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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第二章 王都行商編
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第四十二話 ハーレムだニャ!

僕はエミリさんとユミナさんとの約束で、喫茶店に向かっていた。


シロンに『出掛けてくる』と言ったら、『付いて行く』と言い出した。

二人に隠す必要も無いかと思い、それを了承した。


喫茶店の前に着くと、二人の姿が見えた。

しかしそこには男がいて、話し掛けられているようだった。

近付くと男の顔がちらりと見え、僕はそのまま方向転換し、その場を去ろうとした。


すると、そこで声を掛けられてしまった。


「ニコル君! ちょっと、どこ行くのよ!」


僕は振り返らずに、そのまま歩く。

しかしエミリさんが駆け寄って来て、僕の肩に手を掛けた。


「ニコル君ってば、どうしたのよ!」


僕は振り向けずにいた。

振り向くと、一緒にいた男に顔を見られてしまうからだ。

僕は振り向かずに答えた。


「あの人です。いちゃもんを付けて、牢獄に入れようとした子爵の嫡男は」


「えっ、そうなの? でも、私達も困ってるのよ。あいつ、しつこくお茶に誘って来るの」


「僕を巻き込まないでください。貴族に捕まったら、牢獄に入れられてしまいます」


「うっ、それもそうね」


そんな事を話していると、ユミナさんがこっちに来てしまった。


「エミリ、ニコル君来てたの?」


「ええ、でもちょっと問題があって」


そこに、子爵嫡男が追って来てしまった。


「ユミナ嬢、どうしたんですか? お話しの途中に行ってしまうなんて」


「私は、ちゃんとお断りしました!」


「そんな照れなくてもいいのですよ。私はあなたのお気持ちを、ちゃんと分かっているのですから」


「分かっていません! しつこいです!」


そう言って、ユミナさんは僕の前に回り込んだ。

そこで子爵嫡男は、僕の存在に気付いてしまった。


「おっ、おまえっ、あの時の虫けら!」


とうとう、見つかってしまった。

こうなっては、もうしょうがない。僕は、子爵嫡男に向き直って挨拶をした。


「その節はどうも」


「何を言っている! 貴族に逆らって逃げたんだ。今度こそ、牢獄に入れてやる!」


「逃げなくても、牢獄行きだったでしょ」


「逃げた事で、罪は重なる。あのまま捕まっていれば、少し痛い目を見るだけで済んだものを」


「そんな、理不尽な・・・」


そこへ、エミリさんが助けに入ってくれた。


「ちょっと待って、この人は私達の友達よ。牢獄になんて、入れさせないわ!」


「エミリ嬢、何を言ってるのです。こいつは、ただの露店商ですよ。しかも、私に逆らって逃げたのです」


「理由は知ってます。あなた自分勝手過ぎる。貴族だからと言って、何でも許されないわ!」


「貴族には、貴族の特権が許される。それを行使しただけです」


「偉いのは、あなたのお父様でしょ! 話にならない。ニコル君、ユミナ、行きましょ!」


そう言って、エミリさんは僕の腕を掴んだ。


貴族嫡男は僕を睨み、『ぐぬぬっ』と、唸っていた。

さてこの場は何とかなったが、執念深そうな相手がこの後何をしてくるか心配だ。


シロンは、この様子をおとなしく見ているだけだった。



「まったく、とんでもない奴ね!」


「そうですね。これからが、思いやられます」


「せっかく、あの喫茶店でパンケーキを食べようと思ってたのに、台無しだわ」


「今から戻れば、大丈夫じゃないですか?」


「それがどうも、あいつの従者に付けられてるみたいなのよ」


「そうなんですか? 厄介ですね」


「これはもう、《転移魔法》であなたの住まいに行くしかないわね」


「そんなー。貴族令嬢がまずいですよ」


「あら、あなたは私達に、まずい事をしようとでも言うのかしら?」


「揚げ足取らないでくださいよー」


「じゃあ、大丈夫でしょ。《転移魔法》って、一度体験したかったのよ」


僕は思った。厄介事の深みに嵌っているんじゃないかと。


「しょうがないですね。今回だけですよ」


「分かった分かった。でも、帰りもお願いね」


「シロン、こっちおいで!」


「あら、このかわいい猫。あなたのなの?」


「ええ、一昨日から飼ってます。《元日本人》の《転生者》です」


エミリさんは、魔眼を使ってシロンを見ている。


「あら、本当だわ。驚いた!」


「ご主人、《転移魔法》が使えるのかニャ? やっぱりチートニャ。ハーレムだニャ!」


「ハーレムは、関係無いだろ!」


「あら、この子しゃべれるのね。よろしくね!」


「よろしくニャ!」


「じゃあ、人のいないところへ行ったら《転移魔法》を使うので、僕の近くにいてください。ユミナさんもお願いします」


「はっ、はい。分かりました」


こうして僕達は人のいない場所へ行き、借家へ転移するのだった。

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