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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第二章 王都行商編
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第二十七話 ダンジョン探索者試験

翌日の朝、僕は《ダンジョン探索者試験》を受ける為、エーテルの街の通称《ダン防》に来ていた。


駈け出しの《ダンジョン探索者》に見えるよう、お手製の猪の皮鎧と鉄の片手剣を身に付けた。


「実技試験か、緊張する」


自信はあったが、試験そもそもが緊張するのだ。

回りを見渡すと、同じ歳くらいのパーティーが何組みも試験を待っているようだった。

すると、試験を待っているらしき少年が話し掛けてきた。


「よう、俺はカインってんだ。お前、ソロか? 一人でダンジョン入ろうなんて危険だぞ。パーティーを組んだほうがいい」


「ええ、受付でも言われました。試験に落ちたら考えます。それにもし試験に受かっても、一人で深く潜るつもりはありませんからね(ウソ)。浅いところで経験を積みながら、小銭を稼ぎますよ」


「そうか、それならいいんだ。命あってのものだねだ。無理すんなよ」


「はい。そういえば、名前まだ言ってませんでしたね。僕は、ニコルと言います」


「ニコルか。よろしくな」


そこで、カインさんの仲間が呼びに来た。


「じゃあ、俺らの試験の順番が来たみたいだから行くわ」


「はい、頑張ってください」


なんかいい人っぽいな。あの人なら受かりそうだ。



一時間程待ち、僕の名前が呼ばれた。


試験官は、身長が百八十五センチはある細マッチョなイケ面男性だった。

手には、刃の潰してある片手剣を持っている。


僕の自信は揺らいだ。

試験官から醸し出されるのは、圧倒的強者の雰囲気だった。

熊や狼との戦闘経験で少しは自信があったが、目の前の人物はそれらより遥かに強く感じる。

自己流レベル10の《剣術》だけじゃ、敵わなそうだ。


「試験だから倒す事が目的じゃないはず。実力を見る為のものだ。精一杯頑張ろう」


そう小声で呟き、自分に言い聞かせる。


「おう、坊主。俺は試験官のアレンだ。Aクラスのダンジョン探索者だが、持ち回りで試験官もやっている。坊主は片手剣を使うらしいな」


「はい」


「俺も同じ獲物で相手をする。剣の刃は潰してあるから安心しろ。お前もそこにある剣から選んでくれ。そしたら試験を始める」


「分かりました」


僕は扱い易そうな剣を持ち、具合を確かめ試験官の前に立ち挨拶をする。


「ニコルです。よろしくお願いします」


「おう、それじゃー始めよう。構えてくれ」


僕が剣を構えると、試験官は打ち込んでくるように言った。


「よし、お前から掛かって来い」


「はい!」


僕は最初ゆっくりと近付き、急加速した。そして剣を勢い良く突き出した。

試験官は一瞬あせったような表情をし、剣で僕の突きを払う。

僕は払われた勢いを殺さず、そのまま右に一回転し横薙ぎする。

しかし、それも寸前で止められた。


僕は一度下がって間合いを取り、すぐに前に出て右に左にフェイントを掛け試験官の右胴を薙ぎにいった。

しかし今度は、試験官は剣の届かない範囲に下がって対峙した。


『動きが読まれているのか? それとも、反射神経でかわされているのか? 攻撃が当たる気がしない。それでも・・・』


一呼吸すると、僕は最速で間合いを詰め連続で剣を振り続けた。

ちなみに《身体強化》スキルも《剣技》の必殺スキルも、今は使っていない。

僕の剣は試験官に全てかわされ、体に掠る事さえなかった。


「坊主すげえ動きだな。剣も重くて鋭いし素人じゃねえな。もう少しで、一本とられるところだった。今度は俺が攻めるから受けてみろ。隙があれば、どんどん打ち込んで来い」


「はい!」


試験官は残像を残し、僕の目の前に来ていた。鍔迫り合いのような形になり、僕は突き飛ばされた。

一瞬、何が起こったのか分からなかった。


「これは《瞬動》スキルだ。いきなりで済まんな。だが命の掛け引きをしている敵は、手加減なんてしてくれないぜ。もう一度行く、受けてみろ」


「はい!」


僕は集中し、今度は受け止めた。そう思った瞬間試験官は後ろにいて、僕の首筋に剣を当てていた。

僕は動く事もできず、試験官の「終わりだな」と、いう声でへたり込んでしまった。


試験官は、予想していた以上に凄く強かった。


『僕はチート能力に、少し自惚れていた。今回はだめだったけど、次頑張ろう』


そんな事を考えていると、試験官が話し掛けてきた。


「ニコル、お前は合格だ」


「えっ、さっき終わりって・・・」


「ああ、あれ。試験終了という意味で、不合格という意味じゃねえ」


「でも、あっさり負けてしまいました」


「俺に少しでも本気を出させたんだぜ。合格に決まってるだろ。あれで不合格なら、一人も合格者はでねえよ。ただダンジョンじゃ、何が起こるかわからねえ。人だって襲ってくるからな。《瞬動》スキルまで使ったのは、油断すると一瞬で死ぬという事を体験させたかっただけだ」


「・・・」


「どうした?」


「合格できて嬉しくて、言葉が出なかったんです」


「そうか。ソロだと囲まれたり強敵が出たとき辛いぞ。深い階層に行くならパーティーを組む事をお勧めする」


「分かりました。今日はありがとうございました」


「全員が試験終了してから、合格者はダンジョンについて一時間程講習を受けてもらう。それが終わったら、入場許可証を金と引き換えに渡す。遅れずに来るように」


「はい。分かりました」


僕はお辞儀をしてから、試験場を後にした。


アレンさんは、まだ全然本気を出して無いだろう。

僕が《身体強化》スキルを使っても、勝てたか分からない。


《危機感知》スキルは働いたけど、アレンさんの《瞬動》スキルに対応できなかった。

世の中には、強い人がいるものだと体感できて少し嬉しい。

そして、僕も《瞬動》スキルを習得しようと誓った。


「こんなんじゃ、《魔王》を相手にするのは無理だな! 勇也さんはアレンさんをパーティーに誘えばよかったのに」


思わずそんな事を呟いてしまった。


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