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第六話 余計な一言

2020/09/02 一部内容の修正をしました。

僕の能力が家族全員にバレタので、家でも堂々と錬金術を使えるようになった。


だからと言って、何でも作れる訳ではない。

《検索ツール》のレベルを上げて情報を手に入れても、それを理解しイメージする頭脳と経験が足りなかった。

その代表が《魔法回復薬》である。


「うがー! だめだー!」


僕は家の周りに生えている雑草から、魔法回復薬を作ろうとした。

また猪が現れて、怪我をしたら大変だからだ。


「どうしたの? 大きな声を上げて、ニコルちゃんらしくないわね」


「ごめんなさい母さん。魔法回復薬を作れなくて、つい大声を上げちゃった」


「ニコルちゃんはまだ五歳なんだから、難しいお薬を作らなくてもいいのよ」


「うん。また、今度にする」


「でも、山に行けば薬草が採れるわ。今度お父さんに、連れて行って貰ったら?」


「そうだね。父さんに、頼んでみる」


村に魔法回復薬は無いが、薬草を煎じて飲む風習はある。

傷・解熱・下痢止め等の効果がある薬草は、山に行けばあるらしい。


ただそれだけでは効果は薄く、専門知識のある錬金術師や薬師は数種類を調合している。

さらに言えば、錬金術師は錬金道具を使い魔力を通して調合する事で、効果の高い魔法回復薬を作る事ができる。



数日後、父さんに頼んで山に連れて来て貰った。


そこには、ジーク兄ちゃんとエレナお姉ちゃんも付いて来た。

歩いて行くには遠いので、家で管理している村共有の馬車を使った。


山で薬草を見付けるのは、簡単だった。


ここ数日で稼いだ《スキルポイント》で、《検索ツール》のレベルを上げたら、《地図》機能が追加されたからだ。

それは凄く便利で、《薬草》で検索すれば、その場所が地図にピンポイントで表示されたのだ。


そのお陰で、父さんが知らない薬草まで、採取する事ができた。

だがそれは薬草だけに留まらず、薬の効果のあるキノコまで採取できた。


そして、《地図》機能と同じように、《鑑定》機能も追加されていた。

この《鑑定》機能があれば、毒草や毒キノコが混ざる事は無かった。


「ニコルは、父さんの知らない事まで知ってるんだな」


「神様がくれた能力で、調べてるんだよ」


「なあなあニコル、兄ちゃんには使えないのか?」


「無理だと思うよ」


「ねえねえ、神様って本当にいたんだね。お祈りしたら、何かいい事あるかな?」


「どうだろうね。僕はお祈りしてないし、分からないよ」


みんな、僕の能力に興味深々だ。


採取した物には、山菜や食用のキノコもあった。

これらを持ち帰って、母さんが喜んでくれるのが楽しみだった。



父さんは出る幕が無くなり、途中から弓を持ち出して鴨を狙った。


しかし、少し齧っただけなので、上手くいかない様子だ。


「なあ、ニコル。神様から貰った力で、鴨は捕まえられないのか? 父さんが、かわいそうだ」


「今は、まだ無理」


「そうかー、まだ無理かー。肉が食べたいなー」


ジーク兄ちゃんは、育ち盛りで肉が食べたいらしい。

もちろん、僕も食べたい。


我が家の普段の食事には、肉が有るか無いか分からない程しか入ってなかった。



そう言えば、今日は朝早く家を出たので、ちゃんとした朝食を取ってない。

馬車の中で、黒パンを一個齧っただけだ。


「お腹空いたな。たしか、錬金術の能力に《調理》ってあったよな」


いい機会だし、採取した物で何か作る事にした。

前世は一人暮らしで、たまに自炊もしてたのでイメージは大丈夫なはず。


「ジーク兄ちゃん。休憩の時に、ご飯のおかずを一品作るよ」


ちなみに村では、お昼に食事を取る習慣は無い。


朝食が黒パン一個だったので、休憩する時に残りの黒パンを食べる事になっていた。

勿論、おかずは持って来てない。


「あれっ、ニコルって料理できたっけ?」


「できないけど、能力を使って何とかなるかもしれない」


「そうか、なら頼むよ。期待してるぜ!」


「お姉ちゃんも、食べたーい!」


「うん。いいよ」


エレナお姉ちゃんも、しっかり聞き耳を立てていた。



休憩時間になり、僕は何を作るか悩んでいた。


「錬金術で、肉って作れるのかな? でも、その辺の石や木が肉になっても、気分的に食べたくないな」


今の僕なら多くの魔力を消費すればできそうだが、口に入る物はなるべく素材その物を活かしたい。


「キノコと山菜があるから、ソテーみたいなのでいいかな? 調味料が一つも無いけど、《調理》の能力が上手く仕上げてくれる事を祈るしかないな」


僕は隠れて《亜空間収納》から自作の大皿を取り出し、キノコと山菜を乗せた。


「ニコル、その皿どうしたんだ?」


「袋に入れて、持ってきたんだ」


「そうなんだ。用意がいいな」


「何があるか、分からないからね」


ジーク兄ちゃんにウソを付いてしまった。


気を取り直して、皿の上の食材に錬金術を掛けると、白い光の中から熱々のキノコと山菜のソテーが現れた。

そして、今回の錬金術で、経験値が25ポイント手に入った。


「見た目は、美味しそうだな」


味見をしてみると、バターと醤油と塩と胡椒が効いていて美味しかった。

少し、酒も入ってるかもしれない。


「へー、調味料が無くても、ちゃんと味が付いてるんだ。これは、いい能力を手に入れた」


そこに、黙って見ていたジーク兄ちゃんが、話し掛けてきた。


「なー、ニコル。それ、美味いのか?」


「うん、美味しいよ」


「早く、食べようぜ」


「うん、みんな揃ってからね。ジーク兄ちゃんは、父さんを呼んで来てよ」


「分かった」



ジーク兄ちゃんが呼びに行って父さんは直ぐに帰って来たが、その手に収穫は無かった。

少し、落ち込んでるように見えた。


エレナお姉ちゃんは、その間に黒パンと水を用意してくれた。


みんな揃ったところで、僕は自作のフォークを配った。


「さあ、おかずが冷めない内に食べようよ」


「そうだな。いつまでも、落ち込んでられないな。では、いただこう」


「「「いただきます」」」


「もぐもぐ。ニコル、これ凄く美味いぞ! 初めて食べる味だ」


「美味しい!」


「母さんが作るのより、美味しいぞ!」


「父さん。母さんの前で、それを言わない方がいいよ」


「わ、分かってる。母さんには内緒だぞ!」


僕達兄弟は、意図せず父さんの弱みを握ってしまった。

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