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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第九章 二コルと家族編
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第四十六話 スラムの騒動②

僕は男達が去って行くのを、見届けていた。


「ニコルちゃん、大丈夫?」


「ああ、大丈夫。何の問題もない」


「良かった!」


「さて、続きをやるか!」


「続きって?」


「孤児は教会に連れて行く事になったけど、残った人達にも支援をする事にした。その話しが途中だったんだ」


「エシャット村に、連れて行かないの?」


ミーリアと会話をしていると、そこにサーシアが口を挟んだ。



「誰も彼も受け入れたら、村が疲弊してしまう」


「どうして?」


「前にも言ったろ。『孤児を育てるには衣食住や面倒を見る人が必要で、それにはお金が掛かる』って。ましてや大人なら、人頭税も多く支払わないといけない。色々と大変なんだ」


理由はそれだけでなく、素性の分からない人間を受け入れるには抵抗があった。

《閉鎖的》かもしれないが、《村の平穏》を第一に思っての事である。


だがこの事は、本人達を前にして言えない。


「・・・・・!」


サーシアは、黙ってしまった。


「だからこの街で生きていける様に、最低限のサポートはする」


「うん」


サーシアが頷くと、僕はスラムの人達に近付いていった。



「みんな、聞いてくれ!」


視線が、僕に集まった。


「一部の人には話したが、スラムを出たいなら金や物資を支援する。その気のある者は、名乗り出て欲しい!」


「「「「「「「「「「ざわざわざわ・・・・・!」」」」」」」」」」


話しを始めて聞いた人達が、ざわついた。


「わしはもう歳で働く事もできず、《口減らし》で此処に来たんじゃ。後は死ぬのを待つだけじゃ」


「私も同じ。息子夫婦と孫達は、重税で食べるのがやっと。せめて私の食い扶持だけでも減らしたかった」


「俺は酒に溺れて、仕事が手につかなくなった。野垂れ死ぬのが、関の山さ」


「働けないなら、無理に此処を出て行く必要はない。教会のマザーには、此処の支援は頼んだ。食事には以前よりありつけるだろう」


「あんたはどうしてわし等に、そこまでしてくれるんじゃ?」


「お返しする物なんて、何もありませんよ」


「俺達を、騙してないよな?」


僕の行いが不可解だったり、不信がる人がいた。



「僕はただ、《娘の願い》を叶えてやりたいだけだ。何の魂胆も無いから、安心して欲しい」


「お嬢さんが、わし等を?」


「それだけの理由で?」


「それが本当なら、お人好し過ぎるぜ」


僕が理由を言っても、いまいち信じきれていない。


「みんな、お願い。パパを信じて!」


サーシアがそんな空気を読んでか、みんなに語り掛けた。



「なるほど」


「こんな可愛いお嬢さんに頼まれたら、誰でも言う事聞いちゃうわね」


「天使!」


「ははっ!」


サーシアの援護のお陰で、どうにか信じて貰えた。

僕はそれを見て、苦笑いを浮かべた。


その後手を上げた人に詳しく要望を聞き、支援は明日以降行う事になった。

そしてこの日は、孤児を連れて教会に帰った。



教会に到着すると、孤児達はシスター達と面識もあり優しく迎え入れられた。


「それでは、お庭をお借りします」


「ええ、どうぞ。ご自由にお使いください」


孤児院を建設する間、裏庭を借りられる事になった。

『僕が一人で建てる』と言ったら驚かれたが、教会の壊れているところを錬金術で直したら信じて貰えた。


僕達はテントを張り、まずは生活環境を整えた。



「ニコルちゃん。夕食と明日の炊き出しの支度をしちゃうわね」


「頼む。僕は孤児院の建設を、少しでも進めるよ」


「うん。サーシアは、料理を手伝ってね」


「はーい」


「僕、子供達のところに行ってくる」


「それなら、エミリアとシロンも連れて行って」


「良いよ。エミリア、シロン、行くぞ!」


「うん!」


「ニャー!」


僕達は教会に帰ってからも、忙しなくしていた。



翌日お昼に合わせ、家族でスラムに向かった。


孤児院の建設は昨晩の内に地下を完成させ、今朝は一階部分に取り掛かった。

本気になれば一晩で完成させられたが、驚かれてしまうので一週間を目処に考えている。


それでもマザーやシスター達には、驚かれてしまった。


やがてスラムに到着すると、そこは不穏な空気に包まれていた。

武装した男達が、十五人程集まっていたのだ。


しかもスラムの人達が、全員縄で縛られていた。



「やっと来たな!」


「どういうつもりだ?」


「こいつ等が昨日受けた借りを、返させて貰う」


話し掛けてきた大柄な男の横には、昨日の二人がいた。

若干、震えている。


「馬車から降りろ!」


「・・・・・!」


「言う事聞かねーと、こいつらぶっ殺すぞ!」


大柄な男が、叫びながら剣を抜く。


「「「「「「聖人様ぁ」」」」」


僕はその様子を見て、ゆっくりと御者台から降りた。



「馬車の中の家族も降りて来いっ!」


「くっ!」


みんなには馬車で隠れている様に言ったが、バレていた。


『『ダッ!』』


僕が悔しがっているところに、サーシアとレコルが勢い良く馬車を飛び降りた。


「あんた達、みんなを解放しなさい!」


「うひょー、可愛いねー。思った以上だー!」


「お前等全員、倒してやる!」


「威勢が良いなー、坊主。お前も良い値が付きそうだぜ!」


「「「「「「「「「「うへへへっ!」」」」」」」」」」


武装した男達が、いやらしい笑い声を上げる。

だが僕は、それを許さない。



『キッ!!』


「「「「「ひえーーー!!」」」」」


「「「「「うわーーー!!」」」」」


「「「「「ぎゃーーー!!」」」」」


強めの《威圧》スキルを放ち、武装した男達を全員失神させた。

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