第三十一話 ニコル君ご家族と家族になろう作戦①
僕達は休暇を取り、『グルジット家の料理人にボロネーゼパスタの作り方を教える』という名目で王都を訪れた。
「わぁ、王都久し振りー!」
「相変わらず人が多いや!」
《亜空間ゲート》施設を出ると、サーシアとレコルは久し振りの王都に高揚していた。
二人は成長し、今はエシャット村の仕事を熱心に頑張っている。
王都に来るのは、《仕入れの旅》に同行していた時以来だった。
「ねー、ねー、ニコルちゃん。少し時間があるし、あそこのお洋服屋さんに寄って良い?!」
高揚しているのは子供達だけでなく、母親のミーリアも一緒だった。
「だーめ。ミーリアは時間を忘れて服を見ちゃうだろ。グルジット邸に遅刻しちゃうよ。服屋は用事を済ませてからにしよう」
「えー、ちょっと見るだけだよー!」
「だーめ!」
「ねー、良いでしょう。新作のインスピレーションが湧くかもしれないじゃなーい!」
「ママ、わがままー!」
「なっ! エッ、エミリア。ママは、『わがまま』じゃないわよ!」
「レコルお兄ちゃんみたいになってるー!」
「レコル?」
『チラッ』
ミーリアは、レコルの顔を窺った。
「何だよ!」
「何でもないわ。あっ、そうだニコルちゃん。お洋服屋さんは帰りにするわ」
「あっ、うん」
ミーリアの突然の心変わりに、僕は戸惑った。
「ママのわがまま治って良かったねー!」
「ニャー!」
「ヒヒーン!」
「モキュッ!」
エミリアの無邪気な言葉に、シロン、シャルロッテ、ポムが同調した。
「えーん、エミリアー。だからママは、『わがまま』じゃないってばー!」
するとミーリアが、涙目になりへこんでしまった。
どうやら、『わがまま』というレッテルを貼られるのが嫌だった様だ。
「分かってる。ミーリアは決してわがままじゃないから、そんなに落ち込まなくて良いよ!」
そう言いながら、ミーリアの頭を撫でた。
「ニコルちゃん、ありがとう!」
ミーリアは指で涙を拭い、笑ってみせた。
『チラッ』
そしてふと、視線をレコルにやった。
「何だよ!」
「まぁ、あれだ。気にするな!」
不服そうにしているレコルを不憫に思い、軽く元気づけた。
「ふんっ!」
だが、効果はなかった。
◇
僕達は《亜空間ゲート》施設の直ぐ横の門を通り、改めて貴族街に入った。
グルジット伯爵家の御用商人の通行証を見せると、家族連れだったが問題なく通る事ができた。
どうやらグルジット家から、連絡がいっていた様だ。
煌びやかな街並みを眺めながら徒歩でグルジット邸に向かうと、三十分程で到着した。
門番に案内されシャルロッテを厩舎へ預け、屋敷の前にやってきた。
そこには老執事が待ち受けており、挨拶を交わすと重厚な扉を開けてくれた。
「「「「「「「「「「いらっしゃいませっ!!」」」」」」」」」」
僕達が屋敷に踏み入れると、メイドや男性の使用人、料理人達がずらりと並び、頭を下げ出迎えてくれた。
「「「「「えっ、えっ?!」」」」」
「何これ、すげー!」
「これ、サー達のお出迎えなの?」
「人、いっぱーい!」
「二コルちゃん?」
「・・・・・・!」
そんな慣れない歓迎に、僕達家族は挙動不審になってしまった。
ちなみに、シロンとポムは静かだ。
「皆さん、いらっしゃい。お待ちしてたのよ!」
そこに遅れて現れたのは、ソフィア様だった。
「あの、この出迎えは一体何事でしょう?」
「あら、ニコル君のご家族が料理を教えにわざわざ来てくれるのだもの、これくらい歓迎しなきゃ」
「大袈裟過ぎます。私達は平民ですよ」
「まあまあ。それより皆さんにお部屋を用意したの。料理を教わる間、待つ人もいるでしょう。まずは部屋に荷物を置いて、落ち着きましょうか?」
「あっ、はい。お気遣い感謝致します」
そう言葉を交わすと、僕達は早速部屋に案内された。
◇
「ここを使ってね!」
「「「わぁー、すごーい!!」」」
部屋に入ると、ミーリア、サーシア、レコルが声をあげた。
用意されたその部屋は、《高級ホテルのスイートルーム》並みの豪華な部屋だった。
「皆さん、気に入っていただけたかしら? ここがリビングであちらがダイニング、書斎や会議室もあって、寝室も四部屋あるのよ。寝室にはそれぞれ浴室・洗面台・トイレも備わってるわ!」
「ちょっ、ちょっと待ってください。いくら何でも私達には《分不相応》です!!」
「良いのよ。ニコル君には感謝しきれないほど、お世話になってるから!」
「パパ、何お世話したのー?」
「エミリア。パパは行商でグルジット家に商品を売りに来ていただけだよ!」
「あら、私達家族の命を救ってもらった《大恩人》よ!」
「身に覚えはありません」
「おかしいわね。お世話になったのは、《英雄ヤマトさん》の方だったかしら?」
「英雄ヤマトさんって、だーれー?」
エミリアが、触れて欲しくない質問を投げ掛けた。
「ソフィア様、この話しはそろそろこ終わりにしましょう」
僕はソフィア様に近付き、小声で話した。
「この部屋、使ってくれるなら良いわよ」
ソフィア様も小声で返した。
「分かりましたよ。不本意ですが使わせていただきます」
「良かった!」
「ねー、小声で何話してるのー?」
エミリアが二人の間に立ち、見上げながら尋ねた。
「エミリアちゃん。ヤマトさんはニコル君のお友達なの。『今度エミリアちゃんに会わせてあげて』って、お願いしてたのよ!」
「そうなんだー」
「なっ!」
『何を言ってくれてるんだ。約束と違う!』という気持ちで、ソフィア様を見た。
「パパ、お友達のヤマトさんに会わせてくれるのー?」
「あっ、うん、そうだね。そのうちね」
「やったー! パパのお友達ー!」
「ふふふっ。エミリアちゃん、大きくなったわね!」
「えっ!」
そこに突然現れたのは、王城にいる筈の《ユミナ》だった。




