第三十八話 イケメン好き
今は借家で寛いでいる。
「お前、名前何て言うんだ」
「名前はまだ無いニャ。ご主人付けてニャ」
「名前を付けるのはいいけど、お前語尾どうにかならないか?」
「キャラ付けは大事ニャ。普通の語尾だと、誰が喋ってるか分からないニャ」
「そういうもんかねー」
「そうニャ。大事ニャ。ところで、ご主人の名前は何て言うニャ」
「ニコルだ」
「ニコル、いい名前ニャ」
「お世辞を言っても無駄だぞ」
「何で分かったニャ」
「やっぱりそうか。もう、お前の名前は毛が白いから《シロ》でいいな」
「気にいったニャ。シロでいいニャ。でも日本語で大丈夫かニャ?」
「そう言えばそうか。元日本人がいたら、すぐに分かるしな。じゃあ、お前の名前は《シロン》だ」
「あまり変わらないけど、シロンでいいニャ」
「じゃあ、シロン。何で僕に飼われたいんだ」
「ご主人がタイプだからニャ。《イケメン》ニャ」
「お前、猫だろ」
「心は人間ニャ。乙女ニャ」
「確認しなかったけど、メスだったんだな」
「どこからどう見てもそうニャ。ご主人の目は節穴かニャ」
「分かった。もういいよ。ところでシロン、おなか空いてないか?」
「空いてるニャ。でも、お互いの過去や前世の事は、話さないのかニャ?」
「もっと、気心がしれてからでもいいだろ」
「ご主人の事、知りたいニャ。でも、言う事を聞くニャ」
「そう言えば、猫って食べたらいけないもの結構あったよな。この世界にキャットフードなんてないけど、何を食べてたんだ?」
「何でも食べるニャ。《毒耐性》があるから大丈夫ニャ。でも、ネズミや小鳥は嫌ニャ」
さすがに元日本人と分かっていて、そんな事はしない。
「お前、《毒耐性》が分かるって事は、《鑑定》スキルがあるのか?」
「無い二ャ。感二ャ」
「そうなのか、まあいいや。じゃあ今日は特別に、ミノタウロスのヒレ肉とデザートにバナナを食わせてやる」
「ミノタウロスは、美味しいのかニャ?」
「美味いぞ! 和牛のA5ランク以上だ」
「それは嬉しいニャ」
「味付けは、しないほうがいいのか?」
「味は付いてた方がいいニャ。でも薄味でお願いするニャ」
僕はミノタウロスを錬金術で調理して、サイコロサイズにカットして皿に出してやった。
「美味しいニャ。すごく美味しいニャ。これなら毎日食べたいニャ」
「そうだろう。美味いんだよ。なんてったって上質の肉だからな」
そして、輪切りにしたバナナを三切れ皿に置いて、残りは僕が食べた。
丸々一本だと、シロンには多いからね。
「バナナも美味しいニャ。幸せニャ」
どんな、食生活をしてたんだか。これからは、美味い物を食べさせてあげよう。
「よかったな」
シロンは食事を済ませた後、ベットに上がり丸まって休んでしまった。
「こいつ、こういうところは猫だな」
『これが、普通の猫だったら良かったのに』と思ったが、何度も口にするのは良くない。
「そういえば、シロンの寝床とトイレを用意しないとな」
「トイレは恥ずかしいから、外でするニャ」
「そうなのか。それならいいけど」
その日は、ベットで一緒に寝てしまった。
『ニャ』が多すぎた。




