第五十九話 家族揃って魔物狩り③
レコルはウルフとの戦闘に、手こずっていた。
「ガウッ!」
「ちっ!」
「ガウッ!」
「くっ!」
ウルフは一定の距離を取り、背後に隙を見せた時しか襲ってこなかった。
そこで動きを止めてしまうと、次々と追撃がやってきた。
「くそっ、一人だと戦い辛い!」
「モキュッ!」
レコルが愚痴をこぼすと、そこにポムが現れた。
「何だポム。手伝ってくれるのか?」
「モキュッ!」
ポムは触覚を腕の様に伸ばし、返事をした。
「それなら、背後の守りを頼む!」
「モキュッ!」
強い味方を得て、レコルは攻撃に転じた。
◇
レコルとの戦闘に溢れたウルフ達は、サーシアを標的にした。
「良いわ。来なさい」
警戒しながら近付くウルフを、サーシアはギリギリの距離まで引き付けた。
「「「「「「「「「ガルルッ!」」」」」」」」」
「*****、*******、*****、*******、*******、風刃連射」
『シュババババッ・・・・・!』
「「「「「キャイーン!」」」」」
「あっ!」
「「「ガウガウガウッ!」」」
サーシアの魔法は、全てのウルフを仕留めきれなかった。
『バキッ!』
「きゃーっ!」
サーシアは辛うじてウルフの突進を杖で受け止めたが、バランスを崩し突き飛ばされてしまった。
『タタタッ!』
「ニャー!」
『ビリビリビリーーーッ!』
サーシアのピンチにシロンが駆け付け、《電撃》を放った。
「「「キャイン、キャイーン!」」」
ウルフは感電し、その場で倒れ動きを止めた。
「えっ、シロンが助けてくれたの?」
「ニャー!」
「でもこの魔法って、先代シロンの・・・・・。本当に生まれ変わりなの?」
「・・・・・!」
「そうよね。質問しても答えられないわよね」
「ニャー!」
「あっ、そうだ。レコルは?!」
「モキュッ!」
『『『プスッ!』』』
「「「キャイーン!」」」
視線を向けると、レコルの戦いにポムが参戦していた。
「向こうは大丈夫そうね。こっちも止めを刺さないと」
サーシアは腰からナイフを抜き、痺れて動けなくなったウルフを見下ろした。
「「「クウーン!」」」
するとウルフ達は、上目遣いで命乞いをする様に声を上げた。
「・・・・・可哀想」
サーシアはそう呟き、止めを刺す事に躊躇してしまった。
「ニャー!」
『ビリビリッ!』
『『『ザシュッ!』』』
「「「キャイーン!」」」
サーシアの様子に気付き、シロンが《雷刃》を手に纏い止めを刺した。
「シロン!」
僕はその様子を、後ろから見ていた。
「サーシア」
「パパ!」
「自分に襲い掛かってきた魔物に、同情か?」
「うん」
サーシアは、俯きながら答えた。
「中途半端な気持ちでいると、自分だけでなく仲間を危険に晒すぞ。《非情》になれないなら、魔物狩りは止めた方が良い」
「えっ! サー、止めないよっ!」
サーシアは、慌てた様子で否定した。
「今度同じ状況になっても、躊躇しないか?」
「うん。今度は躊躇しない!」
僕が本気なのを感じ取り、サーシアは真剣な眼で訴えた。
「・・・・・分かった。今の言葉、肝に命じておけよ!」
「うん!」
可哀想だが、命に関わる事なので厳しい態度をとってしまった。
「おねーちゃん、こっちのウルフ全部やっつけたんだ!」
「レコル」
「どーしたの? 元気無いね」
「サー、シロンに助けられちゃった」
サーシアは、止めをさせなかった事は言わなかった。
「僕もポムがいなかったら、どうなったか分かんなかったよ!」
「サー達もっと戦えると思ったのに、違ったね」
「ヒツージより全然少ないから、いけると思ったんだよなー。ウルフの奴、思ってた以上にずる賢かったよー!」
「レコル、怪我は無いの?」
「大丈夫。この防具を着けてれば、素肌を噛まれても全然平気だよ。流石パパ!」
「そう言えばさっき、突き飛ばされても痛く無かった」
怪我をされては困るので、二人には《過剰な防御力》の防具を装備させている。
ただその事は、油断を招くので黙っていた。
「レコル。防具の性能に頼って、無茶をするなよ!」
「うん、反省してる。僕、まだまだ弱いや」
「サーも」
「でもまー、その辺の大人達よりかは強いよ。これから色々経験を積んで、戦い方を学ぶんだな」
「「うん!」」
『ウォーベアとの戦闘と今回の件で、二人は自分に足らないものが何か学べたのではないだろうか?』
そんな事を思いながらウルフを回収し、この後休憩を挟んだ。
◇
「次は、上位種のウォーウルフを倒してやるっ!」
「レコル、何でそうなる。反省したんじゃないのか?」
「だって強い魔物を倒した方が、早く強くなれるんでしょ?」
「それはそうだが、もっと経験を積んで技術を磨いてだな」
「じゃあ今回みたいな時、どうすれば良かったの?」
「相手の戦力が上なら、最初から逃げるべきだった」
「パパ。ウルフの強さ知ってて、行かせたよね?」
「二人に、今の限界を知って欲しかったからな。逃げて来ても、文句は言わなかったさ」
「そんなの最初から言ってよ!」
「まー、そう起こるな。今回の件で、二人共今後の課題が見えたんじゃないか?」
「「うん!」」
「それをクリアしてから、強い魔物に挑もうな」
「分かったよ!」
「サー、頑張る!」
「エミリアもー!」
「あらあら、エミリアはもう少し大きくなってからね」
「やー!」
こうして《慈善活動》の旅を続けながら魔物を狩り、子供達は成長していった。
お読みいただき、ありがとうございます。
《第九章》は、ここまでです。
またストックが溜まるまで、暫くの間投稿を休ませていただきます。




