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第三話 初めての錬金術①

この貧しい村では、五歳になると畑仕事の働き手となる。


それは、《人頭税》の小麦の生産と自分達が食べる分で、いつも四苦八苦していたからだ。

それでも、ぎりぎり一日二食、質素な食事をとる事ができた。


朝食を済ませると、僕は父さんと兄さんと一緒に畑へ向かった。

姉さんは、母さんの手伝いがあるらしい。


今日の作業は、春キャベツの収穫である。

父さんが収穫し、兄さんと僕で荷車に積んでいく。


こんな単純な作業だが、僕の気持ちは昂っていた。


昨日までは、ただ《のほほん》と過ごしていたが、今日からは、神様から授かった能力と前世の記憶で、《異世界のんびり生活》を満喫できるからだ。


「おら、わくわくすっぞい!」


「ニコル、何か言ったか?」


「なっ、何でもないよ。兄ちゃん」


やばい。興奮しすぎて、あの有名な台詞を言ってしまった。



休憩を挟んで一日の手伝いが終わり、自由時間になった。

僕は人目のつかない場所へ行き、錬金術を使う事にした。


「僕の知ってるラノベや漫画だと、《魔力操作》を練習したり《錬成陣》を書いたりするんだよな」


「神様は、《イマジネーション》で錬金術が使えるって言ってたけど、どうやって使うんだ?」


《検索ツール》で錬金術の使い方を調べると、〔対価とする物質に魔力を込めながら、変化後の状態を念じる〕と、答えが返って来た。


「魔力か。ラノベなんかだと、血液のように体を循環してるって言うよな?」


僕は目を瞑り、体の中の《魔力》を意識した。

すると、嘘かと思うくらい簡単に、《魔力》が体の中に循環しているのを感じた。


その時、目を瞑った状態にも関わらず、目の前にウインドウが現れた。


〔スキル《魔力感知(Lv1)》を、取得しました〕


「えっ、こんな簡単にスキルが取得できるの? この世界の基準が分からないけど、たぶんチートなんだろうな。神様ありがとうございます」


神様に感謝しつつ、今度は右手に魔力が集まるようイメージしてみた。


〔スキル《魔力操作(Lv1)》を、取得しました〕


「おお、またスキル獲得。ちょっと、簡単過ぎじゃないか?」


そう思いながらも、右手に集めた魔力を操作してみると、体の意識した部分に簡単に移動する事ができた。


「本当にチートだな。それじゃ、いよいよ本番だ!」


そこで、初めての錬金術を何にするか考えた。

だが、その答えは直ぐに出た。


「この石でいいかな。本当の意味は違うと思うけど、錬金術というくらいだから最初は《金》を作るぞ!」


そう言いながら、直径五センチ程の石を手に持ち、『金になれ』と念じた。


「ん? 何も起きない」


「魔力操作が、できてないのかな? それとも、スキルレベルが足りないのか?」


ステータスを開き、《大魔導錬金術(Lv1)》をタップすると次のような内容が表示された。


〔能力:《分離》《抽出》《分解》《破壊》〕


「うん。確かに、石を金にするような能力は無さそうだ」


残念だが、金の錬成は諦めた。


「そうすると、今使える能力でレベルアップしないとな」


取り合えず、一つずつ能力を試す事にした。


「まず、この石を破壊してみるか」


僕は石に掌を翳し、変化後の状態を想像して念じると、体から魔力が出て行くのを感じた。

すると石が白い光に包まれ、いくつもの砕けた小さい石に変化した。


次の瞬間目の前にウインドウが現れ、次のように表示された。


〔経験値を1pt獲得しました〕


「できた。でも、経験値がたったの1ptか。先が思いやられるな」


「掌から魔力が出て行ったけど、消費量はいくつだったんだ?」


ステータスを確認すると、魔力が〔9999/10000〕になってる。消費魔力は1MPだった。


「獲得経験値と魔力消費量が一緒だ。多分、そういう事なんだろう」


《検索ツール》に〔僕の錬金術の魔力消費量と獲得経験値の関係〕と入力し調べると、〔あなたの錬金術の魔力消費量と獲得経験値は同一です〕と、回答が出てきた。

予想は当たっていた。


疑問も解消したところで、続けて錬金術を使う事にした。


「次は《分離》だ。何がいいかな?」


僕は、周りを見渡した。


「あそこに、オレンジがあるな。あれにしよう」


僕は倉庫にあるオレンジを手に取り、実の《分離》と念じると白い光に包まれ皮と実に分かれた。

しかも、皮には破いた跡が無い。


そして同じようにウインドウが現れ、〔経験値を2pt獲得しました〕と表示された。


「おー、これは便利。皮剥きしなくていい」


「次は、《抽出》だ」


僕は皮を剥いたオレンジを手に取り、ジュースの《抽出》と念じると、白い光に包まれ掌で薄皮とジュースに分かれ、経験値2ptを手に入れた。

もちろん、液体のジュースは掌から零れ落ちた。


「うわっ、手がべとべとだ」


「あとは《分解》だけど、何を分解しようか? 農具を分解したら、元に戻せないし止めておいたほうがいいな。父さんに怒られる」


ちなみに、石を半分に《分解》とイメージしてみたら、難なくできた。

『石の分解って、おかしいんじゃないか?』と思ったけど、深く考えない事にした。


ふと足元に転がるオレンジや石ころを見て、魔力を無駄に使うのが勿体無くなった。

レベル上げに効率的で、魔力の無駄使いの無い方法を考えた。


「塩だ! 海に行けば、幾らでも作れる。異世界物のテンプレだ!」


我が家の食事は、いつも薄味だった。

今まではそれが当たり前だと思っていたが、前世の記憶が蘇りその事に気付いてしまった。


「多分塩は値段が高くて、少ししか買えないんだろうな。錬金術で塩を作って売れば、お金にもなるし丁度いいぞ!」


そこで僕は、どうやって海に行くか考えるのであった。

異世界の税金事情が分かりません。

以後、税金について出てきたら、軽く流してください。

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