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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第九章 二コルと家族編
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第十六話 シロンの旅②

マーサ親子の馬車は都合良く西へ進み、私は共に旅を続けた。

二人は人柄が良く、毎回食事に肉を食べさせてくれた。


『モフモフ、モフモフ!』


「ミルクって、ホント可愛い!」


「ニャー!」


旅の間、私はずっとマーサにモフられていた。



『ヒヒーン!』


「マーサ、家に着いたぞ!」


「あっ、ホントだ!」


「気付かないなんて、マーサはミルクに夢中だな」


「だって、可愛いんだもん!」


「父さんは店に行って、仕入れた商品を下ろしてくる。マーサはお母さんとカイルに、ミルクを見せてあげなさい」


「はーい!」


到着した場所はユンベルグ辺境伯領で、ダンジョンのあるオーエン街だった。



「お母さーん、カイルー、ただいまー!」


「マーサ、お帰りなさい!」


「おねーちゃん、おかえりー!」


「あら、マーサ。何を抱えているの?」


「じゃーん!」


マーサは腕を突き出し、私を二人に披露した。


「ネコだー!」


弟のカイルは、声を張り上げて喜んだ。



「さわってもいい?」


「優しくだよ」


「わー!」


カイルは、優しく私の頭を撫でた。


「かわいいー!」


「まだ、子猫ね。どうしたの?」


「いつの間にか馬車に乗ってて、そのまま連れて来ちゃった!」


「そんな高貴な猫、貴族様の猫だったらどうするの?」


「だって置いて来たら死んじゃいそうで、可哀想だったんだもん!」


「しょうがないわね。ちゃんと面倒見るのよ!」


「うん!」


私は二人の会話を聞き、『ご主人の所へ行くから、飼われる訳にはいかないニャ』と思った。



「ニャー!」


私は身を捩って、マーサの手の中で暴れた。


「あっ、ミルク!」


『シュタッ! タッ、タッ、タッ!』


私はマーサの手から飛び降り、そのまま逃げた。


「ミルク、何処行くの?! 待って! キャッ!」


マーサは追い掛けようとしたが、転んでしまった。


「許してニャ。情が移る前に、お別れニャ!」


私は走りながら、そう呟いた。



「お腹空いたニャ。ご飯食べてから、出てくれば良かったニャ」


オーエン街は人が多く、賑やかだった。

繁華街の方からは、食べ物の良い匂いが漂ってくる。


「ミルク、何処にいるのー?!」


マーサの声がした。

必死に、私を探している。


「屋台でご飯をねだる暇は、無いニャ」


お腹が空いていたが、今はマーサから距離をとる方を優先した。



「キャー! 助けてー!」


「マーサの声ニャ!」


そんな矢先、《超聴力》スキルがマーサの叫び声を拾った。


「何があったニャ?!」


私は心配になり、来た道を引き返した。


「んーーーっ!」


「あっちニャ!」


口を塞がれたマーサの呻き声がし、私はその方向へ急いだ。



「へっへー、上手くいったぜ!」


「あんなところで出くわすなんて、ついてたな!」


「これで商会から、身代金をたんまりせしめられるぜ!」


マーサは二人組の男に捕まり、麻袋に入れられ馬車に乗せられた。

そして馬車は、そのまま走り去ってしまった。


実はマーサの父親の実家は、この街で大きな商会を営んでいた。

マーサの父親は次男だが、商会で要職に就いていた為目をつけられていた。



『クンクンッ!』


「ここでマーサは捕まったニャ。二人の男の臭いがするニャ」


『クンクンッ!』


「男達の臭いが、ここで消えたニャ! 馬車ニャ! マーサは馬車に乗せられたニャ!」


私は急いで、馬車の臭いを追い掛けた。



追跡しやっと辿り着いたのは、街外れにある二階建ての大きな一軒家だった。

ここまで来れたのは、《超嗅覚》スキルのお陰である。


「馬車が停まってるニャ!」


その馬車からは、追って来た臭いがした。


「他にも、馬がいっぱいいるニャ!」


この事から人攫いのアジトには、大勢潜伏している事が示唆された。


「奴等一体、何人いるニャ?」


幸い、家の外に見張りはいなかった。

私は家に近付き、聞き耳を立て人数を調べた。



「ざっと、十一人といったところニャ。一か八か行ってみるニャ!」


『スー!』


私は《壁抜け》スキルを使い、建物へ忍び込んだ。

するとリビングで、男達が寛いでいた。


「何でこんな所に、子猫がいる? 誰か入れたのか?!」


「いいだろ猫くらい。可愛いじゃねーか」


「ちっ、俺は猫が嫌いなんだよ!」


「ははっ、可哀想に。ほら、こっち来い!」


「ニャー!」


「怖くないから、逃げるなって!」


『ビリビリビリビリッ!』


私は《雷属性魔法》を、男に放った。



「ウギャーーー!」


『バタンッ!』


「おいっ、どうした!」


『ビリビリビリビリッ!』


「ウギャーーー!」


『バタンッ!』


「何だ! 一体、何が起こった?!」


突然悲鳴を上げ倒れる仲間に、悪党共は臨戦体制になった。



「あの猫だ! あの猫が魔法を放ちやがった!」


「何バカ言ってんだ? そんな筈ねーだろ!」


「俺は見たっ! 油断するな!」


「お前、頭イカれちまったのか?」


『『『ビリビリビリビリッ!』』』


「「「ウギャーーー!」」」


警戒され、私はこの部屋にいる全員の意識を奪った。



だが騒ぎを聞き付け、他の部屋にいた仲間達が集まって来た。


「「何事だ?!」」


『『ビリビリビリビリッ!』』


「「ウギャーーー!」」


しかしそいつらの意識も、一瞬の内に奪ってしまった。

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