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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第九章 二コルと家族編
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第十八話 バロン、サーシアとの再会①

ある日バロンはユミナに付き添われ、王都のグルジット邸を訪れた。


「お祖母様。学園が夏休みなので、僕も《亜空間ゲート》でフロリダ街に連れて行って下さい!」


バロンは今年十歳になる歳で、学園の初等科に通い始めた。


「そう言えば、バロンちゃんはフロリダ街に行った事なかったわね」


「はい!」


「バロンったら、本当はサーシアちゃんに会いにエシャット村へ行きたいのよ」


「母上っ!」


「あら。ユミナちゃんも、行きたいんでしょ?」


「お母様っ!」


ユミナはソフィアに図星をつかれ、うろたえた。


「ふふっ! それじゃ早速、計画を立てましょう」


こうしてバロンは、久し振りにエシャット村へ行く事となった。



三日後、早朝。


「ここがフロリダ街か!」


「来られて良かったわね」


「はい!」


「バロンちゃん。フロリダ街は海が近くにあるそうよ。行ってみる?」


「今はいいです」


「そうなの。それじゃこのまま、エシャット村へ行きましょうか?」


「はい!」


バロン達は寄り道する事無く、七人の護衛を引き連れエシャット村へと向かった。



そして馬車に揺られ、一行はエシャット村に到着した。


「バロンちゃん。サーシアちゃんのお家に着いたわよ!」


「さあ、バロン。行きましょう!」


「はっ、はい!」


三年振りの再会に、バロンは緊張していた。


「邪魔しちゃ悪いから、私はお店でお買い物をしているわ」


「「はい!」」


馬車を降りると、ユミナとバロンはニコル家へ、ソフィアはスーパーへ向かった。



『コツ、コツ、コツ!』


階段を上がり二階の玄関前に立つと、ユミナはドアノッカーを鳴らした。


『シーン!』


「お留守かしら?」


「えっ、そんなっ!」


『コツ、コツ、コツ!』


「ごめん下さーい!」


『シーン!』


「やっぱり、お留守の様ね。どうしようかしら?」


『ガーン!』


緊張感から一転、バロンは落ち込んでしまった。



『タッ、タッ、タッ、タッ、タッ!』


「バロン殿下。ソフィア様が隣の店でお呼びです!」


そこへ、護衛の兵士が現れた。


「お祖母様が?」


「はい!」


「バロン、行ってみましょう」


「はい」


ニコル家を後にし、バロンは落胆したままスーパーへ足を運んだ。



「お祖母様、お呼びですか?」


「待ってたわ、バロンちゃん! さあ、こっちへいらっしゃい!」


「はい。あっ!」


「バロン君!」


「サーシア!」


「久し振りだね!」


「そっ、そうだね!」


突然の再会に驚きながら、背が伸び大人っぽくなったサーシアにバロンは見蕩れた。



「サーは今、このスーパーで働いてるんだ!」


「まだ子供なのに、もう働いてるのか?」


サーシアは、バロンの一つ年上の十一歳である。


「この村では、普通だよ」


「そうなんだ」


「バロン君。お昼にはまだ早いけど、お腹空いてない?」


「少しだけ」


「それじゃおやつに、《ボール焼き》を作ってあげる!」


「ボール焼き?」


「うん。待ってて!」


魔法袋に商品のストックがあったが、サーシアは腕前を披露したくて一から作り始めた。



『ジュジュジュー!』


『クルッ、クルッ、クルッ・・・・・・・・・・!』


「凄いや、サーシア!」


「へへーんだ!」


バロンの驚く顔に、サーシアは満足した。



「さあ、ボール焼きできたよ。食べて!」


「うん!」


長方形の皿に、四種類のボール焼きが二個ずつ盛られていた。

バロンはフォークを手に取り、ボール焼きを一つ口に運んだ。


「ハフ、ハフ、あちちっ。熱いけど、凄く美味しい!」


「良かった。今食べたのがタコで、他にエビとチーズとトウモロコシがあるからね!」


「タコって初めて食べたけど、美味しいんだな!」


「そうでしょ。お母さん達も、どうぞ!」


「ありがとう。サーシアちゃん!」


「まあ、丸くて可愛らしいわね!」


サーシアは、ユミナとソフィアにも振る舞った。



「ハフ、ハフ、美味しいわー!」


「ほんと、美味しい!」


「サーシアちゃんは、料理上手ね!」


「えへへ、そうですか?」


「うちの料理人に、この料理を教えて欲しいわー!」


「それなら、私が今習えば」


ユミナは《調理》スキル持ちだが、《たこ焼き》は作った事がなかった。



「ユミナちゃん。私はサーシアちゃんを、我が家に招待したいのよ」


「あっ、それは良いですね」


「サーシアちゃん。王都の屋敷に来てくれる?」


「うーん。仕事もあるし、パパやママに聞いてみないと。それに、専用の調理器具が必要だよ」


「その穴の沢山開いた鉄板ね。何処で手に入るの?」


「パパが作ったの!」


「そう。それでは招待の件と一緒に、ニコル君に頼んでみましょう」


「うん」


「ところで、ニコル君はどうしてるのかしら?」


「妹の面倒を見てます」


「そう。ちゃんと、家族と過ごしているのね」


ソフィアは、ニコルが行商を止める理由を聞いていた。



「バロン君は、《亜空間ゲート》で王都から来たの?」


「うん」


「王都では、何してるの?」


「学園の初等科に通って、勉強してる」


「勉強してるんだ。偉いね!」


「サーシアも、学園に通ったら良いよ」


「サーは平民だし、王都の学園なんて無理だよ」


「そんな事無い。学園には平民もいる!」


「へー、いるんだー」


「優秀なら、将来上級職に就く事だってできる!」


「上級職って何か分からないけど、サーはこの村の生活に満足してるよ」


「外に出てみないと、経験したり知り得ない事なんて沢山ある!」


「そうかもしれないね」


「それじゃ」


「だーめ。サーは、家族と一緒がいいもん」


「そんなっ!」


「バロン、諦めなさい」


「母上っ!」


「しつこいと、格好悪いわよ」


「ハッ!」


バロンはサーシアの顔を窺った。

するとサーシアは、『ニッコリ』と微笑んだ。


「分かりました。今日はこれ以上言いません」


バロンはサーシアとの《学園生活》を夢見ていたが、直ぐにはどうにもならない事を悟った。

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