第二十一話 試験申込みとダンジョンの街の孤児
僕はいつもの店で昼食を食べてから、ダンジョンの街エーテルに来ていた。
勇者の仲間達が気になって、居場所を検索したがすでにこの街にはいなかった。
そして、通称《ダン防》に足を運び、受付で《ダンジョン探索者試験》の申込みをしている。
試験は《パーティー用》と《ソロ用》が有り、《ソロ用》は合格条件が厳しいとの事だ。
申請書に必要内容を記入していき、戦闘スタイルのところで考える。
戦闘スタイルは、片手剣だけにした。
「魔法無しでも、剣の実力だけで大丈夫だろう」
受付に申請書を提出すると、受付の女性から心配そうに話し掛けられた。
「やはり、ソロの試験を受けるのですか? ソロは危険なので審査基準は厳しいんですよ」
「やってだめだったら考えますよ」
「そうですか。分かりました」
受付の女性は心配そうにしていたが、申請書と試験費用の五千マネーを受け取ってくれた。
「二日後の朝から試験を行いますので、遅れずに来て下さい」
「分かりました」
僕の見た目で、ソロは無理だと思われたのかもしれない。
なめてはいないが、何とかなる自信はあった。《剣技》スキルはレベル10だしね。
それにパーティーを組んだら、自由に行商をできなくなる。
その後、ダンジョンで必要な道具や食料を買いながら街を散策した。
◇
日がだいぶ傾いてきた。
ふと見ると、ダンジョン探索者に混ざってやせ細った子供達がたむろしている。
そして、一人の幼女が僕に声を掛けてきた。
「おにーちゃん。たべものをくだちゃい」
「えっ、お腹が空いてるのか」
「うん」
僕は魔法袋から黒パンを二個取り出し、幼女に与えた。
「おにーちゃん。ありがと」
幼女はお礼を言って去って行った。
すると、今度は三人の幼児と二人の幼女が同じように声を掛けてきた。
しかたないので、全員に黒パンを二個ずつ与えた。
すると、子供達がどんどん集まって来て二十人近くなった。
「おいおい、全員にあげるほど黒パン持ってないぞ」
「「「「「えー!」」」」」
「そんな事、言ってもなー」
「おなかすいたよー」
「うわーん、おなかちゅいたー」
「なんでもいいから、たべさせてよー」
この子達は孤児なのか? この状況からそうなのだろう。
そこで、僕は年長の子供に確認した。
「ご飯を食べさせてあげるから、教えてくれないか?」
「うん」
「君達のお父さんお母さんはいるのか?」
「みんないないよ」
やっぱりそうか。多分ダンジョンで命をなくした人も、少なからずいるんだろう。
「そうか。それじゃ孤児院に住んでるのか?」
「うん。でもたべるものがないんだ」
「それで、街の人に声を掛けて食べ物をもらってるのか?」
「うん」
「孤児院に全部で何人いるんだ?」
「えーと、さんじゅうさんにん。あと、おじいちゃんがいる」
「そんなにいるのか。それじゃ食べ物を買ってから、孤児院で食べさせてあげるよ」
「ほんとに?」
「本当だ。ところで君の名前は何て言うんだ?」
「コニー」
「そうかコニーか。僕はニコルだ。よろしくな」
「ニコルにいちゃん、ありがとう」
「ああ」
そう言って、コニーの頭を撫でてやった。
僕が買物をしている間、子供達がぞろぞろと後を着いて来るのであった。




