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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第九章 二コルと家族編
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第五十三話 ポム

2022/06/01 第四十五話の登場人物ダニーを、イワンに変更しました。

レコルとサーシアが向かった先から、三人の青年が逃げて来るのが見えた。

しかも彼等は見知った顔で、スラムを出たばかりのイワン達だった。


そしてその直ぐ後ろには、大きな熊の魔物『ウォーベア』が迫っていた。


『『『ドスッ!』』』


「「「うぐぁぁぁっ!」」」


三人は追い付かれ、その勢いで突き飛ばされてしまった。



「*****、*******、*****、*******、*******、炎槍連射」


サーシアは早口で魔法を詠唱し、炎槍を放った。


『ブオォォォォォッ・・・ ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ!』


ウォーベアが立ち上がったところに、炎槍が見事命中した。

しかし固い毛と皮が邪魔をし、体を貫けなかった。


「うそっ、炎槍が全然刺さらない!」


『ボワァァァッ!』


「ウガー!」


しかし炎槍は炎となって全身に纏わり付き、結果足止めに成功した。

ウォーベアは、必死に炎を振り払った。



「おねーちゃん、今の内に助けるよ!」


「そうだね!」


サーシアとレコルは、倒れているイワン達の下に駆けつけた。


「酷い怪我だ」


「レコルは、熊の相手してて。サーは魔法薬でこの人達治して、逃がすから!」


「うん。でもこいつ強そうだから、早くしてよ!」


「分かった!」


「《身体強化》!」


レコルはスキルを発動し、剣を構えた。

そして丁度その時、ウォーベアに纏わり付く炎が消えた。



「ガオォォォッ!」


次の瞬間、ウォーベアは目の前にいるレコルに襲い掛かった。


『ブオンッ!』


『ガキーーーン!』


「くっ!」


『ズザザザザーーーッ!』


前足の攻撃を剣でまともに受け、レコルはその威力に耐えきれず足を引きずって後退させられた。



「凄い力だ。それに頑丈だし参ったな。倒すのは無理でも、時間を稼がなきゃ!」


『ブオンッ!』


『ギュインッ!』


今度はまともに受けず、前足を受け流した。


「ウガーッ!」


『ブオンッ!』


『ギュインッ!』


『ブオンッ!』


『ガキーーーン!』


『ズザザザザーーーッ!』


「くっ、流しきれない! おねーちゃん、早く逃げて!」


「分かってる。もうちょっと待って!」


イワン達は骨を折る等の怪我をし、全員意識を失ってる。

サーシアは、手間取っていた。



「モキューッ!」


『ピョン、ピョン、ピョン、ピョン、ピョーーーン!』


レコルが苦戦していると判断し、ポムがウォーベアに突進した。


「駄目だ、ポムッ!」


レコルが引き止めたが、ポムは止まらなかった。


『シュピッ!』


『ズサッ!』


次の瞬間ポムの触覚が伸び、ウォーベアの振り上げた前足を貫いた。


「ウガァァァァァッ!」


その痛みで、ウォーベアは雄叫びを上げた。



『シュピッ!』


『ズサッ!』


『シュピッ!』


『ズサッ!』


『シュピッ!』


『ズサッ!』


「ウガガガガガガァァァッ!」


『バターーーン!』


ポムの触覚攻撃にウォーベアは幾度も体を貫かれ、最後に額を貫かれ息絶えた。



「・・・・・!」


レコルはポムの強さに、呆然と立ち尽くした。


「モキュッ!」


「はっ! ポム」


「モキュッ!」


「お前、こんなに強かったんだ?」


レコルはポムが戦うところを、初めて見た。

今までその容姿から、《哀願動物》の様に思っていた。


長年ニコルと過ごし、ポムはいつしか驚異的な強さを手に入れていたのだ。



「レコル、ウォーベアを一人で倒したんだ。凄いじゃない!」


戦闘が終わっている事に気付き、サーシアが声を掛けた。


「僕じゃないよ。ポムが倒したんだ」


「えっ、ポムなの。どうやって?」


「鋭い触覚を伸ばして、何度も突き刺したんだ」


「うそっ、サーの炎槍でも刺さらなかったんだよ!」


「本当だよ」


「そうなんだ。ポム、助けてくれてありがとう!」


「モキュッ!」


「でも、不思議。こんなに《プニプニ》なのに」


サーシアは、ポムを指で突いた。



「イワンさん達、大丈夫なの?」


「うん、怪我は治ったわ。けど、意識が戻らないの。ウォーベアを倒してくれて、助かったわ」


「おねーちゃん。僕、ポムに負けないくらい強くなるよ!」


「サーもだよ。一緒に頑張ろうね」


二人は『強くなった』という思い上がった気持ちを、この戦闘で反省した。



サーシアとレコルは、イワン達が起きるのを待った。

その間、ウォーベアとレッドボアは魔法袋に回収した。


「うっ、ううっ!」


三人の内、イワンが目を覚ました。


「イワンさん、大丈夫?」


「あれっ、サーシアちゃん?! 何で此処にいるんすか?」


イワンの三下口調は、サーシアに対しても健在だった。


「弟と魔物を狩ってたら、叫び声がしたから見に来たの」


「えっ、二人きりで?」


「ポムもいるよ」


「ポム?」


「このベビースライム。私達の家族なんだ」


「モキュッ!」


ポムは触覚を腕の様に伸ばし、イワンに挨拶した。



「この子が、ウォーベアを倒したんだよ」


「えっ、ウソっすよね?! このちっこいのが、倒せる筈ないっす!」


「本当だよ」


「信じられないっす・・・・・」


イワンは、ポムを『ジッ』っと見詰めた。



「あっ、そうだ。俺ウォーベアに突き飛ばされて、死んだと思ったんすけど?!」


「サーが、パパから貰った魔法薬で治したんだ」


「あっ、ありがとうっす! サーシアちゃんは、命の恩人っす!」


「でもレコルとポムが戦ってくれたから、助けられたんだよ」


「えっ、レコル君もウォーベアと戦ったんすか?!」


「まあね。おねーちゃんも魔法で戦ったけど、ポムがいなかったら助けられなかったよ」


「そうだったんすね。皆さんに感謝するっす!」


この後イワンは仲間の二人を起こし、事の成り行きを説明した。

そしてイワン達の案内で、廃村まで帰る事になった。

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