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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第十章 エステリア王国騒動編(仮)
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第三話 アレンさんの領地②

《亜空間ゲート》をレンタルする事が決まり、その設置場所を探す事になった。

アレンさんとエミリを屋敷に送り届ける都合もあり、付き合う事にした。


「此処、広いわね。歩いて探すの?」


「十キロ四方だ。大した事無いだろ」


「ダーリンは、体力が有り余ってるからでしょ!」


「ニコルに頼んで、先に帰るか?」


「嫌よ。馬を用意しましょう!」


「我が儘だな。ニコル、一旦屋敷に戻ってくれ」


「しょうがないですねー。此処には転生者しかいないし、今回はこれを出しますか」


そう言って、《亜空間収納》からある物を取り出した。



「ニコル君、凄ーい!」


「これ《オフロード車》じゃねーか。この世界じゃ機械の乗り物なんて、農機具しか見た事ねーぞ!」


「ええ、公にはしてませんからね」


「これって、魔力で動くの?!」


「そうだよ。ガソリンや電気は、まだこの世界じゃ知られてないからね」


「売ってよ!」


「そうだ、売ってくれ!」


「またですか?」


「便利なんだから、世に広めるべきよ!」


「《亜空間ゲート》に比べたら、大した事無いだろ?」


「二人の言い分は分かります。けど今は子供達の成長を見届ける為、これ以上仕事を増やしたくないんです!」


「ニコルの気持ちは分かった。だが一台だけ、一台だけ何とかならんか?」


「私達とニコル君の仲じゃない!」


「はぁー、またかー」


この後暫く、二人の交渉が行われた。



結局オフロード車は、購入先を明かさない条件で《三千八百万マネー》で売る事になった。

最初『土地で支払う』と言われたが、『商品は現金でしか売らない』と言って断った。


「ヒャッハー! こりゃすげーぜっ!」


アレンさんは荒れた大地を颯爽と駆り、運転を楽しんだ。

その姿は、まるでオモチャを手に入れた子供の様である。



十分後。


「もう充分でしょ。私にも運転させてっ!」


「まだだ。もうちょい待ってろっ!」


「ずるーい。代わってよー!」


「おい、危ない。体を揺するなっ!」


「ねーねー、代わってってばー!」


アレンさんとエミリは、運転席をめぐり攻防を始めた。

僕はその様子を、後部座席で黙って眺めていた。



『キキキーーーッ!!』


『ズザザザーーーーーッ!!』


「「うわあっ!」」


『『バスッ!』』


「あははっ、スリルがあって楽しかったー!」


「急に止まるなー! それにスピード出し過ぎだー!」


「死ぬかと思った!」


「あなた達()なんだから、これくらいの事で文句言わないの!」


暫くして僕達は、壁内の中心部に到着した。

途中運転を代わったエミリは、運転が荒くスピード狂だった。


さっきの急停止も、シートベルトをしていたお陰で飛ばされずにすんだ。



「お前、その内事故を起こすぞっ!」


「アレンさん、エミリに運転させない方が良いですよっ!」


「二人共、酷ーい!」


「酷いのは、お前の運転だっ!」


「初めてなんだから、しょうがないじゃなーい!」


「しょうがないにも程がある。お前は車の運転に向いてないっ!」


アレンさんは、少しキレ気味に言った。



「ダーリンのバカーーーッ!」


「うっ! だが人を轢いたら不味いだろ?」


エミリの本気の怒りに、アレンさんはたじろぎながら諭した。


「だったら、手取り足取り教えてよ。私達、夫婦でしょ?!」


「そっ、そうだな」


アレンさんから、さっきまでの勢いが失われた。


「それじゃー、運転させてくれる?」


「ああ。俺の指導に従うならな」


「やったー! ありがとう、ダーリン!」


『チュッ!』


「うおっ!」


エミリは礼を言って、アレンさんの頬にキスをした。

その時のアレンさんの顔は、締りを失っていた。


アレンさんは《亭主関白》かと思っていたが、この様子だとどうやら違っていた。



一段落ついたところで、車を降り周辺の調査を行った。


「ニコル。取り敢えずこの辺に《亜空間ゲート》用の建物を建ててくれ」


「僕が建てるんですか? それって建設費は頂けるんですか?」


「何を言っている。お前の所有物を置くんだ。当然お前持ちだ」


「そんな事、言ってませんでしたよね。僕の方は《亜空間ゲート》を提供するだけじゃなかったんですか?」


「ケチ臭い事言うなよ。お前にしたら容易い事だろ」


「こういう事はキッチリさせないと、あれもこれもとなるんです。この話し、無かった事にしても良いんですよっ!」


「わっ、分かった。代金は土地で払う。お前が言う商品じゃ無く、建築作業だから良いだろ?」


「また土地ですか?」


「これから開拓に現金は必要になる。なるべく出費は避けたい」


「だったら、車なんて買わなきゃ良いのに」


「あれは男のロマンだ。高い金を払ってでも手に入れる価値がある!」


「そうですか。それでは土地で手を打ちます」


この後《亜空間ゲート》用の建物を建て、盗難防止措置を施し設置した。



作業が終わると、一旦アレンさんの屋敷に戻った。


「もう片方は、何処に設置します?」


「ラングレイ伯爵邸にしようと考えている」


「この屋敷じゃないんですか?」


「うちの庭はそれ程広くはない。それに人が集まり騒がしくなるのも好ましくない。あそこは土地も余ってるし、管理を頼める者も大勢いる」


「他人任せなんですね。上手くいくんですか?」


「領地の収益も見込めるし、魔物狩りにも手軽に行ける。きっと兄貴も協力するわ!」


「という訳だ。ニコル、良いか?」


「別に良いですけど、交渉は二人でしてくださいよ。僕は他所の場所で待ってますから」


「ニコル君、兄貴に会うのが嫌なんだ?」


「あの人、僕に剣の勝負を挑んでくるだろ。断るの面倒なんだよ」


嘗て行商でラングレイ伯爵領を訪れていた頃、エミリの長兄グレッグに会っていた。

父親のグレンに良く似て、《剣術馬鹿》である。



「その気持ち、分からんでもない。グレッグの奴、俺にも挑んでくる」


「アレンさんにもですか?」


「ああ。エミリと結婚してから、度々な」


「兄貴、剣の腕が一番じゃないと気がすまないのよ。どうしたって、二人に敵う筈無いのに」


「まあそうだね」


「それじゃ、ちょっくら話しをつけてくる。明日の朝、また来てくれ」


「はい。でも僕が関わってる事は、内緒にしてくださいね」


「ああ、分かった」


こうして僕は、アレンさんの屋敷をお暇した。

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