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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第十章 エステリア王国騒動編(仮)
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第二十八話 アルシオン王国王太子殿下、突然の訪問②

その日の夕刻、先触れから招待状を受け取ったギャリング王太子は、正装を纏い王城を訪れていた。


友好国の王族という事もあって、急遽国王へ《謁見》する運びとなった。

今は豪奢な待合室で、謁見の準備が整うのを待っている。


「紅茶のお代わりは如何でしょうか?」


「おう、淹れてくれ!」


「あっ、私もお願いします」


「畏まりました」


執事はティーカップを手に取り、ティーポットから紅茶を注いでいった。



「しかしよ、謁見なんてクソ面倒な事はいいから、早く《俺様の嫁》に会わせろってんだ!」


「殿下。失礼な言動は謹んでください! 執事殿が聞いてますよ!」


『チラッ!』


「構わん。報告したきゃすれば良い!」


「殿下への心象が悪くなります!」


「俺様はアルシオン王国の《王太子》であり《英雄》だぞ。取り繕う必要など無いわ!」


「殿下のせいで、エステリア王国との《友好》がおかしくなったらどうするつもりですかっ?!」


「暴言の一つや二つでおかしくなる《友好》など、必要無いわ!」


「殿下っ!」


「えーい、お前はいちいち煩い。茶でも飲んどけっ!」


ギャリング王太子はカップを手に取り、お付きの者の口へ押し付けた。



「あちっ、あちゃっ、あちちちちっ!」


「うわーはっはっはっはっ!」


「何をするんですかっ! 私は猫舌なんですよっ!」


「知っておるわ。これで少しは静かになろう!」


「なりませんっ! 殿下はですね、もっと王太子として」


『ツカ、ツカ、ツカ!』


「ご歓談中失礼します。謁見の準備が整いましたのでご案内致します」


「おお、そうか。丁度良い。フィリップ、ほれ行くぞ!」


ギャリング王太子は立ち上がり、逃げる様に扉へ向かった。


「続きは後ほどお聞かせますからね。でもこれだけは今言っておきます。くれぐれも、問題は起こさないでくださいねっ!」


「ぬはははっ!」


フィリップは一抹の不安を抱えたまま、後をついて行くのでった。



謁見の間の玉座では、若き国王ドナルド・エステリアが待ち構えていた。


その右後ろには、曾祖父であり教育係のエドワード・ノーステリアが控えている。

そして左横には、エステリア王国宰相が立っていた。


また中央に敷かれた赤い絨毯の両脇には、王城に勤務する貴族達が整列している。



「アルシオン王国王太子殿下の御入場ーーー!!!」


兵士の号令と共に扉が開かれ、ギャリング王太子が姿を表した。


「でっ、でかい!」


「何という威圧感!」


「まるで猛獣・・・・・・!」


ギャリング王太子を見たエステリア王国の貴族達は、その風貌に圧倒された。


身の丈は二メートル三十八センチ、着ている服の上からも筋骨隆々なのが見てとれる。

鋭い眼光に、長いワイルドな赤髪はオールバックにしている。


『ギンッ!』


「あっ!」


『ギンッ!』


「いっ!」


『ギンッ!』


「うっ!」


貴族達はギャリング王太子に鋭い眼光を向けられ、声を漏らし慌てて視線を逸らした。



「情けねー。この国の貴族共は、人と眼も合わす事ができんのか?!」


「殿下、余計な事はしないでください。早く前に進んで!」


「分かっておる」


お付きのフィリップに急かされ、ギャリング王太子はゆっくりと歩を進めた。


「おらんか?」


ギャリング王太子は、まだ見ぬユミナの姿を探した。

しかしこの場には、女性の姿はなかった。


「メインディッシュは遅れて登場という訳か?」


そう呟き、玉座の前まで進み立ち止まった。

続くフィリップも立ち止まり、即座に片膝をついた。



「でっ、殿下、何してるんです。早く片膝をついてください!」


フィリップは、仁王立ちするギャリング王太子を促した。

王太子とはいえ、他国の国王へ謁見する際は、片膝をつき頭を下げるのが礼儀である。


「・・・・・・!」


しかし微動だにせず、その眼光は玉座のドナルド国王に向けられた。


『随分と子供ではないか』


そして、そんな感想を抱いていた。


「お立ちのままで結構!」


そう言い放ったのは、謁見の儀を取り仕切る宰相である。


「ありがとよ」


「殿下ーっ!」


「ほら、お前も立て」


フィリップは不服そうに立ち上がる。



「ギャリング王太子殿下。私はエステリア王国宰相のロバート・スチュワートです。遠いところ、良くお出でなさった」


「あんたがこの国の宰相か。そんで、そっちのお子様が国王か?」


「殿下、言葉使いっ!」


フィリップが、小声で注意する。


「左様。こちらにおわす御方こそ、エステリア王国国王ドナルド・エステリア陛下にあらせられる」


宰相は言葉使いを気にする様子もなく、ドナルド国王を紹介する。


「若いとは聞いていたが思った以上だ。この国、大丈夫か?」


「心配ご無用。陛下は将来《賢王》となられる器の持ち主です」


「ほー、賢王ねー。俺様には後ろにいる爺さんの方がそう見える」


『ギンッ!』


ギャリング王太子は、エドワードに鋭い眼光を向けた。

しかしエドワードは、それに何の反応も示さなかった。



「エドワード様は陛下の曾祖父で、前ノーステリア大公爵でいらっしゃいます。今は陛下の教育係をなさってます」


「エドワード・ノーステリアの噂は聞いている。武や魔法に優れ、自領だけでなく国の発展に多大な影響を与えたと。そうかあんただったか!」


「お初に御目にかかる。エドワード・ノーステリアじゃ」


「あんたとは一度剣を交えてみたかったが、その年じゃ無理はさせられんな!」


「お気遣い感謝する」


『チラッ!』


エドワードは礼を言った後、視線で宰相に合図を送った。



「では、陛下から御言葉をお願い致します」


「うむ。ギャリング殿、余がエステリア王国国王ドナルド・エステリアである。これからも友好国として長く良き付き合いを願いたい」


「そうだな。《友好の証》しとして、俺様の《娘》を陛下にやろうではないか。その代り、《ユミナ殿下》を俺様の側室に貰い受けるっ!!」


「「「「「「「「「「何だとーーーーーーっ!!!!!」」」」」」」」」」


ギャリング王太子の申し出に、場内から驚きの声が上がった。

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