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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第九章 二コルと家族編
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第二十九話 バロン初めての海②

ユミナのお陰で、僕は難を逃れた。


テーブルには食材が並べられコンロの木炭には火が点き、バーベキューはいつでも始められる状態になっていた。

『ホッ!』とした僕は、『食事を始めましょう』と声を掛けようとした。


だがそんな僕を、ミーリアは見逃さなかった。


「ニコルちゃん。あまりユミナさんに、見蕩れないでね!」


「なっ、何の事かな?」


「そう、惚けるの? 今晩、ゆっくりお話しする必要がありそうね?!」


「そっ、そうかな?」


『くそっ! バロン殿下のせいで、とんだとばっちりを食ったじゃないかっ!』


そんな不満を思いつつも、バロン殿下やみんなに魚介やミノタウロスの肉を振る舞った。



『美味しかった』と一同満足し昼食が終わり、早速クルーザーで出掛ける事になった。


「立派な船だわ!」


「流石、ニコル君ですね!」


「凄い・・・・・!」


「バロン君、早く乗ろう!」


「あっ、ああ」


想像の上をいくクルーザーを見て、バロン殿下は呆然とした。

そんなバロン殿下をサーシアが促し、クルーザーに乗り込んだ。



「ニコル君、中の装備も凄いわね。フカフカのソファーに、空調魔道具。涼しくて、とても快適だわ!」


「こちらのトロピカルジュースを飲んで、ゆっくり寛いでください」


「至れり尽くせりね」


良く冷えたトロピカルジュースを、みんなに配った。


「今日は日帰りなので時間はあまりありませんが、行きたい場所などございますか?」


「ニコル君に、任せるわ」


「それでしたら近くに海の綺麗な無人島がありますので、行ってみましょうか?」


「良いわね。ユミナちゃんも、それで良い?」


「私は構いません。バロンも良いわよね?」


「はい」


行き先が決まると僕は操舵室に入り、クルーザーを走らせた。



暫くすると、子供達が甲板に出て海を眺め始めた。


「速いな。船はこんなに速く走れるものなのか?」


「へへーん。パパのクルーザーは、凄いだろ!」


レコルが、自慢気に言った。


「悔しいが、王家の船はこんなに速くない」


「バロン君は、どこで船に乗るの?」


今度はサーシアが、問い掛けた。


「湖や大河で、たまに乗る事がある」


「へー、そうなんだ。あっ、イルカだっ!」


他愛のない会話をしていると、クルーザーに並走しながら五匹のイルカが現れた。



「イルカ?」


「ほら、あそこ。跳ねながら泳いでる!」


「でかい魚だな?」


「形は似てるけど、魚じゃないんだって。パパは哺乳類って言ってた」


「あれが哺乳類なのか?」


「うん。それに頭が良くて、一緒に泳げるんだよ!」


「泳いだのか? あれと」


「大きいけど、噛んだりしないよ。人懐っこくて凄く可愛いんだ!」


「そうなのか?」


笑顔で話すサーシアに、バロンもイルカに興味を示し暫く観察した。



クルーザーは一時間も掛からず、目的の無人島に到着した。

船着き場にクルーザーを停め、全員で船を降りた。


「エメラルドグリーンの海。本当に綺麗だわ!」


「ここは楽園か?!」


「ニコル君。素敵な場所に連れて来てくれて、ありがとう!」


「どういたしまして。ところで、ダイビングができるけどやる?」


「いえ、私は遠慮します」


ユミナはあまり、泳ぎが得意じゃなかった。



「母上、ダイビングって何ですか?」


「道具を身に付けて、海に潜って生物を観察するのよ」


「僕、やりたいです!」


「でもバロンって、泳げたかしら?」


「泳いだ事は、ありません」


「それじゃ、サーが教えてあげる!」


「良いのか?」


「うん!」


ダイビングに興味を示した子供達に、《水中メガネ》と《フィン》と改良してペンダント型にした《酸素吸入》の魔道具を装備させた。


勿論僕も、事故が無い様子供達を見守った。



「バロン君、上手。初めてでこんなに泳げるなんて、凄いよ!」


「サーシアの教え方が、上手いんだ」


「これだけ泳げれば、あそこに行っても大丈夫かな?」


「あそこって、何処だ?」


「ダイビングスポット。足の着かない深い所なんだけど、綺麗な魚や珊瑚が沢山要るんだよ!」


「そんな場所があるのか? 是非見たいっ!」


『ザバッ!』


近くで様子を窺っていた僕に、サーシアが振り返った。


「ねー、パパ。連れてって!」


「そうだな。折角だし行こうか」


「やったー!」


時間が無いのでみんなでクルーザーへ乗り込み、ダイビングスポットへと向かった。



ダイビングスポットへは、数分で到着した。

島など無く、ただ海だけ広がる場所だ。


『ゴクリッ!』


一人だけ沈む為のウエイトを身に付け、緊張のあまりバロン殿下は唾を飲み込んだ。


「バロン君、早く来なよ!」


戸惑っているバロン殿下を、海の中からレコルが急かした。


「分かってる。今、行く!」


「パパが要るから、大丈夫だよ」


『チラッ!』


『ニコッ!』


『ムッ!』


サーシアの言葉で一瞬僕を見るが、なんだか不服そうだ。



「サーも、いるよ」


「そうだな」


『カプッ!』


『・・・・・・・・・・ザブーン!』


バロン殿下はサーシアの言葉で意を決し、《酸素吸入》の魔道具を咥え海に飛び込んだ。

サーシアと僕も、それに続いた。


海に飛び込むと、バロン殿下は水中で固まっていた。


だがその表情は恐怖や緊張では無く、眼下に広がる色取り取りの魚や珊瑚礁に感動している様だ。

サーシアはバロン殿下の手首を掴み、その中へと(いざな)った。



魚に囲まれ泳いでいると、一匹のイルカが現れた。


「キュイ、キュイ!」


いつも、何処からともなくやって来るイルカだ。

僕達に懐くので、名前を『クー』と付け呼んでいる。


『ガシッ!』


近付いて来たクーの背びれにレコルが掴まると、そのまま一緒に泳ぎ始めた。

若干九歳ながら、大したものだと思う。


そんなレコルとクーを、バロン殿下は驚きの表情を浮かべ見ていた。

サーシアが指で肩を(つつ)くと、バロン殿下は我に返りその後二人で楽しそうに泳いだ。


待っている人達が心配するといけないので、頃合いを見て水面に上がった。



「母上っ、お祖母様っ! 海の中は幻想的で、とても感動しました!」


「良かったわね、バロン」


「私ももう少し若ければ、潜りたいのだけれど」


バロン殿下は興奮しながら、海の中の感想をユミナとソフィア様に報告した。


この日はこのまま海の保養所に引き返し、温泉宿まで同行しお開きとなった。

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