第四十五話 スラムの騒動①
2022/06/01 登場人物ダニーを、イワンに変更しました。
僕は大病や大怪我を抱えている人達を、《エリクサー》と《上級エリクサー》を使って治した。
彼等は同時に体力も回復し、元気も取り戻した。
「これでまた、《魔物ハンター》に復帰できるぞ!」
「あんな酷い目に遇ったのに、またやるのか?」
「やられっぱなしじゃ、気がすまねー。強くなって、やり返してやる!」
「俺はもうこりごりだ」
「何だよ、付き合えよ!」
「俺はもっと安全な仕事に就く。それはそうとイワン、装備はどうする気だ?」
「あー、そうだった。先立つ物がねーんだ!」
僕はそんな彼等に、声を掛けた。
「スラムを出るなら、金や物資を援助するぞ」
「「「「「えっ!」」」」」
「聖人様。それは本当っすか?」
イワンと呼ばれた青年が、三下口調で問い掛けてきた。
右脚の欠損を、最初に治した青年である。
『聖人様』を止めろと言っても聞かないので、スルーする事にした。
「ああ。ただし、条件がある」
「何すか?」
「街の教会に、孤児の保護とスラムの炊き出しの依頼をした。その為の資金も提供してある。手の空いてる時、教会の手助けをして欲しい」
「この脚を治して貰ったんだ。そんなのお安いご用ですよ!」
「俺も、やります!」
「私も、お手伝いします!」
彼等は、素直に応じてくれた。
そして今後やりたい事を聞き出し、それに見合った物資や資金を提供する事になった。
「ん?」
だがそんな時、不穏な気配を感じた。
そちらに視線を移すと、廃村でヤマトに変装して追い払った男達が近付くのが分かった。
スラムの人達もそれに気付き、子供達を急いで隠した。
◇
「おい。何だかいつもと、様子が違くねーか?」
「こいつら、小綺麗になってやがる!」
「そう言えば」
「んっ? 確かこいつ、片脚が無かった筈だが」
「こいつも、片腕が無かった筈だ!」
「テメー等、どうやって治した?!」
「「「「「「「「「「・・・・・!」」」」」」」」」」
男が問い質したが、答える者はいなかった。
「シカトすんじゃねー!」
「いてー目に遭わすぞっ!」
更に威圧するが、みんな黙りだ。
「よーし分かった。五体満足になった奴等は、今直ぐ《奴隷商》行きだっ!」
「税金も払えねーんだから、当然だよなっ!」
「お前等に、そんな権利無いだろっ!」
イワンが文句を言った。
「「「「「そうだっ!」」」」」
それに同調する者達もいた。
「俺達は、此処の《ショバ代》を納めてんだっ!」
「テメー等が此処に居られるのも、俺達のお陰なんだよっ!」
「お前等は行き場の無い弱い者を、食い物にしてるだけだろっ! この下衆野郎っ!」
「「テメー!」」
男達は激怒し、イワンに襲い掛かろうとした。
「ダメー!」
するとサーシアが、叫び声を上げた。
「「ん?」」
サーシアの可愛い声に反応し、男達は襲うのを止め振り返った。
「うひょー、可愛い嬢ちゃんがいるじゃねーか!」
「こりゃー、上玉だ。高く売れるぜー!」
男達はうって変わって、喜びの声を上げた。
そしてサーシアに、向かって行った。
「おねーちゃんに、近付くなっ!」
近付く男達の前に、レコルが立ちはだかった。
「嬢ちゃんの弟か。坊主も可愛いツラしてるじゃねーか!」
「へっへー、今回はほんと良い稼ぎになるぜー!」
サーシアだけでなく、レコルも男達の標的になってしまった。
「そこまでだ!」
「何だ、お前?」
「この子達の父親だよ!」
「そう言えば、確かに似てやがる」
「こいつも貴族のババーに、高く売れるぜー!」
「ニコルちゃん!」
「パパー!」
「はっはー。上玉の嫁さんと、もう一人可愛い娘がいやがった!」
男達は、心配するミーリアとエミリアも標的にした。
「どうやら、スラムの新入りじゃなさそうだな?」
「旅の商人だ」
「そうかい。だが、そんなの関係ねーな!」
「此処で会ったが運の尽き。家族纏めて売り飛ばしてやるぜっ!」
「お前等は、スラム以外の者にも手を出すのか?」
「さあな」
「金になりゃ、何だって良いんだよっ!」
「屑だな」
「誰が屑だ。意気がってんじゃねーぞ!」
「舐めんじゃねーぞ、ごらー!」
男達の標的は僕に変わり、襲い掛かって来た。
『ガシッ!』
「あがっ!」
『ドスッ!』
「うぐっ!」
『『ドサッ!』』
しかし顔面と腹に拳を見舞ってやり、何もする暇を与えなかった。
その衝撃で、二人は地面に伏した。
「あががっ!」
「うぐぐっ!」
「手加減したんだが、遣り過ぎたか?」
「パパ、ズルいよー。僕がこいつらやっつけたのにー!」
レコルが文句が言う。
「パパがいない時は、みんなを頼んだぞ」
「ちぇっ!」
確かにレコルなら、こいつらを余裕で倒せた。
しかし親の立場から、こんな奴等に関わらせたくなかった。
そんな事を考えていると、男達は痛みを堪え立ち上がった。
「テメー、このまま、ただで済むと、思うな」
男は痛みを堪え、やっと喋っている。
「まだやる気か?」
「腕に、自信が、ある様だが、こいつならどうだ!」
そう言って男達は、ダガーナイフを手にした。
「あー、怖い怖い。早く街から逃げないとー」
言葉とは裏腹に、舐めた口調で言った。
「くそっ、舐めやがって!」
「こいつだけ、殺っちまうか?!」
「ああ。子供や嫁だけでも、良い金になる!」
「物騒な話しだ。だが家族の為に、殺られる訳にいかない」
『キッ!』
「「ひえーーー!」」
『『ストッ!』』
男達に《威圧》スキルを放つと、悲鳴を上げ手に持ったダガーナイフを落とした。
「どうした。掛かって来ないのか?」
『『ガクガク、ブルブルッ!』』
「こっ、殺される!」
「ああ、こいつはヤバい。にっ、逃げるぞっ!」
男達は、慌てて逃げていった。




