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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第九章 二コルと家族編
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第五十五話 スラムの引っ越し

『恩返しをしたい』と言うイワンを、元廃村の村長に任命した。


その後みんなで村を見て回り、魔物避けを施した壁の事や敷地内から魔素を除去した事を伝えた。


「ところで、聖人様。村の名前は、決まってるんすか?」


「いや、まだだけど」


「それなら、『ニコル村』ってのはどうすか?」


「却下だ!」


「即答っすか? 良い案だと思ったのになー!」


「お前が村長なんだから、『イワン村』にすれば良いだろ!」


「いやいや、駄目っす。この村を作ったのは、聖人様なんすから」


自分の名前を使った村名は、お互い納得いかなかった。



「ねー、パパ。パパの名前を反対から読んで、『ルコニ村』っていうのはどう?」


『ニコッ!』


サーシアが、笑顔を振り撒き提案してきた。


「それ、名案っす!」


「ルコニ村かー。それならまだ良いかー」


こうして村の名前は、『ルコニ村』に決まった。



翌日、ルコニ村から《魔素地帯》の外に通じる道を整備した。

《魔物避け》の付与も、施してある。


そしてそのまた翌日、お昼時を狙ってスラムに出掛けた。


「「聖人様!」」


炊き出しに来ていた孤児院のスタッフが、僕に気付き駆け寄って来た。

スラムの人数が減り、二人で来ている。


「やあ!」


「『やあ!』って、旅立たれたんじゃなかったんですか?」


「やり残した事があってね」


「やり残し? それって、スラムに関係があるんですか?」


「良く分かったな」


「ええ。此方にいらっしゃっいますから」


「ははっ、そうだな」


「俺に、何かお手伝いできる事はありますか?」


「私も、お手伝いします!」


「手伝いは不要だが、君達にも関係がある。取り敢えずスラムのみんなと一緒に、話しを聞いてくれないか?」


「「はい!」」


食事中のスラムの人達の所へ行き、引っ越しの説明をした。



「わしらに、そんな場所を用意してくださったのですか?」


「ああ。ただ元廃村とは言え、領主様の許可を得てない。いつ追い出されるか分からないというリスクは、覚悟してくれ」


「それは今も同じですじゃ。家があってベッドで寝られるなら、喜んで行きますじゃ」


「ぼっ、僕も行きます」


「俺も行く。此処よりマシそうだからな」


此処にいる七人は、全員引っ越す事に賛同した。



「という事で、スラムの引っ越しが決まった。君達には、引き続き炊き出しを頼みたい。これから村に同行してくれないか?」


「「分かりました!」」


「ちなみに、教会からの距離は此処と然程変わらない」


「「はい!」」


スラムを発つ前に、不要な物は撤去し《更地》にした。

これで、開発の邪魔にならない。


準備が済むと、馬車でルコニ村へ向かった。



道を整備したお陰で、直接馬車でルコニ村に辿り着いた。


「ほえー、これが何年も住んどらんかった廃村ですかー?」


「新しい家ばかりだー!」


「スラムなんかより、全然良いな!」


「気に入ってくれたか?」


「勿論ですじゃ!」


「はい!」


「あー」


「だが食事は、今までと変わらないからな。これ以上の生活を望むなら、自分達で何とかして欲しい」


施しを受ける事が、当たり前と思われても困る。

自分の力で、この苦境から脱して貰いたい。



「でも僕、要領が悪くて仕事を直ぐクビになるんです」


「この辺は薬草が採れる。売れば、金になるぞ」


「だけど、村の外には魔物がいるんですよね。怖くて出歩けませんよー」


「魔物と言っても、この辺はスライムしかいないぞ」


「それでも僕、駄目なんですー」


どうにも彼は、臆病な様だ。



「わしは小さい畑でも、やりたいのー」


「畑なら敷地内にあるから、自由に使ってくれ。苗や種や肥料は提供する」


「はい。感謝いたしますじゃ」


「畑仕事かー」


臆病な青年が、呟いた。


「興味があるなら、お主も畑を手伝ってみんか?」


「僕やった事無いけど、教えてくれますか?」


「ああ、教えてやるとも」


青年が、少しやる気を見せた。

これを切っ掛けに、自活できる様になる事を願う。



「そうだ!」


「どうしました?」


「この村の村長を、イワンに任せた。何かあったら、彼の指示に従ってくれ」


「あの片脚だったイワンが、此処におるのですか?」


「ああ。今はうちの子供達と、魔物狩りに行ってる」


「あ奴は既に、自分の力で生きておるんじゃな」


「なんだ爺さん。俺への当て付けか?」


先日『酒をくれ』とねだったオヤジが、突っ掛かった。



「そんなつもりは、無いんじゃが」


「じゃー、何だよ!」


「おいおい、喧嘩は止せ!」


「だって爺さんがよー」


「爺さんの所為にするな。あんたまだ若いんだから働けるだろ。これを期に何かやったらどうだ?」


「やりたくねーよ」


「何でだ?」


「・・・・・!」


オヤジは暗い顔をし、黙り込んだ。



「聖人様。こいつは元々行商人だったんじゃ。盗賊に嫁と子供を殺され、酒に溺れる様になったんじゃ」


「チッ!」


「・・・そうか。そんな事があったのか」


前向きな言葉の一つも掛けてやりたかったが、彼の心情を思うとこれ以上言葉が出なかった。


この後住む家を決め、夜には歓迎会を開いた。

いつもより豪華な料理に、皆笑顔になった。


こうしてスラムの引っ越しは、一段落ついた。

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