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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第九章 二コルと家族編
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第二十話 バロン、サーシアとの再会③

バロン殿下とレコルが木剣で打ち合ってから、十五分以上が過ぎた。


『ガシーーーン!!』


「うわあっ!」


『ドシッ!』


レコルの打ち込みに耐え切れず、バロン殿下が倒れてしまった。


「そこまで!」


バロン殿下はずっと全力だった為、体力に限界が来ていた。

一方レコルは、まだ余力があった。


それを見極め、審判は試合を止めた。



「勝者、レコル殿!」


「「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・・・」」


「クソッ! 負けた」


「バロン君、強いよ!」


そう言って、レコルは手を差し出した。


「ありがとう」


バロン殿下はレコルの手を握り締め、起き上がった。


「でもレコル、本気じゃ無かったろ?!」


「ごめん。スキルは使わなかった」


「スキルって?」


「《身体強化》スキル」


「その歳で、そんなスキルを使えるのか?」


「おねーちゃんも使えるよ」


「サーシアも?」


「おねーちゃんは、《魔法》も得意なんだ」


「サーシアは、魔法を使うのか?」


バロン殿下は、サーシアの顔を窺った。



「えっ、何っ?」


「君達姉弟は、凄いな!」


「私、何かした?」


「魔法もスキルも使えるんだって?」


「うん、一応ね」


「レコルの剣術同様、サーシアの魔法も凄いんだろうな」


「自分じゃ、分かんないよ」


「上には上がいる。僕もまだまだだ」


バロン殿下は、一人納得した。



「バロン君。明日、パパ送ってくれるって」


「そうか、良かった」


「おねーちゃん、明日何処か行くの?」


「フロリダ街。バロン君達と一緒に、街を見て歩くんだ」


「ズルい! おねーちゃんとパパが行くなら、僕も行く!」


「パパは、送って行くだけだぞ」


「僕も、行ーきーたーいー!」


この時バロンは、レコルを誘おうと思った。

しかし『サーシアと二人になりたい』という気持ちが、戸惑わせた。


「はぁ、しょうがない。サーシアを送った後、ミーリアとエミリアも連れて海の保養所にでも行くか?」


「やったー!」


バロンが迷っている内に、レコルは家族と行く事が決まった。

この時バロンは、何とも言えない気持ちになった。



その後ソフィア様達はスーパーへ行き、僕はエミリアを連れて服飾工房へ向かった。


「と言う訳で、明日は久し振りに海の保養所へ行こう」


「良いわよ。でも、今日繁華街の保養所に泊まれば、明日の朝ゆっくりできるんじゃない?」


「それもそうだな。仕事が終わったら、宿泊の用意を頼むよ」


「うん。ところで、今日のお昼ご飯どうする? 護衛の方達も大勢いるんでしょ」


「僕がパスタを作るよ」


「ありがとう、助かるわ。それじゃ私、お昼までにこのお洋服仕上げちゃうから」


僕は服飾工房を出て、食事の準備に取り掛かった。



「エミリア。パパはお昼ご飯を作るから、絵本を見て待っててくれるか?」


「うん!」


人数が多いので、自宅一階の図書室兼教室を片付けてテーブルと椅子を並べた。


「さて、パスタのソースは何にするか?」


奇をてらってイカスミパスタを思い付いたが、今回は無難なミートソースパスタに決めた。

手作りだと時間が掛かってしまうので、スープや付け合わせも含め全て《亜空間収納》で調理をする事にした。



調理は直ぐに終わったが、食事をするには早かった。

エミリアの様子を見ると、大人しく絵本を見ている。


「ごめん下さい」


するとそこへ、ユミナが現れた。


「どうした?」


「いきなり大勢で押し掛けて、迷惑でした?」


「迷惑じゃないけど、びっくりした」


「そうですよね」


「気にしなくて良いよ」


「はい。それとこの事とは別に、ニコル君に言っておきたくて」


「ん?」


「ありがとうございました」


「何の事?」


「ヤマトさんとして行った、大勢の方達の《埋葬》です」


「あー、あれかー」


「もしかして、私の言葉が切っ掛けじゃないかと思って」


「どうだったかなー。忘れたよ」


「何年も費やし、大変だったでしょう?」


「《影分身魔法》が使えるから、ユミナが思ってる程でもないさ。実際日常生活を送りながら、のんびりやってたし」


「そう。でも、本当にありがとうございました」


「あまり惚けるのも何だから、その気持ち素直に受け取るよ」


「はい!」


堅かったユミナの表情は、笑顔に変わった。

今までずっと、胸に支えていたのだと分かった。



「バロン殿下、随分成長したね?」


「ニコル君のお子さん達もですよ。エミリアちゃんなんて、以前会った時赤ちゃんでしたから」


「そうだね。子供の成長は早いよ」


「同感です。ところで、《シロン》の姿が見えないんですけど」


「うん。あのさ、シロンは少し前に死んだんだ」


「えっ、そんなっ!」


ユミナの目に、涙が滲んだ。



「まー猫として、かなり高齢だったからね。報告が遅れて、ごめん」


「ニコル君が謝る必要無いです。でも、そうですか」


「墓に行ってみる?」


「はい! お祈りさせて下さい」


「エミリア。シロンとケイコのところに行こうか?」


「うん、いく!」


お昼まで時間があったので、二人(匹)の墓へ出掛けた。



「こっちがシロンの墓で、こっちが《テイム》していた野鶏のケイコの墓」


「ヤケイのケイコさん?」


「野生の鶏の事だよ」


「見た事あります。彼女がケイコさん」


「《転生者》とかじゃ、ないからね」


「そうですか。ではケイコさんにも、祈りを捧げます」


ユミナはそう言って、目を瞑り祈り始めた。


「エミリアも、パパと一緒に祈ろうか?」


「うん。お祈りする!」


そして僕達も、祈りを捧げた。


「えっ!!」


とその時、ユミナが驚きの声を上げた。

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