第十九話 今日は休みって言ったよね
翌日、僕は女子二人と一匹の要望を聞いていた。
「二人とも、今日は休みって言ったよね」
そう、昨日ダンジョンを出る時、せっかくだから一日休もうという事になっていた。
「何、言ってるの? 武器を強化したんだから、試さない訳にいかないじゃない」
「私も、同感です」
「ご主人、諦めるニャ」
「みんな、元気だね。じゃあ、午後からでいいかな?」
僕は、彼女達の熱意に負けてしまった。
◇
僕達は、ダンジョンの入り口でお金を払い入場した。
施設内で、試験に受かったらしい例の子爵嫡男を見掛けたが、僕らはフードを被っていたので気付かれる事は無かった。
そして今は、オーガのいる地下十階にいる。
「ハハハッ、凄い凄い。昨日までと、全然違う。スッパスパ切れる!」
そう言いながら、エミリはオーガを切り刻んでいく。
「呪文を杖に記憶させるなんて、凄いです。魔法名だけで、発動できます。《光矢》《光矢》《光矢》《光矢》《光矢》」
そう言いながら、ユミナは別のオーガに五連続の魔法を食らわす。
「凄いニャ。楽々避けれるニャ。猫パンチからのヒット・アンド・アウェイだニャ」
そう言いながら、シロンは残りのオーガ二匹を自分に引き付けている。
「みんな、のりのりだね。怪我しないでよ」
「「「はーい(ニャ)!」」」
僕は彼女達を守る為、魔法盾をスタンバイさせている。
しかし、彼女達の武器やアイテムを強化したお陰で、常に戦闘が優位に繰り広げられ手を出す必要が無かった。
◇
この階に転移して来てから、三時間程が経った。
「ここまで武器の性能が上がると、戦闘が随分楽ね。ニコル君に感謝だわ!」
「本当にそうね。ニコル君、ありがとうございます」
「ご主人、ありがとニャ」
「みんなが成長する姿を見ていて、僕も嬉しいよ。この分なら、次の階へ行ってもいいかな」
「ほんとに、やったー」
エミリは、喜んでいた。
ユミナとシロンも声に出さないが、嬉しそうにしている。
「でも、今日は中途半端な時間だから、階段を下りて明日からにしようか?」
「「「はーい(ニャ)!」」」
安全地帯にある階段まで行くと、すぐ横の五階毎にある中ボスの部屋の前で、なにやら揉めていた。
「おらー、手前等どきやがれー!」
「イッヒッヒッ、殺っちゃうよ」
「ぶへへへ!」
「あんたら、素直に言う事を聞いたほうがいいわよ。こいつら、何するか分からないから」
「何、言ってんだ! 俺らだってずっと待ってんだ。後ろに並べよ!」
「「「「「そうだ、そうだー!」」」」」
「うるせーーー! ごちゃごちゃ言ってねえで、退きやがれー!」
そこに、重低音の大声が木霊する。
その声の主は、このパーティーのリーダーだった。
「「「「「「「「「「ひいいっ!」」」」」」」」」」
「も、もしかして、こいつら極悪パーティーの《ミノタウロスの斧》じゃねえか?」
「うっ、だったら俺らやばいぞ。やつら、Cランクだ」
「あら、私達の事知ってるの? そうよ、私達は《ミノタウロスの斧》よ。だったら、分かるわよね」
「わ、分かった。こんなところで、余計な怪我をしたくねえ。順番を譲る」
「おいら達も」
「俺らもだ」
「あたいらも、譲るよ」
そこにいたパーティーは、全て《ミノタウロスの斧》に順番を譲った。
すると、そんな様子を窺っていた僕達に、気付いた奴がいた。
「兄貴、あそこに綺麗なねーちゃんがいますよ」
案の定、テンプレな台詞を言っている。
「みんな、下へ行こう」
「「「うん(ニャ)」」」
僕らは絡まれる前に、階段へ向かった。




