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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第十章 エステリア王国騒動編(仮)
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第二十七話 アルシオン王国王太子殿下、突然の訪問①

王国政府の重鎮達に、アルシオン王国王太子訪問の一報が入った。


「アルシオン王国の王太子殿下が、ユミナ殿下に会いに来ただと!」


「会ってどうするというのだ?!」


「まっ、まさか我々が今揉めた原因と同じでは?」


「あり得る。ユミナ殿下の美しさは、隣国の王侯貴族にも知れ渡っている!」


「『英雄色を好む』と言うが、王太子殿下は正にそれを地で行く御方。アルシオン王国一の武人にして、多くの美女を王宮に囲っている。ついにユミナ殿下にまで手を伸ばしてきたか?!」


「フリーデン公爵の謀略を嗅ぎ付け、好機(・・)と見てこのタイミングで来たとい訳か?!」


「いや、諜報員から情報が渡ったとしても、此処へ王太子殿下が来るにはあまりにも早過ぎる!」


「訪問は偶然?」


「だろうな」


「まったくこんな立て込んでる時に!」


「不躾な訪問ではあるが、アルシオン王国は《唯一の友好国》、追い返す訳にもいかぬか」


「早急に晩餐と寝所の用意をせねばならぬな」


「「「「「うむ」」」」」


「ところでユミナ殿下は、今何処にいらっしゃるのだ?」


「この時間はたしか、ドナルド陛下とバロン殿下の《剣術指導》に《回復役》として付き添われてる筈です」


「訓練場か。所在は分かったとして、問題はユミナ殿下にどの様にお伝えするかだが」


「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・!」」」」」」」」」」


一同思考するが、妙案が浮かばず会議室は静まり返った。



「私が伝えよう」


重鎮達の視線は、声の主に向けられた。


「ノーステリア大公爵、お任せして宜しいのですか?」


「ああ。皆は、王太子殿下を迎える準備を頼む」


「分かりました!」


「君、使者から王太子殿下がユミナ殿下にお会いする目的は聞いているか?」


ノーステリア大公爵は、報告に来た兵士に尋ねた。


「いいえ、使者殿もその辺は伺ってないそうです」


「そうか。まあ、予想通りの目的であろうな」


そう言葉を残し、ノーステリア大公爵は退室した。



『カキーン、カキーン、カキーン、カキーン・・・・・・・・・・!』


「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」


「どうしたバロン殿下、もうへばったか?!」


「まだまだー!」


『カキーン、カキーン、カキーン、カキーン・・・・・・・・・・!』


「バロン兄上、凄いな。私も負けてられない。ユミナさん、治療ありがとうございました!」


若き国王ドナルド・エステリアは、剣の訓練で怪我を負いユミナに治療をして貰っていた。



「怪我をしたらまた直してさしあげますから、頑張ってくださいね!」


「はいっ!」


『タッ、タッ、タッ、タッ、タッ!』


「バロン兄上、お待たせしましたっ!」


ドナルドはバロンを『バロン兄上』と呼んでいるが、実際は従兄弟同士である。


「ドナルド、まだ休んでて良いんだぞ!」


「いいえ。バロン兄上に負けたくないですから!」


「そうか。それじゃ、グレン爺さんからどっちが先に一本取るか競争だ!」


「はいっ!」


ドナルドとバロンは、剣豪グレン・ラングレイ元伯爵に剣を構えた。



「二人共、頑張っておりますな?」


「アルフォンスおじ様」


ユミナの下に、会議を抜け出したノーステリア大公爵が訪れた。


「まだ成人も迎えてないというのに、ドナルドには《王国の統治》というとんだ重責を背負わせてしまった。しかし父上やグレン殿マイク殿達のお陰で、不満も漏らさず真っ直ぐ期待に添えようと努力している」


「バロンにも良い影響を与えてくれてます」


「それはドナルドも同じこと。二人はライバルであり、本当の兄弟の様だ」


「そうですね」


「・・・・・・・・・・・!」


ノーステリア大公爵は、眉間に皺を寄せ沈黙した。


『おじ様、話しづらそうね』


ユミナは《未来視》スキルでこの後何を告げられるか知っており、心の中で呟いた。



「おじ様、どうかなさいました?」


「ユミナちゃん。いいや、ユミナ殿下」


「改まってどうしたのですか?」


「王国政府代表として、ユミナ殿下に伝えなくてはならない事がございます」


「重要な案件の様ですね?」


「はい。実はアルシオン王国の王太子殿下が突如この王都に訪問され、先触れを寄越し『ユミナ殿下にお会いしたい』と申しております」


「私に? どの様な御用件かしら?」


「先触れは詳細は聞いてない様です。ユミナ殿下にとって、良くない用件やもしれません。しかし相手は友好国の《次期国王》。無下に断る訳にもいかず、ユミナ殿下には一度お会いしていただきたいと存じます」


「・・・・・・お断りしたいのはやまやまですが、致し方ありませんね」


「申し訳御座いません」


ノーステリア大公爵は、深々とユミナに頭を下げた。



「ぬはははっ、実に旨い酒だーーー! それに肉も旨いっ!!」


「ギャリング殿下。これより王宮へ伺おうというのに、お酒はひかえられたほうが宜しいですよっ!」


「馬鹿を言うなっ! 酒抜きで飯が食えるかっ! それにこれ位で俺様は酔わんわっ!」


「しかし!」


「えーい、煩いっ! お前も飲めっ!」


「うぐっ、ゴク、ゴク、ゴク、ゴク!」


お付きの者は巨大な手で頭を押さえられ、無理矢理口に《ビール》を流し込まれた。


「どうだ、旨いだろ?!」


「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ、何するんですかっ!」


「この酒が旨いかどうか聞いてる?!」


「旨いですよ。我が国の自慢の《エール》より、全然旨いですよっ!」


「そうか。ではもっと飲め。遠慮するなっ!」


そう言うと、再びビールを無理矢理飲ませた。


「うぐっ、ゴク、ゴク、ゴク、ゴク!」


そしてこの横暴な振る舞いの男こそ、アルシオン王国の《ギャリング王太子殿下》であった。

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