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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第九章 二コルと家族編
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第四十三話 うはー!

スラムの人達の体や服を綺麗にし、暫くすると料理ができ上がった。


定番の肉と野菜のスープだ。

それにコッペパンを添えて、みんなに配った。


「肉と野菜が、こんなにいっぱい!」


「旨い。味の濃いスープなんて久々じゃ!」


「うっ、うっ。この白パンも、柔らかくて、甘くて、とても美味しいよー!」


「お嬢ちゃん、奥さん、本当にありがとう!」


「喜んで貰えて、良かった!」


「どういたしまして!」


炊き出しの食事は彼等の口に合い、陰鬱としていた顔に笑顔が浮かんだ。



「パパ。此処の人達、明日食べるご飯も無いんだって」


「だろうな」


「明日も、ご飯を作ってあげたいんだけど」


「それは構わないが、ずっと続けるつもりか? それでは解決しないぞ」


「それじゃ、どうすれば良いの?」


「彼等に仕事があればいいんだが」


「仕事?」


「そうすればお金が貰えて食料や服が買えるし、ちゃんとした家にも住める」


「どうやって仕事を見付けるの?」


「商業ギルドや役場の求人募集を見たり、店や工房に頼み込んだり、この街なら魔物ハンターになるという手もある」


「へー」


「兄さん、ちょっと良いかい?」


サーシアと話しをしていると、お年寄りに声を掛けられた。



「何ですか?」


「わしらはそういうものから(あぶ)れて、ここにおるのじゃ。それに怪我をしている若い者は、元々魔物ハンターじゃった。要するに、奴隷商さえもわしらを拾わんのじゃよ」


「まー、そんな気はしてました」


「パパ、知ってたの?」


「みんなの様子を見てればな。雇い主だって、やる気があってちゃんと働ける者を雇いたい」


そう言って食事をする人達に目を向けると、老人や負傷した者が多くいた。

それ以外の者もいるが、何らかの事情を抱えているのだろう。


幼い子供も三人いたが、奴隷商に売られない様に隠れていると言っていた。

そもそもまともに働ければ、こんな所にいない。



「みんな、働けないの?」


「わしはもう力も体力も衰えたからのう。昔の様な畑仕事は無理じゃよ」


「俺はこの脚さえ失わなければ、魔物ハンターを続けたんだ」


「僕は要領が悪く失敗ばかりで、直ぐ職場を首になってしまう」


「パパ。何とかなんないの?!」


「凄い無茶振りだな」


「だって、パパが凄いの知ってるもん!」


目をキラキラさせ、サーシアはそんな事を言い放つ。


『ニコッ!』


更に笑顔。


『うはー!』と、心の声。


我が娘ながら、凄く可愛い。

無意識で、父親を上手く転がしている。


「少し考えさせてくれ」


『甘い』と思いつつ、協力する方向で知恵を絞った。

だが直ぐには考えが纏まらず、この日は一旦スラムを離れた。



翌日の朝、教会へ向かった。


その理由は、スラムの人達に炊き出しをしてくれていると聞いたからだ。

仕事は最悪就けなくとも、食事の方は何とかしてやりたいと思った。


教会に到着すると、たまたま外で若いシスターを見掛けた。


「こんにちわ」


「こんにちわ。今日はご家族でお祈りですか?」


「いえ、《御布施》をしようと思いまして。それと、少しお話しを聞きたいのですが」


「まー、そうですか。此処では何ですので、どうぞ教会の中にお入りください」


「はい、失礼します」


この後みんなは教会を見学し、僕は応接室で院長を待った。



暫くすると、応接室に年輩の女性が現れた。


「ようこそおいでくださいました。院長のテレジアと申します」


女性の院長は、俗に『マザー』と呼ばれる存在だ。


「商人のニコルと申します」


「ご丁寧に、ありがとうございます。この度は教会に御布施をしていただけるそうで、大変感謝しております」


「はい。しかしその前に、お聞きしたい事があります」


「何でしょう?」


「スラムの人達に、炊き出しをしているそうですね」


「はい。しかし最近は、満足のいく程支援できてません」


マザー・テレジアは、悲しい表情を浮かべた。



「それはやはり、資金が足らないからですか?」


「はい。この教会は、信者の御布施だけで運営してますので」


「街の方からは、支援金などは出ないのですか?」


「はい。何度も頼みましたが、受け付けていただけませんでした」


「そうですか。それでは孤児院を運営する余裕なんて、とてもありませんね?」


「孤児院ですか? もしかして、あの事を」


「はい。孤児が連れ去られ、奴隷商に売られていると聞きました」


「私もその事は、大変心苦しく思ってます。しかし奴隷商では、毎日一食は食事を与えられるそうです」


「スラムにいるより、奴隷になった方がマシだと?」


「いえそれは・・・・・、買われた主人にもよるでしょうね」


「確かにそうですね」


「お金さえあれば・・・・・」


「それは充分な支援があれば、孤児を見ていただけるという事ですか?」


「はい。ですがそんなお方は、今まで現れませんでした」


「そうですか。それではその支援、私がいたしましょう」


「本当ですか?!」


「はい。それとできる範囲で良いので、スラムの人達の炊き出しもお願いします」


「はい。支援していただけるのでしたら」


「それでは最初に、これを受け取ってください」


そう言って魔法袋から、大銀貨(一万マネー)が百枚入った袋を十個取り出した。



「こんなに? 一体幾らあるのですか?」


「一千万マネーです」


「一千万っ!」


「使い勝手が良い様に、全部大銀貨にしました」


「お気遣い、ありがとうございます」


「これとは別に、必要な額を定期的に支援します。あと孤児の住む家は、此方で建てます」


「あー、神様。何という素晴らしい方を御導きくださったのでしょう。ニコルさん、宜しくお願いします!」


「はっ、はい!」


この後『土地がある』と言って、裏庭に連れていかれた。

この時のマザー・テレジアは、勢いが凄かった。

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