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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第九章 二コルと家族編
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第四十一話 持ってるなら早く使えば良かったのにー!

僕は変装を解き、露店の近くに《転移》した。


「レコル、お待たせ」


「パパ、酷いよー。凄く忙しかったんだよー!」


「悪い、悪い。店はもう終わりにしよう」


「「「「「「「「「「えー!」」」」」」」」」」


レコルに終わりを告げると、店の前で待っている客が不満の声を上げた。

思った以上の人気で、大勢並んでいる。



「並んでるのに、そりゃないぜー!」


「私も食べたかったのにー!」


「一本で良いんだ。売ってくれよー!」


「わっ、分かりました。もう暫く営業します」


「「「「「「「「「「うおー!」」」」」」」」」」


客の勢いに負け、店を閉められなくなってしまった。



「レコルは休んでて良いぞ。屋台でお昼を食べてこい」


「やったー! じゃーパパ、これ返すよ」


僕はレコルから、魔法袋を受け取った。


「あっ、そうだ。シャルロッテの食事を頼む」


「はーい!」


シャルロッテの食料を魔法袋から取り出し、レコルに渡した。



休憩の終わったレコルに、『売り切れ』の立て札を持たせ最後尾に立たせた。


「ありがとうございましたー。今日の営業は終わりでーす」


並んでいた客がいなくなり、露店の片付けに取り掛かった。


「パパ。露店の販売って大変だね」


「大変なのは何も露店だけじゃないぞ。農業だって狩りだって、それぞれ大変な部分はある」


「分かってるよ。ただ休む暇が無かったから、『パパの仕事って、大変なんだなー』って思ったんだよ!」


「パパを労ってくれたのか。それは悪かった」


「いいよ。それでママ達はどうしたの?」


「場所を移してから話す。先ずは片付けだ」


「うん」


そして露店の片付けを済ませ馬車の準備をしていると、此方に近付いて来る人達がいた。



「おい、お前達っ!」


「はい、何でしょうか?」


「《トルネードポテト》なるものを売っているのは、お前らか?」


「はい。しかし用事ができまして、店を閉めたところです」


「此方のカルトッフェル男爵様が、そのトルネードポテトを御所望だ」


後ろに目を移すと、ジャガイモの様に丸々太った人物がいた。



「私は旨い物に目がないのでな。噂を聞き付け、自ら足を運んだのだ」


「ご足労ありがとうございます。トルネードポテトは幾つお売り致しましょうか?」


貴族と揉めると面倒なので、素直に売る事にした。


「それでは、十個貰おう」


「この篭に、入れてくれ」


「はい。では、そのままお持ちください」


お付きの人が篭を差し出したので、魔法袋からトルネードポテトを取り出し入れていった。



「これで十個です。お代は三千マネーになります」


「三千マネーだな。では中銀貨(五千マネー)だ」


「はい、確かに。ただいまお釣りをお返しします」


「釣りは取っておけ」


お釣りを御付きの人に渡そうとすると、男爵がそれを遮った。



「有り難く、頂戴致します」


「うむ。どれ、早速いただくか」


『サクッ! モグモグ、ゴックン!』


「旨い! 揚げたジャガイモは、こんなに旨いのだな!」


「気に入っていただけて、何よりです」


「これなら屋敷の料理人でも作れそうだ」


「ええ。揚げる油さえあれば、簡単に誰でも作れます。それに家庭で食べるなら、この形に拘る必要もありません。あとはトマトケチャップを付けて食べると、より美味しいですよ」


「おー、良い事を聞いた。感謝する」


「はい」


揉め事が起こらないかと危惧したが、貴族はホクホク顔で去って行った。



「もしかして、あのカルトッフェル男爵が街長(まちおさ)なのか?」


「パパ、どうしたの?」


「今日関わった問題を、あの貴族が解決してくれれば良いのにと思ってな」


「ふーん、そうなんだ」


「兎に角、今はミーリア達と合流するぞ」


「うん」


僕は馬車を走らせ、人気(ひとけ)の無い場所を探した。



丁度良い場所を見付け馬車を停めると、周りに《結界》を張った。


「パパ、ママ達は?」


「ちょっと待ってろ」


僕はそう言って、《亜空間ゲート》を取り出した。


「パパこれ、《亜空間ゲート》だよね?」


「そうだ。ママ達はプラーク街の別荘にいる」


「えー、持ってるなら早く使えば良かったのにー!」


「それじゃ旅の意味がないだろ」


「ちぇっ!」


「シャルロッテ。悪いけど、暫くここで待っててくれ」


「ヒヒーン『はい』!」


「レコル、行くぞ」


「うん」


馬車をこの場に置いて、僕とレコルは《亜空間ゲート》を(くぐ)った。



《亜空間ゲート》を置いた部屋からリビングへ行くと、ミーリアが一人で寛いでいた。


「ミーリア、お待たせ」


「ママ、ただいま」


「二人共、お疲れ様」


「遅くなってごめん。店の方が混んじゃって」


「いいの。こっちはこっちでやる事があったから」


「何かあったのか?」


「汚れてたから、お風呂に入れたの。魔法でも綺麗にできたけど、寛げるでしょ?」


「そうだな」


「エシャット村へ行って、服も持って来たのよ」


「へー、村へ行ったのか。ところで、あの子達は?」


「外で遊んでるわ。レコルも一緒に遊んできたら?」


「僕疲れたから、此処で休むよ」


「レコル。『あの子達』っていうのは、保護した孤児達の事なんだ。一度、顔を見せてこい」


「へー、孤児がいるんだ。それなら、ちょっと見てくる!」


レコルは興味深げに、外に出て行った。



「ニコルちゃん。あの子達、エシャット村の孤児院に連れて行くんでしょ?」


「そうしたいが、久しく孤児を受け入れてなかったからなー」


「学校と自分達の子育てがあって大変かもしれないけど、ココとコニーならきっと引き受けてくれるわ」


ココとコニーはそれぞれ家庭を持ち、孤児院に同居していた。


「そうだな。遠慮しててもしょうがない。取り敢えず、二人に相談してみるか」


僕は村に戻り、孤児院に住むココとコニーに相談しに行く事にした。

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