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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第九章 二コルと家族編
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第十二話 塩の増産

仕事を大幅に減らし、僕は念願の《のんびり生活》を過ごしていた。


グルジット様が現れた時はそれが脅かされるのではないかと警戒したが、今のところ影響は然程無い。

今日は二週間に一度の《商品補充》の日で、フロリダ街の店に足を運んだ。


「みんな、お早う!」


「「「お早うございます!」」」


「ニコルさん、大変です。トイレットペーパーの売れ行きが急に伸び、在庫の減りが早くなってます!」


「何があったんだ?」


「王侯貴族の使いの方達が、大量購入されていきました」


「そう言えば先週、《亜空間ゲート》の運用が始まったんだったな」


「はい。ダンジョンの爆発事故以来、不調だったガラス窓まで売れてます!」


「そうなんだ。念の為、倉庫にはいつもより多く置いていくよ」


「お願いします。それとリートガルド男爵様が、『役場に来るように』と仰ってました」


「リートガルド様が? 分かった。補充が終わったら、顔を出すよ」


ダニーにそう告げ、倉庫室へ入った。


「お金は充分あるから、そんなに稼ぐ必要はないんだけどな」


僕の気持ちとは裏腹に、お金は入ってくる一方だった。



商品の補充を終え、役場に向かった。


「おー、ニコル。来たか!」


「何の用事ですか?」


「《塩》だ。塩の生産設備を増やしたい!」


塩工場は、街が運営している。


「王都の需要が、増えたんですか?」


「ああ。貴族連中が、纏まった量を取引きしたいと言って来た!」


「あの辺の相場だと、半額以下で買えますからね。でもあまり手広くやると、他の塩業者に恨まれそうですね」


生産地から近い場所の相場は、百グラム《千五百マネー》程である。

そして遠くへ行く程、運搬費が上乗せされた。


しかしこの街では、百グラム《八百マネー》で売られている。

今の王都からしたら、半額以下である。



「それはそうだが、商売なのだからしょうがあるまい!」


「まあ、いいですけど。それで、どれだけ増やすのですか?」


「三倍だ!」


「三倍?」


「そうだ。施設は増設を見越して、広く作ったから置けるだろ?」


「それはそうですけど、支払いは大丈夫なんでしょうね?」


「現金で支払う。前回と同じ額でいいな?!」


「まあ、良いですよ」


忙しい時期に苦労して作った割に、前回は何だかんだで値切られた。

今回は《複製品》のストックがあるので、素直に応じた。



「それとな、貴族連中がお前の店や魔道具の設備について嗅ぎ回ってる。面倒に巻き込まれない様、気を付けろよ!」


「何言ってるんですか?! リートガルド様が、その筆頭ですよ!」


「なっ、てめーこの野郎っ!」


「それじゃ失礼します。来週、設備の設置に伺います」


「おい、こら、待てっ!」


僕はそそくさと、その場を去った。



翌週、約束通り設備を設置した。


この設備は、五時間で約三十キロの塩を作る能力がある。

今までは、それが二組稼働していた。


今回追加した事で六組となり、五時間で約百八十キロ作れる事になった。

僕はこの設備の販売で、《三千万マネー》を手に入れた。


そして、当初話しに上がっていた《漁船》の購入は見送られた。

魚介は生物(なまもの)だけに、取り扱いが難しい様だ。


リートガルド様はその対策に、干物の加工を増やすと言っていた。

その為僕が引き受けていた《冷凍倉庫》の余り物は、今後減りそうだ。


ちなみに漁業関連も、街が運営している。



ある日、エマ夫人とソフィア夫人がニコルの店を訪れた。


「また、来ましたわ!」


「今日はー!」


「「「いらっしゃいませ!」」」


「ダニーさん。例のあれ、頼めるかしら?」


「畏まりました。少々お待ち下さい」


ダニーはそう言って、魔法袋を取りに行った。



「お待たせしました。では、店の裏へお願いします」


「分かりました」


「はーい!」


二人が嬉しそうに店の裏へ足を運ぶと、護衛達もそれに続いた。

しかしそんな姿を、ある人物が見ていた。



「あれは、エマ様とソフィア様!」


「あら、本当だわ!」


その人物とは、国王の母アリーシアと祖母のリリーシアだった。

二人はこの街へ、観光に来ていたのだ。


旦那達と同様、リリーシアも二人と親交があった。

そして娘のアリーシアも、可愛がって貰っていた。


「お母様、行ってみましょう」


「そうね。行きましょう」


二人も護衛を引き連れて、店の裏へ回った。



「あら、お二人の姿が見えないわ?!」


店の裏には、護衛達の姿しか無かった。


「「「「アッ、アリーシア様にリリーシア様!」」」」


護衛達は王族の姿を見て、慌てて膝をついた。


「お忍びだから、良いのよ。立ちなさい」


「「「「はっ!」」」」


「ところで、エマ様とソフィア様が一緒だったわよね?」


「ええ、はい」


「もしかして、この小屋の中にいるの?」


「はい。ですが、誰も近付けないよう言われてまして」


「私とお母様でも、駄目なの?!」


「いえ、それは・・・・・」


「ハッキリしないのね。それなら、お二人に聞いてちょうだい!」


「わっ、わっ、分かりました!」


《王太后》であり《絶世の美女》であるアリーシアに、護衛達は萎縮した。



「エマ様、ソフィア様。緊急の用件が御座います」


「「あら、何かしら?」」


二人は護衛の呼び掛けに、扉へ向かった。


『ガチャッ!』


「あらっ!」


「あらあらっ!」


二人の視線に、アリーシアとリリーシアの姿が飛び込んだ。


「「エマ様、ソフィア様!」」


「こっ、今日わー!」


「お久し振りですー!」


エマとソフィアに、窮地が訪れた。

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