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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第九章 二コルと家族編
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第五十六話 奴隷商

スラムの引越しの翌日、カルトッフェル男爵が勤めるカプコン街の役場に出向いた。


「行商人のニコルだと。そんな奴、知らんぞ!」


「何でも、スラムの事で話しがあるとか。金髪の凄く素敵な男性です」


「何っ! まさかあいつか?」


『くっ、足のリングは外したい。だが素直に応じる筈は無い。奴は私から大事な収入源を奪った疫病神。会ってこれ以上貶められたらどうする?』と、カルトッフェル男爵は葛藤していた。


「どう致します?」


「今は忙しい。用件だけ聞いておけ!」


「分かりました」


しかし、カルトッフェル男爵に会う事は叶わなかった。



「忙しいのでは、しょうがありませんね。それでは『スラムの人達は引っ越し、土地は更地にした』とお伝えください」


「えっ、それって本当ですか?」


「現地を見ていただければ、分かります」


「そうですか。ではその様に、お伝えします」


「お願いします」


僕は受付の女性に伝言を残し、街役場を去った。



カプコン街の奴隷商。


「何だってんだ。次から次へと! こんなんじゃこの先、商売上がったりだっ!」


「そうですね、旦那様」


「リングを取り付けた男を、どうにかしろ!」


「無理です。手を出したら、我々も同じ目に遭いますよ!」


「くっ!」


《魔素爆発》によって《魔物ハンター》という職業が生まれ、この街に多くの人が集まり賑やかになった。

しかしその結果、孤児や未亡人が増え奴隷商の収益も上がった。


そして《人頭税の増税》は、更に孤児や未亡人を増やし奴隷商を潤わせた。

従来の職業では税を払いきれず、魔物ハンターを《副業》にする者が増えたのだ。


だが何者かの手によって、その好景気は終わろうとしていた。



街役場を出ると、その足で奴隷商に向かった。


成り行きでならず者や悪徳貴族を懲らしめる事になったが、利害関係にある奴隷商とは関わる事はなかった。

どうしたものかと考えると、『放っておいては、何れ《孤児院》に危険が及ぶ』という考えに至った。


「いらっしゃいませ」


「店主に用があるのだが」


「旦那様にですか。どういった御用件でしょう?」


「先日うちの家族を『奴隷商に売る』と言って、襲い掛かって来た輩がいた。返り討ちにしたが、そんな輩と取り引きしてる店主に文句を言いに来た!」


「うちは誰が誰を売りに来ようと何も問いません。商品価値が有るか無いかが全てです。あなたに文句を言われる筋合いは、これっぽっちもありませんね」


「そういう考えが、ならず者を生み増長させる!」


「あんた何者だ? 確かさっき、返り討ちにしたって。まさかあんた・・・・・」


『サー!』


店員の顔が、突如青ざめた。



「どうした?」


「ひえー!」


声を掛けると、悲鳴を上げ店の奥へ逃げて行った。


「もしかして、僕の噂を聞いていたか?」


そう呟きながら、店員の後を追った。



「たっ、たっ、大変です!」


「そんなに慌てて、どうした?」


「奴です!」


「奴とは誰だ?」


「リングの男が、来たんですよっ!」


「何っ!!」


「どうしましょう?!」


「にっ、逃げるぞっ!」


「はいっ!」


『ガチャッ!』


二人は慌てて、部屋を出ようとした。



「ひえー!」


ドアの前で聞き耳を立てていると、ドアを開けた店員と目が合い再び悲鳴を上げた。


「あわわわわわわわわっ!」


「こっ、こいつなのか?」


「はいー!」


「此処は私の店だ。貴様、不法侵入だぞ。直ぐに出て行けっ! 誰か、誰かおらんかっ?!」


『ドタドタドタッ!』


店主が叫ぶと、屈強な大男が現れた。



「どうかしましたか?」


「良いところに来た。そいつを捕まえろっ!」


「へい、分かりました!」


大男は僕を捕まえようと、両腕を伸ばした。


「《睡眠》」


『バタッ!』


大男は僕に触れる事なく、床に倒れた。



「「なっ!」」


「奴隷商が、決して悪いとは言わない。《犯罪奴隷》の受け口にもなるしな。だが『誘拐』と知りながら、売買をする貴様等は許せない!」


「知らん。誘拐なんて知らんぞ!」


「そんな見え透いた嘘、通じると思ってるのか?」


『キッ!』


「「ひいー!」」


店主と店員に、軽めの《威圧》スキルを放った。



「正直に言えよ。知ってたんだろ?!」


「ひいー! しっ、知ってた。だが私は悪くない。誘拐したあいつ等が悪い!」


「知ってたなら、お前等も同罪なんだよ! 今直ぐ誘拐された人達を解放しろ! 序でに増税が理由で借金奴隷になった人もな!」


「いっ、今はこの店にはいない。他の大きな街で売りに出したところだ!」


「本当か?」


「本当だ!」


《検索ツール》で確認すると、確かにこの奴隷商に該当者はいなかった。



「だったら買い戻して、奴隷から解放してやれ!」


「そんなの無理だ。相手は貴族や豪商だぞ。どう交渉しろと言うのだ!」


「自業自得だ。売った倍の金額を払ってでも買い戻せっ!」


『キッ!!』


「「ひぎーーー!!」」


『『バタッ!』』


今度は強めの《威圧》スキルで、二人を失神させた。

そして既にパターン化してしまった《悪事矯正リング》を、三人の右足首に取り付けた。



『ペシペシッ!』


「おい、起きろ!」


店主の頬を、叩いて起こした。


「いたたっ。私を叩くとは、何処のどいつだっ! うぐわぁぁぁっ!」


「目を覚まして、直ぐにこれか。どうだ、リングの効果は?」


「ぐわぁぁぁっ! だずげでぐれー!」


「《殺意》なんて抱いたら、このリングは直ぐに反応するぞ。痛みから逃れたければ、平常心でいる事だ」


「ぐおぉぉぉっ! 外してくれー!」


『ガクッ!』


店主は痛みに耐えきれず、気絶してしまった。


この後店主を起こし、僕の要求を強引に飲ませた。

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