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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第九章 二コルと家族編
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第二十一話 シロンの旅④

シロンの墓に祈りを捧げていたユミナが、突如声を上げた。


「ユミナ、どうした?」


「シロンが()えたの!」


ユミナは振り向き、僕にそう答えた。


「シロンが()えた?」


「・・・・・・・・・・!」


するとユミナは、視線を虚空に移し無言になった。

そのただならぬ雰囲気に、僕は沈黙し次の言葉を待った。



暫くすると、ユミナの視線が僕に向けられた。


「ニコル君。シロンが《猫》として、《転生》しました!」


「えーーーっ!!!」


ユミナのその言葉を聞き、僕は驚愕の声を上げた。


()えたんです! 貴族の屋敷で生まれ育ち、ニコル君に会いに旅をする姿が!」


「まさかっ!」


僕は慌てて、《検索》スキルで《転生したシロン》の居場所を調べた。



「いたっ!」


《検索》スキルの《地図》上に、はっきりとマーキングされた。


「パパ、どうしたの?」


「パパ、ちょっと用事ができたんだ。このユミナさんと、お家の図書室で待っててくれないか?」


「ごはんはー?」


「ご飯までには戻るよ」


「わかったー」


「ユミナ。僕が戻るまでエミリアの面倒を見ていてくれ! それから、君達のご飯は作ってある」


「うん、行ってらっしゃい!」


僕は駆け出し、人目を避けて《転移》した。



『シュタッ!』


転移先は昔《アルシオン王国》のスタンピード騒ぎで、一度だけ通り過ぎた場所だった。

しかしそこは、シロンのいる場所からまだ離れていた。


「良し、あっちだ!」


『ドビュウーーーッ!』


再び地図でシロンの位置を確認し、僕は空を飛んだ。


「しかし、シロンが《転生》してたとはな!」


僕は笑みを浮かべ、そう呟いた。


《検索》スキルは一見万能だが、《通知》機能は備わっておらず知る術が無かった。



『スー、スー!』


街道を走る馬車に揺られながら、私はうとうとしていた。


「シローーーン!」


『ピクッ!』


「ご主人の声? まさか、有り得ないニャ」


空耳だと思い、私は再びうとうとした。


「シローーーン!」


「空耳じゃ無いニャ! 確かにご主人の声ニャ!」


今度は《超聴覚》スキルで、はっきりとご主人の声を認識した。

私は《超視力》スキルで、ご主人の姿を探した。



「いたニャ! こっちに、飛んで来るニャ!」


『バッ! シュタッ!』


私は咄嗟に、馬車から飛び降りた。


「ご主じーーーん!」


『タッ、タッ、タッ、タッ、タッ・・・・・・・・・・!』


そして叫びながら、ご主人の元へ走り出した。



街道を走る馬車から、一匹の白い猫が飛び降りた。


「シロン。僕の声に気付いたんだ!」


『ヒュウーーーーー、シュタッ!』


近くまで行くと、減速し街道に着地した。


「ご主じーーーん!」


『タッ、タッ、タッ、タッ、タッ・・・・・・・・・・!』


凄い勢いでかけて来るシロンを、僕はその場で待ち受けた。



『ピョーーーーーン! ストッ!』


シロンは目の前で大きくジャンプし、僕の胸に飛び込んだ。

僕はそれを優しくキャッチし、抱きしめた。


「シロン!」


「ご主人! ご主人! ご主人!」


『ゴシ、ゴシ、ゴシ!』


シロンは叫びながら、僕の胸に顔を強く押し付けた。



「シロン、《転生》してたんだな?」


「そうニャ。謎の《固有スキル》のお陰ニャ!」


「それって、ステータスにあった《?》の固有スキルか?」


「人間以外になら、記憶とステータスを引き継いで何度でも《転生》できるみたいニャ!」


「凄いチートだな! だけど、直ぐに人間になりたくなかったのか?」


「ご主人が《愛人》にしてくれるなら、人間になるニャ!」


「馬鹿。できる訳無いだろ!」


『ピンッ!』


変な事を言い出すシロンに、軽くデコピンをしてやった。


「イタッ! 酷いニャ」


「シロンは《転生》しても、性格は変わらないな」


「変わったのは、体の大きさと目の色くらいニャ」


「本当だ。オッドアイじゃ無くなってる」


僕はまじまじと、シロン目を見た。



「ご主人。シロンに見蕩れるのも分かるけど、お腹空いたニャ」


「そうだ。丁度お昼だし、家に帰ってご飯にしよう」


「久し振りに、《ミノタウロス》のヒレ肉が食べたいニャ!」


「分かった。思う存分食べさせてやる!」


そう言うと直ぐに、エシャット村に《転移》した。



『シュタッ!』


「流石、ご主人ニャ。アッという間に着いたニャ!」


「あそこからだと、どんなに早くても一ヶ月は掛かったな」


「お陰で助かったニャ。でも、どうしてあそこにいるって分かったニャ?」


「ついさっき、ユミナから『シロンが《転生》してる』って聞いて調べたんだ」


「ユミナに、お礼を言わないといけないニャ」


「今村に来てるから、伝えると良いよ」


「そうするニャ」


僕はシロンを抱えながら、自宅に戻った。

すると家の前には、家族とユミナ達が集まっていた。



「あっ、ネコちゃん!」


最初にシロンに気付いたのは、エミリアだった。


「シロンにソックリだー!」と、次にレコルが声を上げた。


「可愛い。でもパパ、その子猫どうしたの?」と、サーシアが聞いてきた。


「拾った」


「拾ったの? 飼い主は、いるのかな?」


「少なくともパパは、この子を村で見た事無いな。首輪をしてないから、もしかして野良かも」


「村の外から来たのかな? 良く来られたね」


「そうだな」


「ねぇ、パパ。家で飼おうよ!」


「そのつもりだ」


「「「やったー!」」」


子供達に嘘をつくのは心苦しいが、何とか誤魔化した。



「ねー、おなまえはー?」と、エミリアが聞いてきた。


「『シロン』にしたいんだけど、良いかな?」


「「「いいよー!」」」


子供達は皆、笑顔で賛同してくれた。


「お前の名前はシロンだ。今日から僕達の家族になるんだぞ!」


「ニャー!」


こうして再び、シロンは我が家へ戻って来た。

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