第二十話 フリーデン公爵対ヤマト②
闘技場で対峙してから、三十分が経過した。
僕は攻撃が通らないと理解しつつ、剣を振り続けた。
『ガインッ!!!』
『ピンッ!!!』
『ガインッ!!!』
『ピンッ!!!』
『ガインッ!!!』
『ピンッ!!!』
「はっ、速い! だが所詮無駄な足掻き。攻撃をかわさずとも、私にダメージは一切無い!」
フリーデン公爵はアーティファクトを身に付け《身体強化》を行ったが、ステータス差と称号の恩恵を受けた僕の動きについてこれないでいた。
剣を交わす事なく、その身に攻撃を受けた。
「《風刃》x5!」
『ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュン!』
『スッ、スッ、スッ、スッ、スッ!』
「《真空斬》!」
『ブオンッ!』
『スッ!』
「《旋風斬》!」
『ブオンッ!』
『スッ!』
それでも機会を伺い、魔法と斬撃を織り交ぜ攻撃を仕掛けてきた。
だがそれも、《危険感知》スキルと圧倒的速さで僕はかわした。
「くっ、何故私の攻撃は当たらんのだ?!」
「実力の差だろ」
「ぐぬぬっ、生意気な口を利きおって。貴様の攻撃も効かぬではないかっ!」
「お前、俺が何の考えも無しに無駄に攻撃を続けてると思ってるのか?」
「違うというのか?」
「お前の《魔力貯蔵》アーティファクト、魔力量が半分になってるぞ。このまま攻撃を受ければ、他のアーティファクトも魔力切れで効力を失うからな」
「そんな馬鹿なっ! このアーティファクトは、百万人分もの魔力を蓄えているのだぞっ!」
「ふっ、俺の剣は《オリハルコン》でできていてな、その威力は剣技と合わさり相当なものだ。お前はその攻撃を何回食らった?」
「そっ、その剣が、あの伝説のオリハルコンだと・・・・・」
フリーデン公爵は『オリハルコン』と聞いて、驚きで言葉を失った。
「さあ、あと半分だ。さっさと終わらせ、お宝を頂く」
「ぐくっ、このままやられてたまるか。魔力消費は激しいが奥の手を出してやる。《魔剣バルムンク》よっ、今こそ真の力を示せっ!!」
そう唱えると、《魔剣バルムンク》は目映い紫色の光を放った。
その光は、フリーデン公爵の身体をも覆った。
「うおおおおおおおおうっ!!」
『シュンッ!』
『ズバッ!』
雄叫びを上げた次の瞬間、姿を消し一瞬で僕の前に現れた。
その速さは、今までの比ではなかった。
僕は咄嗟に、オリハルコンの剣を構えた。
『ブオンッ!!!』
『ガギーーーン!!!』
『ズザザザザザザッ!!!』
僕は振り下ろされた剣の威力に押され、足を引き摺り壁際まで後退させられた。
「更に身体を強化をしたのか?」
「その通り。この《魔剣バルムンク》は持ち主の身体能力・打撃力・防御力・魔法とあらゆるものの能力を引き上げる。これで貴様に引けは取らぬっ!」
『ブオンッ!!!』
『ビュンッ!!!』
『ザクザクザクザクッ!!!』
フリーデン公爵が袈裟斬りに剣を振るうと、刀身から巨大な《風刃》が放たれた。
それは石畳を破壊しながら、此方に迫って来た。
『ブオンッ!』
『ガギーーーン!!!』
その威力は今まで放たれた《風刃》と、比べものにならなかった。
しかし剣の一振りで、それを消滅させてしまった。
「《風の鞭》よ、奴を仕留めよっ!」
『ブオンッ!』
『『『『『ビュンッ!』』』』』
フリーデン公爵が剣を振るうと、今度は五本の《風属性》の鞭が剣から伸び此方を襲った。
『ササッ!』
『『『『『ギュンッ!』』』』』
それらを避けると、僕の動きに合わせ向きを変えた。
厄介な、追尾型の魔法である。
『ビュン、ビュンッ!!』
『ササッ!』
『ズカ、ズカッ!!』
『ビュンッ!!』
『スッ!』
『ズカッ!!』
『ヒュオン、ヒュオンッ!』
『サササッ!』
『ゴシャ、ゴシャッ!!』
五本の鞭は自由自在に動き、突いて凪ぎ払った。
僕は避けたが、立っていた場所の床や壁は粉々に破壊されてしまった。
「これも避けるか。では、これならどうだっ!」
そう叫ぶと風の鞭は分裂し、二十本に増えた。
「《魔法楯》x20」
僕は咄嗟に、《魔法楯》を二十枚周囲に並べた。
『ビュンッ、ビュンッ、ビュンッ、ビュンッ、ビュンッ、ビュンッ・・・・・・・・・・・・・・!!』
『ズカッ、ズカッ、ズカッ、ズカッ、ズカッ、ズカッ・・・・・・・・・・・・・・!!』
「ぬはははっ、思い知ったか。貴様の《防御属性魔法》は無意味だっ!」
通常強度の《魔法楯》では、簡単に貫かれてしまった。
想像以上の破壊力である。
「《転移》」
『フッ!』
僕は一旦、間合いをとる事にした。
◇
「此方も、少し本気を出す必要があるな」
「本気だと?!」
「ああ、少しだけな。行くぞ、《超級竜巻》!」
『ビュオオオオオーーーーーーーーーーッ!!!』
そう唱えると、僕を中心に風が巻き起こった。
しかも超級だけに、超高速超高密度で回転し天を貫いた。
《超級竜巻》はフリーデン公爵の《風の鞭》を飲み込み、掻き消した。
そして石畳を捲り上げ破壊し、周囲へ撒き散らした。
『ドゴーン、ゴシャーン、ズドーン!!!』
「「「「「「「「「「うわーーー、逃げろーーー!!」」」」」」」」」」
観戦していた騎士や兵士達は、堪らず闘技場を逃げ出していった。
「まだだ。まだ私はやれるっ!」
『ダタタッ!』
フリーデン公爵は剣を構え、《超級竜巻》の中へ飛び込んできた。
僕はそれを、剣を構え迎え撃った。




