があったら出て行ったけど、二人そっちのけで口論してただけじゃないか」
「ふん、男らしくないわね。いつかのダンジョンと、大違いね!」
「男らしくないのは認めるけど、身分を弁えてるだけだよ」
「エミリ、少し落ち着いて。一度、深呼吸しましょ」
「ユミナ。・・・分かった。『スー、ハー、スー、ハー』」
「エミリ、どお?」
「う、うん。落ち着いた」
エミリは深呼吸をして、落ち着きを取り戻したようだ。
「エミリ、ニコル君。家に戻りましょ」
「「うん」」
僕とエミリは、素直に頷いた。
その後、追跡が無いか確認する為、《検索ツール》の《地図》を見ながらしばらく歩き回った。
追跡が無いようなので、僕達は《転移魔法》で借家に帰った。
この街にユミナがいる事を貴族の子弟に知られ、この家もいつかばれてしまうような気がした。




