第三十一話 神様は教えてくれなかった
2021/05/07 ステータスのアイテムの表記を修正しました。
最下層の地下二十階は、他の階層と比べると断然狭く百メートル四方程だった。
ラスボスはギガントミノタウロスで、大きさは六メートルもあり思わず見上げてしまった。
ミノタウロスの大きい盤かと思いたかをくくってたが、全てを大きく凌駕していた。
振り下ろす斧は硬い地面を砕き、僕が交わすとアレンさんの《瞬動》には及ばないが、凄い速さで距離を詰めてきた。
僕は《危機感知》スキルが反応したので、とっさにかわすが間に合わず突き飛ばされてしまった。
「くそっ、いてー。油断した」
ダメージはあったが、動けないほどではない。
僕は《身体強化》をレベル1からレベル3に上げ、剣の魔力もミノタウロス戦の三倍に増やした。
その効果もあり、ギガントミノタウロスの速度に合わせ動けるようになった。
「奴のスピードは、厄介だ。動きを止める」
隙を見て右脚を攻めた。
一度で足を両断する事はできなかったが、確実にスピードは落ちた。
そして、攻撃を掻い潜り集中して右足を攻め、やっとの思いで切り落とす。
それからは、一方的だった。
片膝をつきながら振るう斧をかわし、胴を薙いだ。
さすがに両断は出来なかったが、血と内臓が飛び出し苦しんでいる。
斧を振るう腕の力も弱り、その腕を切り落とした。
後はほおっておけば死にそうであったが、苦しんでいたので止めをさしてやる。
「よし、あれを試すか」
僕は剣に《空間属性魔法》の《亜空間》を付与し、ギガントミノタウロスの体を利用して駆け上がる。
「《亜空間斬り》」と、技の名前を唱え、ギガントミノタウロスの太い首を切り落とした。
最初からこれを使えよと思う人がいるかもしれないが、必殺技は最後に使った方が格好いいのである。
ギガントミノタウロスからは、今までのどの魔物よりも大きくて濃赤の質の良い魔石と《ヒヒイロカネのインゴット》十キロが十個と《特上ロース肉》と《特上ヒレ肉》がそれぞれ五十キロドロップされた。
特大の斧もそのまま残り、その斧もヒヒイロカネでできていた。
それらを見ていると、目の前にウインドウが現れ、次のような内容が表記されていた。
〔職業《見習いダンジョン探索者》が《ダンジョン探索者》にランクアップされました。これにより、職業の変更が可能です〕
〔職業を変更すると、職業に合ったステータスに変更されます。また《固有スキル》の取得ができます。なお職業変更後は、一年間変更できません』
「何だこれは! 《職業変更》だと! 神様は教えてくれなかったぞ!」
「それにしても、ダンジョン踏破してやっと見習いが外れるなんて、ハードル高すぎだな」
「職業は今のままでもいいけど、固有スキルが気になる。変更後のステータスを確認できるのか?」
僕はステータスを開いて、《職業》欄の《ダンジョン探索者》をタップしてみた。
すると、〔1:職業を変更する 2:職業変更後のステータスを見る 3:戻る〕というような選択肢が出てきた。
とりあえず、2番を選択すると変更後のステータスが表示された。
※職業変更後のステータスです。
【名前】ニコル
【年齢】十五才
【種族】人族
【性別】男
【職業】(本業)ダンジョン探索者・大魔導錬金術師・見習い商人
【称号】-
【レベル】158
【体力】79200/96400←1980/2410(×40)
【魔力】47595/48200←237975/241000(÷5)
【攻撃力】5640←232(×20)+1000
【物理防御力】4890←232(×20)+250
【魔法防御力】4890←232(×20)+250
【筋力】4640←232(×20)
【敏捷】4640←232(×20)
【持久力】4640←232(×20)
【精神力】2320←232(×10)
【知力】4720←472(×10)
【運】2320←232(×10)
【賢者の石魔力量】454,802,232
【スキルポイント】144
【固有スキル】大魔導錬金術(Lv10)/検索ツール(Lv10)/亜空間収納(Lv10)/万能調教(Lv1)
【スキル】剣術(Lv10)/体術(Lv10)
魔力感知(Lv5)/危機感知(Lv10)
魔力操作(Lv10)/魔法言語(Lv1)/身体強化(Lv10)/威圧(Lv1)
農業(Lv1)/採取(Lv1)/狩猟(Lv1)/採掘(Lv1)/御車(Lv1)/騎乗(Lv1)/料理(Lv1)
【魔法】空間属性魔法(Lv10)/防御属性魔法(Lv1)/結界属性魔法(Lv1)/生活属性魔法(Lv3)
【武器】魔鋼の片手剣(攻撃力:+1000)・(強靭(中)付与)・(腐食耐性(中)付与)
【防具】猪の皮鎧(物理防御力:+250)・(魔法防御力:+250)・(防汚(小)付与)
【アイテム】指輪(魔力回復(超特級)付与:全魔力回復所要時間8H)
ネックレス(状態異常耐性(超特級)付与:完全耐性)
「うん、ステータスが随分変わってる。軽く人間を卒業してる」
「魔力の総量が全体に分散したみたいだ」
「魔力が五分の一になるって事は、《賢者の石》に溜まる魔力も五分の一になるって事だよね」
「《スキルポイント》は、変わってないね。これが増えてくれると、もう少し気軽に使えるんだけど」
《スキルポイント》は、魔法やスキルを最初に取得する時は使われなかったが、それらのレベルを全て上げようとすると足らなかった。
そういう理由で、必要な物だけに使うようにしている。
「《固有スキル》が《万能調教》って、ラノベなんかでいう《テイマー》かな? 魔物を外に連れ出したら騒ぎになるよな」
「圧倒的に戦闘に向いてるけど、今のステータスでもダンジョンを踏破できるしな。今すぐ変更しなくてもいいや」
「ドロップ品をしまって、今はこの部屋にある《宝箱》を開けるとしよう」
そう、この部屋には小さな宝箱があった。
開けると中には《大金貨二百枚》と、《エリクサー》の入った瓶が一本入っていた。
「凄い。大金貨二百枚って、日本円で言ったら二億円位の価値があるよな。もう働かなくてもいいんじゃないか? それにエリクサーって、万病も部位欠損も直す万能薬だよね」
驚きながらもそれらを《亜空間収納》にしまい、出口への《転移装置》を探した。使うつもりは無いけど。
「そうか、そんな便利な物無いのか。ダンジョンを踏破しても、自力で戻らないといけないんだな。他の人は大変だ」
僕は《転移魔法》で、ダンジョンの出口近くまで移動した。
通称《ダン防》を出ると、日は沈み掛けていた。
目立ってもいい事は無いので、ダンジョン踏破の報告はしてない。
そして、魔石やドロップ品を売りに出す事も無かった。
変更後のステータスは、変更する可能性があります。




