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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第九章 二コルと家族編
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第三十九話 カプコン街の孤児②

サーシアは巾着袋を、男の子から奪い返した。


「はーなーせーよー!」


「駄目!」


「金は返しただろー!」


「悪い事したんだから、言う事聞きなさい!」


「いーやーだー!」


「サーシア、大丈夫?」


ミーリアはエミリアとシロンを連れて、サーシアを追って来た。



「うん。お金はこの子から、取り戻したよ。はい」


「ありがとう。でもこの子、どうするの?」


「パパの所に連れて行く。《孤児》なんだって」


「まあ、そうなの」


「だけどこの子、なかなか動いてくれないの」


「仕方無いわね。ママがパパを連れて来るわ」


「お願い、ママ」


「エミリアは、シロンと一緒に待っててね」


「うん!」


ミーリアは、急いでニコルを呼びに行った。



保温ケースにトルネードポテトを補充していると、ミーリアが慌てて露店に帰って来た。

僕は事情を聞き、レコルにトルネードポテトの入った魔法袋を預け露店を離れた。


お客さんは引っ切り無しに来ていたが、一人で頑張って貰うしかない。


「サーシア、お待たせ」


「パパ、やっと来た!」


「それで、この子がお金を盗んだ孤児の男の子か?」


「うん」


「名前は?」


「教えてくれないの」


「歳は?」


「それもー」


《鑑定》すれば分かるが、プライバシーを守る為に見るのを控えていた。



「俺をどうする気だ?!」


「さあ、どうするかな。泥棒は衛兵に突き出すのが筋だが、その歳では可哀想だ。君は、頼る人はいないのか?」


「いたら、盗みなんかするかよっ!」


「大人に命令されてやってる訳じゃ、ないんだな?」


「当たり前だっ!」


「ねー、パパ。何とかしてあげてよー!」


「その前に、この子の言ってる事が本当か確かめる必要がある」


見た目は孤児と納得できる程、みすぼらしかった。



「何で?」


「この場から逃れる為に、嘘を言ってるかもしれないだろ」


「そんな風には、見えなかったけど」


「この間言ったろ。『良い人だと思っていた人が、実は悪い人だった』って」


「じゃー、どうするの?」


「そうだな。住んでる所へ行けば、少しはこの子の素性が分かるかもしれない」


「誰が教えるかよっ!」


「どうしてだ?」


「あんただって良い人面して、俺ら孤児を《奴隷商》に売るかもしれないだろっ!」


「パパはそんな事しないっ!」


「分かるもんかっ!」


「会ったばかりで、お互い信じられないのはしょうがない。でもその口ぶりだと、他にも孤児は居るようだな?」


「どうだっていいだろっ!」


会話をしていて、この子が嘘を言ってないという事が何となく分かった。



「良し、分かった。君の言う事は信じよう。だけど君が僕達を信じてくれないと、何もしてやれないな」


「へんっ! 信じて欲しかったら、金を寄越せよっ!」


「金か。幾ら欲しいんだ?」


男の子は、『キョトン!』としてしまった。


「くれるのか?!」


「ああ、やるぞ」


「だったら二万、いや五万マネーだっ!」


「見ず知らずの子供に五万マネーか。・・・まあ、良いだろう」


僕は大銅貨を五十枚袋に入れ、男の子に差し出した。



「本当にくれるのか?」


「ああ。泥棒は見過ごせないが、くれてやるのは構わない」


男の子は、恐る恐る袋を受け取った。


「良かったね」


「うっ、うん」


「君達が何人いるか分からないが、これも持っていけ」


そう言って、コッペパンが五十個入った袋も渡した。



「白パンがこんなに」


『グー!』


男の子のお腹が鳴った。


「お腹が空いてるのか? それならこれもやる」


トルネードポテトを一本取り出し、男の子に差し出した。

子供の好きなトマトケチャップが掛かっている。


「これは?」


「露店を開いて売っている商品だ。美味しいから食べてみろ」


「うん」


男の子はトルネードポテトを受け取り、口に運んだ。



「美味しい」


「そうだろう」


「ゴメン」


男の子は目に涙を浮かべ、涙声になって言った。


「何がだ?」


「おじさんやお姉ちゃんの事、疑ってた」


「ははっ、随分素直になったな。でもお金はいずれ無くなる。信じてくれるなら、その先の手助けもしてあげられるかもしれない」


「ぐすっ! 俺、おじさんの事信じるよ!」


「ありがとうな。おじさんの名前はニコル。君の名前を教えてくれるか?」


「ロイ」


「ロイか。歳は?」


「八歳」


「ロイの他に、孤児は何人いるんだ?」


「四人。その中に妹が一人いる」


「そうなんだ。ロイの両親はどうした?」


「二人共魔物ハンターだったんだけど、魔物を狩りに行って帰って来なくなった」


「そうか、大変だったんだな」


「うん」


ロイは素直に、自分の事を話すようになった。



「ロイ、住んでる家はあるのか?」


「魔物が出る場所の廃村」


「そんな危険な場所に、子供達だけで住んでるのか?」


「危険って言っても、魔物はスライムしか出ないよ。それに街には税金を納めないと住めないし、スラム街は廃村より危険だから」


「それでも危険な事には代わり無い。この街に孤児院は無いのか?」


「あるって話しは、聞いた事ない」


「これだけの規模と環境の街なら、あっても良さそうなのにな・・・・・ん?!」


考えを巡らしていると、先程ロイが言った言葉が引っ掛かった。

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