第二十四話 ダンジョンの街の孤児院③
僕は王都の借家へ帰り、どうしたものかと考えた。
「十年前の僕の村の方が、まだましだ」
「お金は渡したけど、いずれ無くなるよな。稼ぐ手立てがあったらいいんだけど、子供ばっかりだしなー」
「建物や服や畑なんかを良くしてやりたいけど、派手にやって変な奴に狙われたら嫌だしなー」
僕は彼らに何をしてあげられるか考え、できる限りの物をいろいろと用意した。
それらを、魔法袋に入れて明日渡そうと思う。
魔法袋は《時間経過が通常》だが、魔道具屋で売っている物より高性能だ。
◇
翌日の朝、足りない物を買い足して、昼前に孤児院に向かった。
「あっ、ニコルにーちゃん。じーちゃんすっかりげんきになったよ」
「そうか、それは良かった。コニー、お爺さんに合わせてくれないか?」
「うん、いいよ」
僕の姿を見かけた子供達が、たくさん集まってきた。何かを期待している目だ。
「君らは、朝ご飯を食べたのか?」
「うん、にーちゃんがくれたやつ。クロパンにハムをはさんでたべたよ」
この子らは昔の僕の村と同じで、元々一日三食食べれてないだろう。
昼まで少し時間はあったが、おやつをあげる事にした。
「そうか、もうそろそろお腹空いたろ。おやつをやるよ。みんなを集めてくれないか?」
「わかった。おーい、みんな。ニコルにーちゃんがおやつをくれるってー。ほしーやつはあつまれー」
「「「「「わーい」」」」」
外にいる子供が、わらわらと集まってきた。
建物の中にもまだいるはずなので、彼らを引き連れて中に入る事にした。
「おっ、ニコル来たな」
「はい、こんにちわ。子供達におやつをあげたいんですけど、集まって貰っていいですか?」
「ああ、いいとも。ところで、わしの分もあるのか?」
「ちゃんと、ありますよ。心配しないでください」
リンゼさんは遠慮がちに言ったが、実は食いしん坊なのだろうか?
その後子供達を集めて、串に刺さった《トルネードポテト》を配った。
村にいた頃、大量に作ったやつだ。
いつもは塩コショウ味だけど、今日はトマトケチャップだ。前世で子供に人気があったからね。
こんな事もあるかもしれないと思って、王都で手に入れたトマトで昨日作ったんだ。
「これ、おいもなのー。おいしー」
「おいちーね」
「うおー、うめー」
概ね好評だ。よろこんでもらえて僕も嬉しい。
「あの、ありがとう。とても美味しかったです」
「ココか、どういたしまして」
僕は『ニコッ』として、答える。
ココは心なしか、顔が赤くなった。
「おねえちゃん、かおがあかいよ。だいじょうぶ?」と、言いながらコニーは、ココの顔を覗き込む。
「だ、大丈夫。何でも無いわよ」と、ココはうつむきながらコニーの顔の前に両手を出して言った。
僕はそんなココをそっとして、リンゼさんに提案する。
「僕は今から、みなさんの為にいろいろやりますが、口外しないでもらえますか?」
「えっ?」
リンゼさんは、思わず聞き返してしてきた。




