表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第二章 王都行商編
35/401

第二十三話 ダンジョンの街の孤児院②

全ての鍋が空になり、子供達はお腹いっぱいで満足していた。


「ココ。院長先生に合わせてくれないか? 薬を持ってるから、飲ませてあげたいんだ」


「本当? でも、お薬のお金・・・払えない」


「お金はいらない。院長先生に元気になってもらわないと、みんな困るだろ」


「うん。ありがとう」


僕は院長先生の寝ている部屋へ案内された。

そこには六十歳前後のお爺さんが、ベットで横になっていた。

しかし、起きていたようだ。


「ゴホッ、ゲホッ、ゴホッ、ココ、そちらさんは?」


「あのね。街で子供達にパンをくれて、そのあとここでみんなにご飯をご馳走してくれたの」


「そうか、すまないのー。わしが動けんばっかりに」


「いえ、それよりお体の何処が悪いんですか?」


「ただのぎっくり腰じゃ。情けないのー」


ぎっくり腰で安心した。

変な咳をしていたから、移る病気かと思った。

まあ重い病気でも、僕の作った《上級体力回復薬》で直せるんだけどね。


一応、悪いところが無いか鑑定したが、ぎっくり腰以外は見当たらなかった。

そんな分けで、《中級体力回復薬》で充分直ると判断した。


「お爺さん。これ、体力回復薬です。差し上げますので、これを飲んで早く元気になってください」


「お若いの。失礼じゃが、他意は無いのか?」


「ええ。お爺さんがいないと、子供達がこの先困りますので」


お爺さんは、僕の目を見て考える。


「分かった。いただこう。だが、何の礼もできんからな」


「はい。構いません」


お爺さんは、《中級体力回復薬》の瓶を受け取って飲み干した。


「なんじゃこれは。もう痛みが無くなったぞ。これは上級の魔法薬なのか?」


「いえ、違いますよ。あまり、お気になさらないでください」


「いや、しかし・・・」


「お爺ちゃん、もう大丈夫なの?」


「ああ、もうどこも痛くないぞ。この兄さんのおかげだ。そう言えば名乗ってなかったのう。わしはリンゼじゃ。この孤児院の院長をしておる」


「僕はニコルといいます。見習いの行商人です」


「行商人なのか。ニコルさん、いろいろとありがとう」


「気にしないでください。あと、僕の事はニコルでいいです。年配の方に《さん》付けで呼ばれると、居心地が悪いです」


「そうか、それならニコルと呼ばせて貰おう」


「はい」



ここまで関ってしまった僕は、この孤児院の状況について話しを聞く事にした。


「リンゼさん、孤児院の経営随分大変そうですね」


「恥ずかしい話し、その通りじゃ。あす食う飯も無いほどじゃ」


「そういえば、リンゼさん。お腹空いてますよね」


僕はリンゼさん用に取っておいた《おじや》を、魔法袋から取り出して渡した。


「魔法袋。ニコルは大店のせがれなのか?」


「いえ、一人でやってます。それより、温かい内に食べてください」


「そうか、それは凄いな。それじゃ、いただくとするかのー」


リンゼさんはスプーンで一口食べると、『うまい』と言って凄い勢いで食べた。


「お代わりは無いかのー」


「ごめんなさい。それで終わりです」


リンゼさんは、がっかりしていた。

そこで、屋台で買った肉串を魔法袋から取り出し差し出した。


すると美味しそうに、あっという間に食べてしまった。

今までずっと我慢して、子供達以上に食べていなかったそうだ。


「本当にありがとう。久しぶりに腹いっぱいになったわい」


「いえ、いいんです。それより、明日からの食料も無いんですよね。少し寄付をさせてください」


僕は魔法袋から大銀貨が百枚入った袋を取り出し、リンゼさんに手渡した。

リンゼさんは、袋の中身を見て驚いた。


「い、いいのかこんなに。お主まだ見習いなのだろう」


「いいんですよ。子供達の為です。あとは、パンとハムと野菜と塩を置いていきます」


「何から何まですまんのう。ありがたくいただくわい」


リンゼさんがベットを出て子供達のところへ行くと、みんな大喜びをしていた。


ココに食料を渡し、『明日また来る』と言って孤児院を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ