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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第九章 二コルと家族編
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第五十一話 廃村

完成したばかりの孤児院の様子を、シスター達が見に来た。


「わー、凄くきれーい。私、こっちに住みたいなー!」


「私もー!」


「何を言ってるの貴方達。此処は孤児達の家よ!」


「でもでも、こんな広い家。少人数じゃ、寂しくないですかー?」


「それはそうだけど・・・」


シスター達は、新しい大きな家に目移りしていた。



「ニコルさんはー、どう思いますー?」


シスターが僕の腕を掴み、甘えた声音で尋ねる。


「僕は構わないけど、それを決めるのはマザーですよ」


そう。彼女達の後ろにひっそり現れた、マザーが決める事だ。


「ニコルさんからー、頼んでくださいよー!」


「おほんっ!」


「「「えっ!」」」


シスター達は、慌てて振り返った。


「「「マザー!」」」


「却下です。此処には男性スタッフも住むのですよ!」


「「「はーい、すみませーん!」」」


シスター達は素直に謝り、肩を落としていた。



「マザー・テレジア」


「はい」


「この通り孤児院は完成したので、子供達の引っ越しをしても構わないですよ」


「そうですか。素晴らしい孤児院を建てていただき、大変感謝いたします。早速今日にでも、引っ越しをいたしましょう」


「それで明朝なのですが、私達は此処を出発しようと思います」


「えっ! 随分お急ぎですのね?」


『うそっ! ニコルさん、行ってしまうの? テレジア、寂しい!』と、テレジアの心の声。


「他に、用事があるので」


「そうですか。でしたら、引き止めるのもご迷惑ですね」


『イヤイヤッ、いっちゃイヤー!』と、テレジアの心の声。


「三ヶ月程したら、また御布施をしに伺います」


「はい、お待ちしてます」


『ああ、三ヶ月も待てない!』と、テレジアの心の声。


この後孤児達の引っ越しを済ませ、夜は簡単なお別れ会を開いて貰った。



翌朝。


みんなに見送られ、僕達は教会を発った。


「パパ。街道を外れて、何処に行くの?」


「ロイ達がいた《廃村》に行く」


「何で?」


「スラムの人達の引越しを考えてる。あそこなら、この街を治める貴族も文句無いらしい」


《不法占拠》はどちらも変わらないが、廃村の方はカルトッフェル男爵の管轄外だった。



「あのままじゃ、駄目なの?」


「スラムが、街の開発の邪魔になってるのは事実だ」


「だからって、《魔物が出る廃村》に追いやるなんて酷いよ!」


「魔物の事なら、パパも考えてるさ」


「本当?」


「パパを信じられないのか?」


「ううん。パパ、怒ってごめんね」


「良いよ。気にしてない」


サーシアに、あらぬ誤解をさせてしまった。

『事前に説明しておけば良かった』と、後悔する。



「パパ。そこって、スライムしかいないんだよね?」


「そうだな」


「ねー、強い魔物がいる場所に連れてってよー!」


「パパの作業が済んだら、考えてやっても良いぞ」


「本当?! 絶対だよっ!」


レコルは教会の畑仕事を積極的に手伝っていたので、願いを叶えてやる事にした。

孤児院のスタッフの手が空いたので、畑を再開したのだ。



森の手前で馬車を降り、そこから歩いて十五分程で廃村に到着した。


「パパ。本当にスラムの人達、此処に住めるの?」


「まあ、やってみるさ。駄目だったら、諦めるよ」


「何か手伝う?」


「今のところ、大丈夫かな」


「ねえ、おねーちゃん。《魔物狩り》に行こうよっ!」


「うーん。パパが『良い』って言ったら、良いよ」


「パパ、行っても良い?」


「レコル。パパの作業が終わるまで、待てないのか?」


「だって、直ぐには終わんないんでしょ?」


「終わんないな」


「だったら暇だよー!」


「・・・・・しょうがない。遠くに行くなよ!」


「やったー!」


仕方なく了承し、二人の装備を出してやった。


レコルには、玉鋼の短剣とオーガの皮鎧。

サーシアには、樫の木の長杖と純白のローブである。


当然《付与》は、色々としてある。



『ビュン、ビュン!』


「どう、カッコ良い?」


レコルは剣を抜き、振り回した。


「うん、カッコ良いよ」


「おねーちゃんも、決まってるね!」


「そう、ありがとう」


「ポム、二人の面倒を頼む」


「モキュッ!」


魔物との戦闘に慣れた、ポムをお守りに付けた。

二人の実力は知っていたが、やはり親として心配なのである。



「「それじゃ、行ってきまーす!」」


「お昼までには帰れよ!」


「「はーい!」」


二人は意気揚々と、廃村を出て行った。


「エミリアは、ママとお勉強ね」


「うん!」


エミリアはもうすぐ五歳になるので、学校に上がる前の勉強が日課になっていた。

シャルロッテとシロンは、既に自由に遊んでいる。



僕は先ず、廃村を囲う頑丈な《壁》を作った。

高さは五メートルあり、馬車用の門と人用の扉を設けた。


壁には《魔物避け》の魔法を付与し、効力を持続させる為《魔素魔力変換》も付与した。

地面に浸透している魔素を、魔力に変える仕組みだ。


『ゾロゾロ・・・・・!』


するとスライムが、何処からともなく現れた。

早速、《魔物避け》の効果が出たのだ。


「ニャニャー!」


シロンがスライムに、攻撃を仕掛けた。



「ポムのおとうさんとおかあさんを、いじめちゃダメー!」


だがそれを見て、エミリアが大声を上げた。


「ニャ?」


「エミリア、あれはポムのお父さんとお母さんじゃないわ。人には危険なの。シロンはきっと追い払ってくれてるのよ」


「そうなの?」


「でも驚いたわ。シロンがスライムより強いなんて思わなかった!」


「ニャニャー・・・・・・・・・・!」


シロンは全てのスライムを、壁の外に追い出してくれた。

一方僕は、スライムが発生しない様に敷地内の魔素を魔力に変換し吸収していった。



暫くすると、壁の内側から殆どの魔素が無くなった。

これでこの村は、一先ず《安全》になった。


「パパ、なにやってるのー?」


エミリアは、僕のやっている事が気になる様だ。


「この村を綺麗にして、住める様にしてるんだよ」


「そうなんだー」


「エミリアは、勉強終わったのかなー?」


「ママがいいって! パパのおしごとみてていい?」


「良いよ。錬金術を使うから、見ててごらん」


「うん!」


エミリアは、錬金術に興味を持っている。

教会で孤児院を建てている時も、何かにつけて見ていた。


僕の場合途中の過程を省いているので、エミリアのお手本にはならない。

この先、どうやって教えるかが課題だった。

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