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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第十章 エステリア王国騒動編(仮)
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第十七話 フリーデン公爵邸、潜入

2023/04/09 一部内容の修正をしました。

フリーデン公爵領の領都とダンジョンの街は隣接しており、翌日の午後には領都の直ぐ近くまで来ていた。


「ご主人、兵士がいっぱいいるニャ!」


視力の良いシロンが不穏な状況を察知し、知らせてくれた。


僕は《身体強化》スキルで視力を強化し、前方を注視した。

すると領都を囲う壁の上や門の回りに、多くの兵士が配備されていた。


「シャルロッテ、停まってくれ」


「ヒヒーン『はい、御主人様』!」


シャルロッテはスピードを落とし、道の端に停車した。



「流石領都だけあって警戒が厳しいな。このまま進むと面倒な事になりそうだ」


「どうするニャ?」


「そうだな・・・・・。二人は《亜空間農場》で待っててくれないか? 単独で忍び込んで様子を見てくるよ」


「分かったニャ」


「ヒヒーン『分かりました』!」


一旦人目につかない場所に移動して、僕達は《亜空間農場》に入った。



僕は茶髪に眼鏡という目立たない風貌に変装し、《転移魔法》で領都に侵入した。

しかし領主邸に行く前に、少し街の様子を窺う事にした。


「貴様、何だそのへっぴり腰はっ!」


「すっ、すみません!」


軍の施設では、徴兵された新兵の訓練が行われていた。


「そんなんでは、我々の新しい国は守れんぞ。気合いを入れろっ!」


「はっ、はいっ!」


「良く見ていろ。剣はこう振るんだっ!」


『ブオンッ!』


「うわっ!」


『ドスッ!』


教官の剣が鼻先に振られ、新兵は驚いて尻餅をついてしまった。


「戦争の準備は進めてる様だが、こんなんじゃ王国が攻めてきたらとてもじゃないが耐えられない。フリーデン公爵は、一体何を考えているんだ?」


街の様子を一通り見終わると、僕はフリーデン公爵邸に向かった。



その頃のフリーデン公爵邸。


「ロキ殿、お願いだ。私に力を貸してくれ!」


「何だ、またダンジョンの《宝箱》のリクエストか?」


『パクッ!』


『ロキ』と呼ばれた白髪の偉丈夫は、言葉を返しながらイチゴのショートケーキを口に運んだ。


「違う。フリーデン公爵領は近々エステリア王国から《独立》する。そうすれば王国との戦争になる可能性が高い。我々の独立を成功させる為に、その絶大な力を貸して欲しいのだ!」


「勝ち目の無い戦を仕掛けるとは、お主は馬鹿だったのだな。我は人間同士の戦に力は貸さんぞ」


「そこを何とか頼んでいる!」


「駄目だ。お主と我との契約は、スイーツと極上の酒の対価に《望みの品》を宝箱に入れるだけだ」


「それはそうだが、今までコツコツ手に入れたアーティファクトだけでは王国を相手にするには心許ないのだ!」


「アーティファクトが足らぬのなら、ダンジョンに取りに行けば良いだろう」


「簡単に言うが、行けば多大な被害が出る。今は大事な戦力を失う訳にいかぬのだ!」


「我の知った事ではない」


『パクッ!』


「それにしても、このイチゴのショートケーキは旨いな!」


この後二人の会話は、平行線を辿った。



僕は地味な茶髪からヤマトの姿に変装を変え、大豪邸の領主邸に忍び込んだ。

そしてフリーデン公爵のいる執務室の前に着くと、聴力を強化し聞き耳を立てた。


「怪しい気配がするな」


「何っ?!」


しかし直ぐに、気付かれてしまった。


「巧妙に気配を消しているが、扉の裏で聞き耳を立てているのはバレてるぞ」


『ガチャッ!』


何もかもを見透かすその声音に、僕は観念し扉を開けた。



「貴様、屋敷の者ではないな。何者だ?!」


「ヤマト」


「ヤマトだと? ・・・・・その黒髪、まさかあのヤマトなのか?!」


「ああ、恐らくそのヤマトで合っている」


「我が《恋敵》(ボソッ)」


「何か言ったか?」


「何でもないっ! それより貴様、国の《英雄》が屋敷に忍び込んで王国の手先に成り下がったか?!」


「王国? 王国と俺とは関係無い。俺はフリーデン公爵領の《独立》騒ぎを聞き、真相を確認しに来たまでだ。それでお前の答弁に正当性が認められれば、取り敢えず口出しはしない」


「真相だと? 貴様に話す謂れはない!」


「だったら容赦無く、これを使わせて貰う」


そう言って僕は、《亜空間収納》から《悪事矯正リング》を取り出した。



「それはミスリル製のリング! もしや《金髪の悪魔》が使うというあれか?!」


この時僕は、素の自分が『金髪の悪魔』と呼ばれている事を知った。


「金髪の悪魔? ああ、奴は俺の友人だ。これも奴から譲り受けた。ちなみにこいつは《悪事矯正リング》という」


「《悪事矯正リング》」


フリーデン公爵は名前を復唱し、《悪事矯正リング》を凝視した。



「ロッ、ロキ殿。助けてくれ!」


「我とこ奴が争えば、この領都は瓦礫の山と化すぞ。その覚悟があって申しておるのか?」


「そんなっ!」


フリーデン公爵はそう叫んで、悲壮な表情を浮かべた。

またこの時僕は、『目の前の偉丈夫は、もしや《魔王》じゃなかろうか?』と疑っていた。

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