第三十五話 新たな魔法②
2020/07/10 《除霊魔法》で霊が消える場面を修正しました。
喫茶店を出て二人と別れ、まだ小腹が空いていたので、遅い昼食を屋台の肉串で済ませた。
街をふらついていると、魔法書を買った魔道具屋が目に入った。
大金を手に入れた事もあり、新たに魔法書を買う事にした。
「こんにちわ。この間の魔法書が良かったので、また来ました」
「そうかい。それはよかった。今日は何をお探しかの?」
「各属性の初級本がいろいろと欲しいんですけど、その中に《飛行属性魔法》の魔法書ってありますか?」
「初級本ならいろいろあるが、《飛行属性魔法》は王立図書館で管理されとるのー」
「そうですか。残念です。それでは、初級の魔法書だけでも見せてもらっていいですか?」
「前にも言ったが、ただの立ち読みはだめじゃぞ」
「分かってますよ。ちゃんと選んで買いますって」
そんなやり取りの後、魔法書の本棚を探すと十五冊の初級本があった。
たぶん全部買えたが、その中からメジャーな物を五冊選んだ。
基本となる《四属性魔法》の《火属性魔法》・《水属性魔法》・《風属性魔法》・《土属性魔法》と《聖属性魔法》である。
「おじいさん。これ全部でいくらするんですか」
「お主、こんなに買って適正はあるのか? わしは、買って貰えればそれでいいんじゃが」
「適正? 別に気にしてないです。魔法書を読むのが好きなんで」
『すみません。うそです。全部適正があるはずです。神様が言ってました』と、心の声。
「それならいいが。《四属性魔法》は一冊三万マネー。《聖属性魔法》は五万マネー。全部で十七万マネーじゃ。まける事はできんぞ」
『あれ、この間買った二冊分の金額より安い。そう言えば初中級だったな?』
「分かりました。じゃあ、これ小金貨二枚です」
僕はお釣りを受け取り、魔法書を手にし店を出た。
僕は早々に魔法を使ってみたかったが、危険な魔法もあるので街中で使うわけにもいかない。
場所を移して使うにも、中途半端な時間だったので、借家に帰って読む事にした。
「ふむふむ、《四属性魔法》はよくラノベに出てくるやつだな。《聖属性魔法》はアンデッド系に効くんだな。それと《回復系》の魔法か」
「《聖属性魔法》なら、ここでも使えそうだ。アンデッドもいなければ、怪我もしてないんだけどね」
魔法書から《除霊魔法》の呪文を唱えた。
『うぎゃーーー!』
すると、僕の目の前に人の形をした白い浮遊体が現れ、家の中をあちこち飛び回った。
しばらくして動きが止まり、苦しむように消えた。
ニコルは気が付かなかったが、霊は最後こんな言葉を残して消えた。『あなたを、もっと見ていたかった』と。
僕のステータスには、《聖属性魔法(Lv1)》とその下層に《除霊魔法》が追加された。
「あれ? この家に霊がいたのか? 何も見えないんで、適当に魔法を掛けたんだけど。最後、何か言ってたか?」
僕には、霊感が無かった。
しかし、《除霊魔法》を掛けられた霊は、可視化できるようになったようだ。
「浮遊霊だよな。守護霊だとしたら、まずかったかな?」
どちらにしても、自分が気付かないところで見られるのは、いい気分はしない。
「これからは、頻繁に《除霊魔法》を使うようにしよう。霊にプライバシーの侵害なんて言えないし」
その後も《体力回復魔法》・《解毒魔法》・《麻痺解除魔法》の呪文を唱え、ステータスに追加された。
夕食の時間になり、ダンジョンでドロップしたミノタウロスのロース肉でステーキを作った。
「首から下が人っぽいけど、《鑑定先生》が《特上の肉》と判定したんだ。ここは異世界だし、信じて食べよう」
僕はステーキを一口の大きさに切り、口へ運んだ。
「うめー! この間、勇也さん達と食べたレッドボアのステーキより美味い。魔物の肉って、こんなに美味いんだ」
大量の肉は《亜空間収納》にあったが、明日は朝から魔法の特訓がてら、ダンジョンに肉を補充しに行く事にした。




