第三十六話 上質肉確保とパーティー臨時加入
2021/05/07 ステータスのアイテムの表記を修正しました。
2021/04/17 ステータス表記を追加しました。
朝食を済ませ、皮鎧と剣を装備してエーテルの街に転移した。
今回は、ちゃんと入場料を払ってダンジョンに入った。
「どの階層がいいかな。人も魔物もあまり多くないほうがいいんだけど、いきなり強い魔物だと落ち着いて呪文を唱えられないよな」
僕は地下三階に転移で移動し、コボルトを相手に攻撃魔法の練習をする事にした。
なるべく人のいないところを探したが、この階層だと初心者パーティーがかなりいる。
「人が多いけど、しょうがない。早く一通り魔法を覚えて、ミノタウロスの肉を確保しに行こう」
◇
初級魔法を一通り覚えて、そろそろミノタウロスのいる階層に行こうかと考えていると、突然声を掛けられた。
「あれ、ニコルか?」
振り向くと、そこにはダンジョン探索者試験で一緒になったカインさんがいた。
「カインさん、久しぶりです。同じ階層にいたんですね」
「おいおい、俺達は同期なんだ。『さん』付けは止めてくれよ。《カイン》でいいぜ」
「分かったよ。カイン」
「ああ、それでいい。それより、ニコルは魔法使いだったんだな。この階で噂になってたぞ。魔法を打ちまくってる奴がいるって」
「えっ、ほんとに。魔法を覚え立てで、夢中になっちゃったよ」
「へー、そうなんだ。ところで魔力量も多そうだな」
「うん、そうだね。普通の人より多いみたいだ」
そこで、カインが考える。
「なあ、ニコル。俺達と臨時のパーティーを組まないか? ニコルがいれば、下の階に行けそうだ」
『肉の確保を考えていたけど、いつでもできるしいいか』
僕はカインの提案を、受け入れる事にした。
「うん、いいよ」
◇
パーティーの人達と自己紹介が終わり、カインの要望通り下の階へ進んだ。
地下四階の魔物は、ゴブリンである。
「ニコル、すげーな。《無詠唱》で魔法が使えるんだ。それに杖も使ってない」
「そ、そうだね」
『無詠唱って、やっぱりチートなんだよな。だけど、呪文は完全に覚えて無いし、魔法書を片手に持ちながらだとかっこう悪い』と、心の声。
「ニコルだったら、王国魔術師になれるんじゃないか?」
「そんな事ないよ。そんなに甘いものじゃないだろう」
「そうか? でもなー」
その後も魔物の討伐を続けたが、僕はなるべく控えめにした。
◇
僕らは今ダンジョンを出て、夕食を食べ終わったところだ。
「ニコル、本当に要らないのか?」
「うん、大丈夫。本業の行商で、儲けてるからね」
「そうか、悪いな。それじゃパーティーの正式加入はどうだ?」
「ごめん。ダンジョンに来た理由は、行商中に身を守れるようになりたかっただけなんだ」
『僕は最近、嘘つきだ。ごめんよ、カイン』
「分かったよ。残念だが、しょうがない。諦める」
カインは、手を差し出してきた。僕も手を差し出し、握手を交わす。
そして、別れを告げる。
「みなさん。それじゃ、また」
「「「「またな(ね)」」」」
今度いつ会えるか分からないけど、パーティーを組むのもいいものだなと思った。
◇
翌日、早速ダンジョンに来ていた。
「ミノタウロス相手に、初級魔法は効かないな」
通常の初級魔法だと効目が無い為、《魔力操作》スキルで魔力を多く込めて魔法を放った。
「ブモーーー!」
「おっ、効いてる。でも、まだ足りないか」
今のは、魔力十倍の《風刃》。
「今度は、魔力十五倍の《風刃》だ!」
『ヒュン』
ミノタウロスの首が吹っ飛んだ。
「ほー、魔力十五倍ならいけるか」
僕の魔法は、レベルの数字と同じ量しか魔力を消費しない。
威力を上げるには、《魔力操作》スキルで魔力を増やせばよかった。
《風属性魔法》の《風刃》はレベル2の魔法なので、十五倍だと30MPを消費する。
「よし、この調子で肉を確保しよう」
僕はこの後も、いろいろな魔法を試し魔物を狩り続けた。
◇
「いやっほー、上質肉が大量だ」
他に人がいなかったので、狩りまくってしまった。
ミノタウロスの他に、ブルドボアの肉も手に入れた。
「これでも充分満足なんだけど、ここまで来たら行くでしょ」
最後に、ラスボスのギガントミノタウロスを倒しに行く事にした。
「相変わらず速いや。アレンさんのように、《瞬動》が使えると楽なんだけどな」
《身体強化》を掛け、しばらく追い駆けっこをしていた。
試験の時のアレンさんを思い出し、その動きを何度もチャレンジする。
しかし、上手くいかなかった。
「くそー、どうしてだ」
上手くいかず苛立っていると、ギガントミノタウロスの動きが《瞬動》に似ているのを思い出した。
「あいつ早く動くとき、脚に大量に魔力を流してるのか?」
その事に気付き、アレンさんの動きを思い出しながら脚に魔力を込めると、一瞬で風景が変わった。
「できたのか?」
いつものウインドウが現れ、《瞬動》スキルを取得した事を伝えてきた。
「ハハッ、やった。できた」
その後《瞬動》スキルに慣れるまで何度も特訓し、最終的にレベル5まで上げた。
そんな僕の今のステータスは、こんな感じである。
【名前】ニコル
【年齢】十五歳
【種族】人族
【性別】男
【職業】(本業)大魔導錬金術師・見習い商人
【称号】-
【レベル】158
【体力】2410/2410
【魔力】241000/241000
【攻撃力】232
【物理防御力】232
【魔法防御力】232
【筋力】232
【敏捷】232
【持久力】232
【精神力】232
【知力】472
【運】232
【賢者の石魔力量】456,246,789
【スキルポイント】140
【固有スキル】大魔導錬金術(Lv10)/検索ツール(Lv10)/亜空間収納(Lv10)
【スキル】剣術(Lv10)/体術(Lv10)
魔力感知(Lv5)/危機感知(Lv10)
魔力操作(Lv10)/魔法言語(Lv1)/身体強化(Lv10)/威圧(Lv1)/瞬動(Lv5)
農業(Lv1)/採取(Lv1)/狩猟(Lv1)/採掘(Lv1)/御車(Lv1)/騎乗(Lv1)/料理(Lv1)
【魔法】火属性魔法(Lv1)/水属性魔法(Lv1)/風属性魔法(Lv1)/土属性魔法(Lv1)
聖属性魔法(Lv1)/空間属性魔法(Lv10)/防御属性魔法(Lv1)/結界属性魔法(Lv1)
生活属性魔法(Lv3)
【武器】魔鋼の片手剣(攻撃力:+1000)・(強靭(中)付与)・(腐食耐性(中)付与)
【防具】猪の皮鎧(物理防御力:+250)・(魔法防御力:+250)・(防汚(小)付与)
【アイテム】指輪(魔力回復(超特級)付与:全魔力回復所要時間8H)
ネックレス(状態異常耐性(超特級)付与:完全耐性)
そして、《瞬動》スキルはかなり有用な能力だった。
「これはいいや。《危機感知》と連動させれば、危機でも瞬時に動ける」
僕は逃げに徹するが、ギガントミノタウロスもスタミナが有り、速さは衰えない。
「もう、いいかな」
充分《瞬動》スキルを満喫したので、魔力四十倍の《水刃》で止めを刺した。
「《上級魔法》だったら、魔力が10MPで済むんだよな。でも、魔法書を買えないし、《スキルポイント》を使って魔法のレベルを上げないと《上級魔法》を使えないんだよね」
どの魔法に《スキルポイント》を使うか、決めかねていた。
ここで考えていてもしょうがないので、前回と同じドロップ品を《亜空間収納》にしまった。
「あれ、無いぞ。大金貨二百枚!」
このフロアをくまなく探したが、《宝箱》は見つからなかった。
どういうタイミングで出現するか分からないが、頻繁には出ないのだろう。
「宝箱は見つからなかったけど、《瞬動》スキルも含めいろいろと収穫が有ったし良かった」
魔石や素材、そして上質の肉が手に入り、『《ダンジョン探索者》って、やっぱり儲かるんじゃないか?』と、揺れる自分がいた。




