第二十五話 ダンジョンの街の孤児院④
厄介事に巻き込まれるのは嫌なので、本当は能力を見せたくない。
でも今回は、仕方ないだろう。
そんな訳で、約束をして貰う。口約束だけだが。
「魔法を使いますので、この事を口外しないで欲しいのです」
「魔法か、分かった。口外しない!」
魔法だけでなく錬金術も使うのだが、まあそこは似たようなものだしいいだろう。
「みんなー、集まってくれー!」
「「「「「はーい!」」」」」
「みんなをきれいにする魔法を使うぞー! 驚かないでくれよー!」
「「「「「わかったー!」」」」」
僕は《清浄》の魔法を、子供達や室内に掛けていった。
「「「「「わーい、きれいになったー!」」」」」
子供達は喜んだが、リンゼさんは違った。
「無詠唱で、これだけの広範囲の魔法だと。ニコル、いったいお主は・・・」
「リンゼさん。内緒ですよ」
「分かっておる」
今度は床に手をついて《修復》の錬金術を掛ける。
すると、壊れた床や壁が修復されていく。
「なっ!」
リンゼさんは驚いている。
僕は続けて、テーブルや椅子にベットに布団、食器や調理器具に錬金術を掛け、あきらかに以前より上等な物に替えていく。
「わー、すごーい」
「おふとん、ふかふかー」
子供達は喜んでいる。
しかし、僕がやった事の価値が分かるリンゼさんとココは驚いている。
「お、お主はいったい」
「もう一度言います。内緒ですよ」
「ああ」
「建物の外はそのままです。近所に知られたくありませんから。あと、これ」
魔法袋を差し出した。
「魔法袋です。時間経過は普通にあります。中に日持ちする野菜・小麦粉・チーズ・ハム・塩・砂糖・胡椒、食器に服に農具に薬に魔道具用の魔石を入れておきました」
「これをくれるのか?」
「はい、あとこれも差し上げます」
僕は《魔道具》の冷蔵庫を取り出した。
「これは冷蔵庫と言います。中の物を冷やす事ができます。中に日持ちの悪い肉と卵と葉野菜を入れてあります。どこに置きますか?」
「あっ、ああ、台所に置いてくれ」
僕は台所に案内され、指定された位置に置いた。
「あっ、そうだ。庭の畑が荒れてるので、僕が耕して種を植えますんで、水をあげてくれませんか?」
そう言いながら、小さめの《魔道具》の如雨露を取り出す。
「これも、魔道具ですから。これなら、子供でも大丈夫でしょ。昨日置いていったポットや鍋も差し上げますんでどうぞ使ってください」
僕がそう言うと、リンゼさんの顔がだんだんくしゃくしゃになっていく。
「うっうっうっ、うわーーーーー、ありがどーーーーー!」
あれっ、泣き出した。
「リンゼさん。泣かないでください。子供達が見てますよ」
「じいじ、だいじょぶ?」
「ああ、大丈夫じゃ。わしは嬉しくて泣いてるんじゃ」
「うれちーの?」
「ああ、嬉しいぞ」
「僕、畑に行ってきますんで」
「ああ、頼む」
泣き出したリンゼさんの相手が嫌で、外に逃げてしまった。
その後は錬金術で畑の雑草を枯らし、特別な肥料を撒いてから錬金術で上質な土に作り変えた。
「土は、こんなもんだろう。今度は種を撒くんだが、何にしようか?」
僕は品種改良した野菜の種を八種類選び、畑に蒔いた。
これらは成長が早く、冬以外の季節なら大抵育つ。
そして種類ごとに、子供が跨げるくらいの仕切りも作った。
「野菜の名前を書いた看板を立てたし、これで大丈夫だろう」
僕はリンゼさんの様子を見に行く。もういい加減、泣き止んでるだろう。
「リンゼさん。畑のほうは終わりましたよ」
「なにっ、もう終わったのか? いやいや、もう驚くのはやめよう。全て受け入れるぞ」
「成長が早い特別な種を蒔いたから、現金をなるべく使わなくて済むはずですよ。これ、その種です。今度はみんなで蒔いてください」
僕は八種類の種が入った袋を、リンゼさんに渡す。
「おお、何から何までありがとう」
「とりあえず、僕からの支援はこんなところです。それで、聞きたい事がいくつかあるんですがいいですか?」
「なんじゃ、何でも聞いてくれ」
僕は疑問に思っている事を聞いてみた。
一週間、駆け足で投稿を続けましたが、明日からペースを落とします。
一日の投稿回数は、明言致しません。




