第九話 ダンジョンの街の孤児院、再び
昼食後、みんなにこの街の孤児院の話しをした。
一ヶ月以上経ってるし、様子を見に行ってもいいかなと思った。
「私、行きたいです」
「私も、いいよー」
「ユミナ、子供大好きアピールかニャ?」
「シロン、アピールってどういう事?」
「ご主人ウケするニャ」
「私は、素直に言っただけです」
ユミナは、頬を膨らませてシロンに抗議した。
話しを聞くと、ユミナはグルジット領の孤児院へ、よく慰問に訪れていたそうだ。
そして、僕達は孤児院に行く事が決まった。
◇
孤児院に到着すると、子供達が僕に気付き集まって来た。
「あー、おにいちゃんだー!」
「おねえちゃんも、いるー!」
「わー、ねこちゃん。かわいい!」
みんな以前より、少しふっくらしている。
ちゃんと、食べれてるみたいだ。
「おお、ニコル久しいのう。おかげで、子供達は元気になったぞ」
僕を見付けて、リンゼさんも現れた。
「そうですか。それは良かった」
「ところで、そちらの美しいお嬢さん達を紹介して貰ってもいいかの」
リンゼさんの目が輝いてる。歳を取っても、やはり男か。
「そうですね。こちらがエミリさんで、こちらがユミナさんです。僕は今回、二人のダンジョンの護衛で来ました」
「エミリです」
「ユミナです」
「わしは、この孤児院の院長のリンゼじゃ。お二人を歓迎しますぞ。ところで、お二人は貴族のお嬢様かの?」
「やっぱり、分かります?」
「一目で分かるぞ。まだ学生みたいだが、夏休みになったばかりで、随分早く来なさったのう」
「ダンジョンに早く行きたかったので、急いで来ました」
いろいろ見せたけど、《転移魔法》で来た事は言えない。
「そうか。ニコルも貴族のお嬢さんの護衛で来たのなら、相当な実力の持ち主なのだろうな。いろいろ見たから、驚かんわい」
「ハハッ」
「ところで、畑の野菜が驚くほど実ったぞ。ほんと、助かっておる」
僕はそちらに目をやる。確かに、実がたくさんなっている。
「ほんとだ。育ってる。世話をちゃんとしてるんですね」
「ああ、子供達が如雨露の取り合いをしているくらいだ」
「何だか、微笑ましいですね」
「そうじゃの」
二人は、にこやかに微笑む。
「子供達に、おやつをあげていいですか?」
「ああ、みんな喜ぶ。ところで、わしの分もあるのか?」
やっぱり、リンゼさんは食いしん坊だ。
「ちゃんとありますよ。それじゃ、食いしん坊のリンゼさんには、一番にあげます」
僕は魔法袋から、パイナップルに串を刺して凍らせたアイスを渡した。
「おお、ありがたい。だが、初めて見るのー。ガブッ。おお、ひゃっこい。そして、甘酸っぱいくて美味い」
「あー、じいじだけたべてるー」
「ほんとだー」
「いいなー」
「なっ、わしだけじゃない。みんなの分もある。ニコル、何とかしてくれ!」
「はいはい、分かりました」
子供達は、僕を見ている。
「みんなー、順番にあげるから一列に並んでー!」
「「「「「はーい!」」」」」
子供達は素直に並び、僕はパイナップルのアイスを配る。
「ちべたーい」
「うまうまー」
「うおー、うめー!」
みんな喜んでいる。
パイナップルのアイスを食べ終わった後、エミリ、ユミナ、シロンを子供達に紹介した。
みんな、子供達に人気だ。
「わーい、ねこちゃん、もふもふー」
子供は、もふもふな猫が好きだ。
「おねえちゃん、おっぱいおっきー」
大きなおっぱいも、好きだ。
「ちょっと、何で私のところには来ないのよ!」
エミリだけは、ちょっと違った。
「よーし、こうなったら」
エミリは木の棒を持ち、剣術を始めた。
「わー!」
「かっこいいー!」
「すげー、ねえちゃんおしえてー!」
エミリの周りにも、ようやく男の子達が集まって来た。
「エミリ、良かったな」
だけど一番人気は、もふもふのシロンだった。




