第十五話 続けては無理ー!
お嬢様達とダンジョンに来てすでに五日が経ち、今はオーガがいる地下十階にいる。
この階には、すでに二日目の午後に辿り着いた。
しかし、彼女達が戦闘に慣れるにも経験値的にも、丁度いいと判断し留まっている。
そして今は、僕抜きと言うかエミリ一人で戦闘をしている。
「グギャーッ!」
『ギンッ!、ギンッ!、ギンッ!、ギンッ!』
オーガが、金棒でエミリを攻め立てる。エミリは、防戦一方だ。
「こいつ、強いよー。ニコルくーん」
「エミリ、一人で大丈夫って言っただろ」
まだ早いと思ったが、レベルも上がって調子に乗っていたエミリの鼻っ柱を折る為、一人で戦う事を了承した。
もちろん、危ない時には直ぐ飛び出せるように、目を光らせている。
「でもー」
「エミリ、魔法盾を出すわ」
「早く、お願い」
ユミナは、呪文を唱える。
「*****、*******、*****、*******、*******、魔法盾」
『ゴンッ!』
「きゃっ!」
「ユミナ、大丈夫!?」
「力が強い。でも、大丈夫!」
「いくわよ、やっ!」
「ギャー!」
『ゴンッ!』
エミリが金棒を持つオーガの腕を切りつけ、金棒を落とした。
「今だっ!」
「ゴフッ」
エミリは、オーガの喉に全体重を乗せた剣を突き刺し、致命傷を与えた。
すぐさまオーガを蹴っ飛ばし、突き刺さした剣を抜く。
「これで、終わりよ。オリャー!」
『ザシュッ!』
脆くなったオーガの首を、力を込めた剣の横一線で切り落とし、止めを刺した。
「やったわ!」
「やったね!」
エミリは苦戦の末、何とかオーガを倒せた。
「エミリ、喜んでるところ悪いんだけど、次がもうお待ちかねだぞ」
「えっ!」
一匹のオーガに手間取っていた為、戦闘の音に誘われ他のオーガが三匹集まって来た。
それを僕が《結界》で囲い、動きを封じている。
「えー! 続けては無理ー!」
「じゃ、いいんだね」
僕はオーガに張った結界を解き、《瞬動》スキルで近付く。
《魔鋼の剣》に魔力を通し、横薙ぎにすると同時に魔力の刃を作り刀身を伸ばす。
それを振り抜くと、オーガ三匹の胴が同時に真っ二つになった。
その間、一秒にも満たない。
「何それ、反則ー!」
エミリが、いちゃもんを付ける。
「ニコル君、凄いです」
「さて、この後どうしようか?」
「ニコル君、剣を替えたい。オーガ、結構硬いよ」
「持って来てるなら、替えてもいいよ」
「武器屋に行く! 予備の剣の性能は、変わらないの」
「そうなんだ。お父さんがあれだから、いい武器を持たされたと思った」
「こんなに先に進むと、思ってなかったんじゃないかな?」
普通学生は、夏休みを通してこの辺りまで来るのも難しいらしい。
まさかラングレイ伯爵も、《転移魔法》でスキップして進むとは思わないだろうね。
「ニコル君。私も魔道具屋に行って、杖を見たいです」
「ユミナもか。それじゃ、ダンジョンに入って五日目だし、出入り口から出ようか?」
「はい」
「でも、剣と杖は僕が強化してあげるから、買わなくていいからね」
「本当ですか? ありがとうございます」
「やったー! ニコル君、男前ー!」
「ご主人、シロンも攻撃力を上げたいニャ」
「シロンの事も、ちゃんと考えてるよ」
「ありがとニャ。何だかんだ言っても、ご主人は優しいニャ」
こうして僕らは、出入り口からダンジョンを出る事になった。




