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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第二章 王都行商編
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第二十八話 武器屋で掘出し物

講習会まで時間があったので、僕は武器屋にちょっとした用事で出かけた。


店に入ると、店主と思われるガタイのいいおじさんが、僕に話し掛けて来た。


「おい坊主、探索者か?」


「はい。今日試験に合格して、あとは講習を受けるだけです」


「ほお、立派なこった。俺はここの店主だ。今日はどんな用件だ?」


行商人としての活動を王都でできてないので、この街でやってみる事にした。


「行商人もやってるんですけど、鋼のインゴットを買って貰おうかと思って」


「なんだ、買うんじゃなくて売りに来たのか?」


「ええ、まあ」


「そうか、じゃあ見てやるか」


僕は魔法袋から、十キログラムの塊を五個取り出した。

店主はその塊を見ると、真剣に吟味しだした。


「これはどれも上物だな。どこで手に入れた?」


「それは教えられないんですよ」


ここは、いつも通り答える。


「それじゃー、取引きは無しだな」


「えっ、そうなんですか」


まさか、そんな風に言われるとは思わなかった。


「俺は出処が分からねえ物を、使う気はねえんだ。過去に盗品を掴まされてな。買って貰いたいなら、出処を明かしな」


あっさり、取引き失敗。

こういう事もあるんだな。何か対策を考えよう。


「そうですか残念です。しょうがないですね。売るのは諦めますが、商品を見ていっていいですか?」


「おう、見るだけじゃなく、買って貰えるとありがてえがな」


僕はインゴットを魔法袋にしまい、商品を見てまわった。


ダンジョンの街だけあって、いい物がかなり揃ってた。

強力ではないけど、付与が掛かった物もある。


でも、これらよりいい物を持ってるし、自分で作れるので買う事はない。


『店主のおじさん。冷やかしでごめんなさい』


そんな事を思っていると、店の片隅に目が行った。


そこには、歯こぼれしたり折れた剣が二束三文で売っている。

たぶん、客が買い換える時に置いていったのだろう。

まあ、それを売り物にするのもどうかと思うが、需要があるならいいのかな?


それらを見ていると、店主が声を掛けてきた。


「なんだ! そんな使い物にならない剣なんかを見て、ちゃんとした剣を買うんじゃないのか?」


「いやー、値段見たら手が出なくて、こっちに掘り出し物が無いか見てたんです」


「掘り出し物って、どれも使い物にならないぞ!」


「剣って折れたら修理できないんですか?」


「折れたらどんなに上手く繋げても、そこがすぐに折れちまう。最初から作った方が早いな。まあ高位の錬金術師なら元に戻せるかもしれねえが、それなりに金が掛かるってもんよ」


「錬金術ですか。それじゃ、買う人もいないですね」


「材料が手に入らなければ、溶かして使うさ。それまでは置いておく」


「ちょっと興味があるんで、見ててもいいですか?」


「他の客の邪魔にならないようにな」


「はい!」


僕は錬金術で剣の修理もできるから、いいものであれば修理して魔改造しようと思う。

《鑑定》して見ると、とび抜けていい剣が一本あった。

そして半分に折れたその剣を、カウンターに持っていった。


「これください」


「おう坊主、折れてるがいい剣を選んだな。行商人だけあって、目利きがいい。ところで、これを何に使うんだ?」


『え、そんな事聞くの? 直して使うに決まってるでしょ。くず鉄にしとくなんて勿体無い』


でも、そんな事言えなかった。


「将来こういう剣を持てるように、目を鍛えたいと思いまして」


く、苦しい回答だ。こんなんで、納得するはずが無い。


「いい心掛けだな。三千マネーにまけてやる」


そうでも無かった。


「えっ、いいんですか? ありがとうございます」


僕は大銅貨三枚を渡し、剣を魔法袋に入れて店を出た。


その後昼食を食べ、孤児院に寄付して足りなくなった食糧を買い、初ダンジョンに備えるのであった。



講習会を受講し、無事《Gランク》の《ダンジョン探索者カード》を受け取った。

《Gランク》は、もちろん一番下のランクだ。


「今日は王都の借家へ戻って、明日朝一でダンジョンへ行こう」


僕はひとまず、王都の借家へ転移した。

 

「そうだ。武器屋で買った剣を直さなきゃ」と、言いつつ魔法袋から折れた剣を取り出す。


この折れた剣が、どういう経緯であそこにあったのかは分からない。

《鑑定》で確認したところ、使われている材料は《魔鋼》だった。


僕は正直《魔鋼》の存在を知らなかった。

どうやら普通の鋼の剣より、強靭で魔力の通りが格段にいいようだ。

ミスリルには劣るようだが、それに順ずる素材であった。


あの店の中で一番強力な《強靭化(中)》と《腐食耐性(中)》の付与も掛かっていた。


「この片手剣が折れるという事は、余程剣術のレベルが低い剣士が扱ったか、余程堅い相手と戦ったに違いないな」


僕は剣に手を翳し、魔力を込めて《修復》の錬金術を掛けた。

剣が淡い白光に包まれ、数秒で一本に繋がった。


剣を握り振って見る。


「ん、いい感じだ。手に馴染む」


鞘がないので手持ちの材料で作り、予備として《亜空間収納》にしまった。


「さて、一通り準備はできたしご飯にするか」


その日は《亜空間収納》にある食事で済ませ、翌日に備えて早い時間に寝てしまった。

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