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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第九章 二コルと家族編
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第四十話 カプコン街の孤児③

この街の規模と環境だったらあってもおかしくない《孤児院》が、《地図》機能で探しても見当たらなかった。


「ロイ。さっき『俺ら孤児を奴隷商に売る』って言ってたな。そんな事をする奴等が、この街にいるのか?」


「いるよ。スラム街の孤児が、何度も無理矢理連れて行かれた。僕は運良く捕まらなかった子達を連れて、スラムを離れたんだ」


僕はロイの言葉を聞いて、『孤児を奴隷にする為、敢えて孤児院を作らないのでは?』と勘ぐった。

しかし証拠が無い為、断定はできない。



「そうか。ロイは偉いな」


「ロイ君。街の偉い人や衛兵さんは、何もしてくれないの?」


「うん、何もしない」


「パパ、どうして?」


「誘拐に気付いてないのか単に見捨てられてるのか、お金や人手が足りないのか、はたまたお偉いさんと奴隷商の癒着とかかな」


「そんなの酷いよっ!」


「サーシア。世の中は、君が思ってるよりも残酷なんだ」


「それじゃ、孤児の子達はどうすれば良いの?!」


「本来なら街の行政に任せたいところだが、パパ達が彼等を動かすのは容易じゃない。取り敢えずロイ達は、安全なエシャット村で保護した方が良さそうだ」


「行政っていうのに納得できないけど、パパもこう言ってるし、ロイ君私達の村に来なよ!」


「・・・・・みんなに聞いてみる」


「それならロイ、付いていって良いか?」


「良いよ」


こうして僕達は、ロイ以外の孤児に会いに行く事になった。



歩いて五十分程して辿り着いた場所は、スライムが出現する廃村だった。

住んでいるのは、ロイ達だけらしい。


「ただいまー!」


「「「「おかえりー!」」」」


幼い子供達が、ロイを出迎えた。

男の子と女の子が二人ずついて、みんなロイより幼い。


「しらないひとがいるー!」


「おじちゃんたち、だーれ?」


「俺達を、助けてくれるってさ!」


「「「「ほんとう?!」」」」


「ああ、パンを沢山貰った。みんなで食べよう!」


「「「「わーい!」」」」


ロイは子供達に、コッペパンを配った。



「ふわふわー!」


「あまーい!」


「うまうまー!」


「おいしーよー!」


「盗みなんかやってるけど、満足に食べさせてやれないんだ。何も無い時は、葉っぱや草だって食べて凌いでる」


「ひもじい生活をしてたんだな。他の食べ物も出してやるから待ってろ」


「ありがとう」


僕は野菜スープとソーセージの入った鍋と、水と食器を魔法袋から取り出した。


「ニコルちゃん、私がやるわ」


「ああ、頼む」


ミーリアに給仕を任せ、僕は今後の事を考えた。



「「「「「ごちそうさまー!」」」」」


「お腹いっぱいになったか?」


「「「「「うん!」」」」」


「ロイ。みんなに説明を頼む」


「分かった」


僕がロイを促すと、子供達がロイに注目した。



「みんなでこのおじさんの村に行こうと思うんだけど、良いか?」


「ごはんたべれるなら、いくー」


「ぼくもー」


「わたしもー」


「ロイにいがいくなら、いっしょにいくー」


「おじさん。みんな行くってさ!」


「ははっ、随分すんなり決まったな。ん?」


この時、廃村に近付く人の気配を感じた。


「パパ、どうしたの?」


「人の気配がした。見てくる」


外に出て確認すると、二人の男が廃屋の中を物色していた。



「おい。こんなボロボロの廃村に、本当にガキがいるのかよ?」


「噂だ、噂。魔物ハンターの奴等が、飲み屋で話してるのを聞いたんだ」


「スラムにいないからって、こんな場所に来るのは面倒だぜ」


聞き耳を立てて聞いていると、どうやらロイが言っていた孤児の誘拐犯らしい。

僕は一旦、ロイ達がいる家に戻った。



「男が二人いた。孤児を探してるみたいだ」


「どうしよう、おじさん?!」


「ちょっと、待ってろ」


僕はそう言って、《亜空間ゲート》を取り出した。



「ミーリア。《亜空間ゲート》で、みんなを連れて逃げてくれないか?」


「ええ、良いわよ。それで、これは何処に繋がってるの?」


「プラーク街の別荘だ。内緒にしていてごめん」


「気にしないで。だけど、ニコルちゃんはどうするの?」


「《亜空間ゲート》を回収して、レコルを後で送り届けるよ」


「分かったわ」


「サーシア、エミリア。みんなと仲良くするんだぞ!」


「「はーい!」」


「シロンも頼んだぞ!」


「ニャー!」


「ロイ」


「何?」


「この扉は魔道具で、おじさんの別荘に繋がってる。みんなと一緒に行くんだ!」


「冗談だよね? そんなの信じられないよ!」


「ロイ君、パパの言ってる事は本当だよ。ほらっ!」


サーシアが、扉を開けてロイに見せた。



「あっ、穴が空いてるっ!」


「うわー、なにこれー!」


「すごーい!」


「どうなってるのー」


「あっちにも、トビラがあるよー!」


子供達は興味津々に、中を覗き込んだ。


「ロイ君、信じてくれた?」


「しっ、信じるよ」


「さあ、みんな。行きましょう!」


ロイが納得するのを見て、ミーリアはみんなを促した。

僕は全員がプラーク街の別荘に着くのを待って、《亜空間ゲート》をしまった。



『フッ!』


僕は《ヤマト》に変装し、男達の前に姿を現した。


「お前、こんな場所で何してやがる?!」


「お前等こそ、何しに来た?」


「答える義理は、ねーよ」


「人に聞いておいてそれか。どうせ人に言えない事なんだろ?」


「ちっ、向こうへ行きやがれ!」


「何処に居ようが、俺の勝手だ」


「おい、こいつ何か怪しくねーか?」


「そうだな」


「お前等に言われたくない。孤児誘拐犯なんだろ?」


「「くっ!」」


「図星の様だな?」


「ちっ、行くぞ!」


「ああ」


男達は、大人しく去って行った。



「さて、レコルの所へ行くか」


遅くなって文句を言われるのを覚悟し、急いで露店に戻った。

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