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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第九章 二コルと家族編
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第四十二話 スラム

旅の途中ではあったが、ロイ達の件で僕はエシャット村に帰った。


「やあ、ココ」


孤児院に足を運ぶと、ココは庭の遊具で子供をあやしていた。


「あっ、ニコルさん。旅から帰って来たんですね」


「いや、実を言うとまだ旅の途中なんだ」


「えっ!」


「ココとコニーに相談があって、《亜空間ゲート》で帰って来た」


「それって、もしかして孤児の件ですか?」


「良く分かったな」


「ニコルさんが私達に相談するとしたら、そうかと思って。喜んで引き受けますよ!」


「ははっ、そうか。五人だけど、大丈夫?」


「五人なら問題ありません。此処は《孤児院》なんですから、遠慮しないでください」


「そう言って貰えると助かるよ。僕もできる限り協力する」


「お願いします!」


「今はプラーク街の別荘で保護してるんだ。連れて来て良いか?」


「良いですよ」


「それじゃジーク兄さんに話しをつけてから、連れて来るよ」


「はい。準備して、待ってます」


僕はこの後村長のジーク兄さんの所へ行き、事情を説明した。

そして了承を得て、ロイ達をエシャット村に迎える事になった。



ジーク兄さん・ココ・コニーに子供達を紹介し、養育費と共に孤児院に預けた。


「シャルロッテと《亜空間ゲート》を残してきたから、僕はカプコン街に戻るよ。みんなはどうする?」


「パパ。この国には、他にもロイ君達みたいな孤児がいるの?」


「いるだろうな」


「それなら、助けてあげようよ!」


「この広い国を、探して回るのか?」


「うん」


「口で言うのは簡単だが、大変な事だぞ。それにこの役目は、その土地を治める領主が行うべきだと思ってる」


今まで縁のあった子供達は保護してきたが、探し出してまで保護しようとは思わなかった。

冷たい様だが、はっきり言って切りが無いからだ。


僕は《聖人》でもなければ、そんな《信念》を持ち合わせてもいなかった。



「その領主様が何もしないから、ロイ君達はこんな事になってるんでしょ!」


「そうかもな」


「そんなの可哀想だよっ! 領主様にお願いしようよっ!」


「パパ達平民がお願いしたところで、簡単にはいかないさ」


「それじゃ、《王族》のバロン君なら」


「サーシア。バロン殿下を利用するのは駄目だ!」


「利用じゃない。お願いだよ!」


「そうは言うが、バロン殿下に迷惑が掛かるぞ」


「えっ!」


「孤児を育てるには衣食住や面倒を見る人が必要だ。それにはお金が掛かる。その分の見返りを、領主がバロン殿下に求めたらどうする?」


バロン殿下は、まだ十歳だ。

そんな子供を、政治や権力争いに巻き込むのは良くない。


そんな思いから出た、言い訳だった。

協力を仰ぐのであれば、ヤマトに変装してノーステリア大公爵あたりが良いだろう。


議会で取り上げて貰い、法的に強制するのが良さそうだ。

だけどそれをするのも、恩を買う様で嫌だった。


「難しい事は分からないよ。でも領主様が当てにならないなら、誰かがやらなきゃ!」


「困ったなー」


サーシアの心に火が着き、説得するのは難しそうだ。



「サーは、旅についていくからね!」


「分かったよ。パパが協力するから、頑張ってできる事をやってみるんだな」


結局サーシアの熱意に負け、彼女を見守る事にした。


「ありがとう、パパ!」


「魔物のいる場所に僕だけ行ってないんだ。僕も行くよ!」


「エミリアもいくー!」


「みんなが行くなら、ママも行かなきゃね!」


という事で、旅は全員で続ける事になった。



「シャルロッテ、待たせたな」


「ヒヒーン『大丈夫です』!」


シャルロッテは、一人寂しく待っていた。


「パパ。『スラム』って場所に行きたい!」


「スラム? 何しに行くんだ?」


「困ってる人達がいるんでしょ? 助けようよ!」


「早速、そうきたか」


「協力してくれるんでしょ?」


「しょうがないな」


子供達がショックを受けるかもしれないが、行ってみる事にした。



「「「パパァ」」」


「ニコルちゃん」


街外れのスラムに到着すると、案の定子供達はショックを受けた。

それは大人のミーリアも、同じだった。


そこには痩せ細った汚れた身なりの者が、無気力で佇んでいた。

その中には、腕や脚や目を失った者もいる。


人数はざっと、五十人近くいた。

また住居は石や煉瓦等ではなく、ただ木の枝や草を組んだだけのものだった。


「兄さん、何か恵んでくれよー」


「腹が減って、死んじまうー」


「酒、酒をくれー」


僕達を見て、人が集まって来た。



「サーシア、どうする?」


「うっ、うん」


「ご飯をご馳走するか?」


「うん。パパ、道具と材料を出して」


「ああ」


「ママ。料理、手伝って」


「いいわよ」


「お嬢ちゃん、わしらに飯を恵んでくれるのか?」


「うん。今から作るから、待ってて!」


「「「「「「「「「「うっ、ううっ!」」」」」」」」」」


サーシアの言葉に、スラムの人達は嗚咽が込み上げてきた。

僕は調理用のテーブルや道具、それに材料を魔法袋から取り出した。


調理済みの料理もあったが、サーシアが始めた事なので調理は彼女に任せる事にした。



「あんたら汚いな。ご飯を食べる前に、魔法で綺麗にしてやるよ」


「兄さん、魔法が使えるのか? それなら、是非頼むよ」


「ああ。《清浄》、《修復》」


『ホワーン!』


老人の体が、淡い光に包まれた。



「おお、体も服も綺麗になった! しかもボロボロの服が、新品になっとる!」


「おっ、俺も頼む!」


「私も!」


「ああ、みんなやってやる」


「「「「「「「「「「うおーーー!」」」」」」」」」」


僕の言葉に、歓声が上がった。

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